【徹底解説】一次独立な元の集合と基底の拡大

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

一次独立な元の集合と基底の拡大

$V$を$n$次元ベクトル空間とし,$v_{1},\ldots,v_{r}$を$V$の一次独立な元とする。このとき,$V$の適当な$n-r$個の元$v_{r+1},\ldots,v_{n}$を付け加えて$V$の基底$v_{1},\ldots,v_{n}$を作ることができる。

生成元の集合と基底では,$V$の適当な生成元から基底を選び出すことができることを示している一方で,本定理では,$V$の一次独立な元の集合は$V$の基底に拡大できることを示しています。

証明

$v_{1},\ldots,v_{n}$で張られる$V$の部分空間を$W$とします。次元数と一次独立な元の個数の関係より,$V$には最大で$n$個の一次独立な元が存在しますから,$r\leq n$が分かります。まずは,$r=n$のときを考えます。このとき,$W\neq V$と仮定すると,$W$に属さない$V$の元$v$が存在しますが,$V$の元で一次独立なものの最大個数は$n$個であることから,$v_{1},\ldots,v_{n},v$は一次従属になります。しかし,一次従属な元からの一次独立な元の抽出により,$v$は$v_{1},\ldots,v_{n}$の一次結合で表されますので,$v$が$W$に属さないことに反します。したがって,$r=n$のときは$W=V$となり,$v_{1},\ldots,v_{n}$が$W$の基底となります。

次に,$r<n$のときを考えます。このとき,$W$に属さない$V$の元$v_{r+1}$が存在し,$v_{1},\ldots,v_{r+1}$は一次独立になります。なぜなら,$v_{1},\ldots,v_{r+1}$が一次従属と仮定すると,$v_{r+1}$は$v_{1},\ldots,v_{r}$の一次結合で表されますので,$v_{r+1}$が$W$に属さないという仮定に反するからです。ここで,もし$r+1=n$となれば,上で示したように$v_{1},\ldots,v_{r+1}$が基底となります。もし$r+1<n$となれば,再び$v_{1},\ldots,v_{r+2}$が一次独立となるような$v_{r+2}$を選び出すことができます。この操作を続けることにより,最終的に$V$の基底$v_{1},\ldots,v_{n}$を得ることができるため,本定理の主張を示せました。

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