【過去問解答】2014年統計検定1級<統計数理2>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

ガンマ分布とベータ分布に関する出題でした。

(1)

モーメント母関数の定義より,

\begin{align}
M_{X}(t)
&= E[e^{tX}]
= \frac{1}{\Gamma(m)}\int_{0}^{\infty}e^{tx}x^{m-1}e^{-x}dx\\[0.7em]
&= \frac{1}{\Gamma(m)}\int_{0}^{\infty}x^{m-1}e^{-(1-t)x}dx\\[0.7em]
&= \frac{1}{\Gamma(m)}\int_{0}^{\infty}(1-t)^{-m+1}y^{m-1}e^{-y}\frac{dy}{1-t}\\[0.7em]
&= \frac{(1-t)^{-m}}{\Gamma(m)}\int_{0}^{\infty}y^{m-1}e^{-y}dy\\[0.7em]
&= \frac{(1-t)^{-m}}{\Gamma(m)}\cdot\Gamma(m) = (1-t)^{m}
\end{align}

が得られる。

ガンマ分布のページでは,指数分布のモーメント母関数からガンマ分布のモーメント母関数を求めています。

(2)

モーメント母関数の性質より,平均は

\begin{align}
E[X] &= M^{\prime}_{X}(0)
= \left.m(1-t)^{-m-1}\right|_{t=0}
= m
\end{align}

となる。同様に,原点周りの二次モーメントは

\begin{align}
E[X^{2}] &= M^{\prime\prime}_{X}(0)
= \left.m(m+1)(1-t)^{-m-2}\right|_{t=0}
= m(m+1)
\end{align}

となるため,分散は

\begin{align}
V[X] &= E[X^{2}]-E[X]^{2} = m(m+1)-m^{2} = m
\end{align}

となる。

(3)

ガンマ分布とベータ分布の関係を用いれば,$T$が自由度$n+1$のガンマ分布,$Y$が自由度$(i, n+1-i)$のベータ分布に従うことを示すことができる。小問(1)で導出したモーメント母関数の形よりガンマ分布は再生性を持つため,$U{=}X_