【徹底解説】三角化定理

zuka

こんにちは。
zuka(@beginaid)です。

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初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

三角化定理

$V$を$\mK$上の$n$次元ベクトル空間,$F$を$V$の線型変換とする。ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表す。$F$が$\mK$内に重複度まで考慮すれば$n$個の固有値をもつとし,その固有値を$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}$とする。このとき,$F$は$V$の適当な基底によって上三角行列

\begin{align}
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}
\end{bmatrix} \label{主題}
\end{align}

で表現される。

固有値の存在より,$\mK{=}\mC$のときは$F$は必ず重複度まで考慮すれば$n$個の固有値をもちますが,$\mK{=}\mR$のときは必ずしもそうとは限りません。

証明

ベクトル空間の次元$n$に関する帰納法により証明します。$n=1$のときは,$F$の表現行列は固有値のみを要素とする行列となり,明らかに上の主張を満たします。$n-1$次元のベクトル空間の線型変換について,上の主張が成り立つと仮定します。いま,$F$の固有値$\alpha_{1}$に対する一つの固有ベクトル$v_{1}$をとり,次に$\{v_{1},w_{2},\ldots,w_{n}\}$が$V$の基底となるように$w_{2},\ldots,w_{n}$をとります。ただし,$w_{2},\ldots,w_{n}$は$F$の固有ベクトルでなくても構わない点に注意して下さい。$w_{2},\ldots,w_{n}$によって張られる部分空間を$W$とおくと,$w_{2},\ldots,w_{n}$の作り方から

\begin{align}
V &= \langle v_{1}\rangle\oplus W \label{直和}
\end{align}

となります。いま,$w\in W$の$F$による像は$V$に属するので,

\begin{align}
F(w) &= cv_{1}+\tilde{w} \label{1}
\end{align}

となる$c\in \mK$,$\tilde{w}\in W$が一意的に定まります。ここで,式($\ref{1}$)において$w$から$\tilde{w}$を対応させる写像,すなわち$W$から$W$への写像を$F_{1}$とおくと,

\begin{align}
F(w) &= cv_{1}+F_{1}(w) \label{F}
\end{align}

と表されます。いま,$F_{1}$が線型変換であれば,$F_{1}$の表現行列はある行列$A_{1}$とある基底に関して一対一に対応しますから,式($\ref{直和}$)と表現行列の定義より,$F$の表現行列は

\begin{align}
A &=
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&\ast \\[0.7em]
0 & A_{1}
\end{bmatrix}\label{A}
\end{align}

と表されます。そこで,以下では$F_{1}:~W\rightarrow W$が線型変換であることを示します。式($\ref{F}$)を変形すると,

\begin{align}
F_{1}(w) &= -cv_{1}+F(w)
\end{align}

となります。ゆえに,$F$が線型変換であることと$c$が任意の実数を表す点に注意すると,$u_{1},u_{2}\in W$に対して

\begin{align}
F_{1}(u_{1}+u_{2}) &= -cv_{1}+F(u_{1}+u_{2})\\[0.7em]
&= -cv_{1}+F(u_{1})+F(u_{2})\\[0.7em]
&= \left\{\frac{-c}{2}v_{1}+F(u_{1})\right\}+\left\{\frac{-c}{2}v_{1}+F(u_{2})\right\}\\[0.7em]
&= F_{1}(u_{1})+F_{1}(u_{2})
\end{align}

が成り立ちます。同様に,$F$が線型変換であることと$c$が任意の実数を表す点に注意すると,任意の実数$c$に対して

\begin{align}
F_{1}(cu_{1}) &= -cv_{1}+F(cu_{1})\\[0.7em]
&= -cv_{1}+cF(u_{1})\\[0.7em]
&= c(-v_{1}+F(u_{1}))\\[0.7em]
&= cF_{1}(u_{1})
\end{align}

が成り立ちます。以上より,$F_{1}$が線型変換であることが示されました。したがって,$F$の表現行列は式($\ref{A}$)のように表されます。このとき,$A,A_{1}$の固有多項式をそれぞれ$f_{A}(x),f_{A_{1}}(x)$とおくと,区分けされた三角行列の固有多項式より,

\begin{align}
f_{A}(x) &= (x-\alpha_{1})f_{A_{1}}(x) \label{行列形式}
\end{align}

と表されます。線型変換と表現行列はある基底に関して一対一に対応しますから,式($\ref{行列形式}$)は

\begin{align}
f_{F}(x) &= (x-\alpha_{1})f_{F_{1}}(x) \label{線型変換形式}
\end{align}

と同等になります。いま,$F$の固有値が$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}$と与えられていることから,

\begin{align}
f_{F}(x) &= (x-\alpha_{1})\cdots (x-\alpha_{n}) \label{仮定}
\end{align}

が成り立ちます。式($\ref{仮定}$)を式($\ref{線型変換形式}$)に代入して両辺の$(x-\alpha_{1})$の係数を比較することにより,

\begin{align}
f_{F_{1}}(x) &= (x-\alpha_{2})\cdots (x-\alpha_{n})
\end{align}

が得られます。すなわち,$F_{1}:~W\rightarrow W$は固有値$\alpha_{2},\ldots,\alpha_{n}$をもっていることが分かりました。帰納法の仮定によると,固有値$\alpha_{2},\ldots,\alpha_{n}$をもつ線型変換は適当な基底によって上三角行列

\begin{align}
\begin{bmatrix}
\alpha_{2}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}

で表現されます。これを式($\ref{A}$)に代入すると,$F$は行列($\ref{主題}$)で表現されることが示されます。したがって,任意の次元に対して上の主張が成り立つことが示されました。

別証明

三角化定理は,以下のような形で表されることもあります。

任意の複素正方行列$A$は,ユニタリ行列$P$により上三角化可能である。すなわち,上三角行列を$U$としたとき,以下を満たすユニタリ行列$P$が存在する。

\begin{align}
P^{-1}AP &= U
\end{align}

数学的帰納法を利用して上の主張を証明しましょう。$n$次元正方行列を$A_{n}$と書くことにします。$n=1$のとき,三角行列の定義より$A_{1}$は上三角行列であり,明らかに上三角化可能です。また,対角成分は正方行列$A$の固有値になります。$n=k-1$のとき,$A_{k-1}$が上三角化可能であり,対角成分には重複分も含めて固有値が並んでいると仮定します。$k$次正方行列$A_{k}$の固有値のうち,ある固有値を$\lambda_{1}$,それに対応する固有ベクトルを正規化したものを$\vq_{1}$と置きます。すると,$\vq_{1}$を含めて一次独立なベクトル$\vq_{2},\ldots,\vq_{k}$を適当に選ぶことができ,グラム・シュミットの正規直交化法により,それらを正規直交基底にできます。

いま,$\vq_{1},\vq_{2},\ldots,\vq_{k}$を横に並べた行列を$Q$と置くと,$Q$は正規直交基底を並べたユニタリ行列であるため正則になります。

\begin{align}
Q &=
\left[
\vq_{1},\vq_{2},\ldots,\vq_{k}
\right]
\end{align}

$k$次元縦単位ベクトル$\ve_{1}$に対し,

\begin{align}
Q\ve_{1} &= \vq_{1}
\end{align}

が成り立つことに注意すると,以下のような変形ができます。

\begin{align}
Q^{-1}A_{k}Q\ve_{1} &= Q^{-1}A_{k}\vq_{1} \\[0.7em]
&= Q^{-1}\left(\lambda_{1}\vq_{1}\right) \\[0.7em]
&= \lambda_{1}Q^{-1}Q\ve_{1} \\[0.7em]
&= \lambda_{1}\ve_{1}
\end{align}

これは,$Q^{-1}A_{k}Q$の第一列が$\lambda_{1}\ve_{1}$であることを表しています。

\begin{align}
Q^{-1}A_{k}Q &=
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} & \va \\[0.7em]
\vzero & A_{k-1}
\end{bmatrix}
\end{align}

ただし,$\va$は任意の$k-1$次元の横ベクトル,$\vzero$は$k-1$次元の縦ゼロベクトルを表します。ここで,$A_{k-1}$が上三角化可能であり,対角成分には重複分も含めて固有値が並んでいることを利用すると,

\begin{align}
R^{-1}A_{k-1}R &=
\begin{bmatrix}
\lambda_{2} & \ast & \cdots & \ast \\[0.7em]
0 & \lambda_{3} & \ast & \vdots \\[0.7em]
\vdots & 0 & \ddots & \ast \\[0.7em]
0 & \cdots & 0 & \lambda_{k}
\end{bmatrix}
\end{align}

を満たす行列$R$が存在します。ただし,$\ast$は任意の要素を表します。ここで,やや天下り的ですが,

\begin{align}
P &= Q
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R
\end{bmatrix}
\end{align}

となる行列$P$を用意すれば,$P^{-1}$は以下で表されます。

\begin{align}
P^{-1} &=
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R^{-1}
\end{bmatrix}
Q^{-1}\label{逆行列}
\end{align}

これは,$P$の左と右から式($\ref{逆行列}$)を掛けると単位行列となることを確認して,式($\ref{逆行列}$)が$P^{-1}$となることを証明できます。

このとき,$P^{-1}AP$を以下のように表すことができます。

\begin{align}
P^{-1}AP &=
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R^{-1}
\end{bmatrix}
Q^{-1}AQ
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R
\end{bmatrix} \\[0.7em]
&=
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R^{-1}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} & \va \\[0.7em]
\vzero & A_{k-1}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R
\end{bmatrix} \\[0.7em]
&=
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} & \va \\[0.7em]
\vzero & R^{-1}A_{k-1}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & \vzero^{T} \\[0.7em]
\vzero & R
\end{bmatrix} \\[0.7em]
&=
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} & \va R \\[0.7em]
\vzero & R^{-1}A_{k-1}R
\end{bmatrix} \\[0.7em]
&=
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} & \va R \\[0.7em]
\vzero &
\begin{bmatrix}
\lambda_{2} & \ast & \cdots & \ast \\[0.7em]
0 & \lambda_{3} & \cdots & \vdots \\[0.7em]
\vdots & 0 & \ddots & \ast \\[0.7em]
0 & \cdots & 0 & \lambda_{n}
\end{bmatrix}
\end{bmatrix}
\end{align}

以上より,$P$を利用して$A_{k}$を上三角化可能であることが示されました。数学的帰納法より,任意の次数$n$に対して正方行列が上三角化可能であることが示されました。

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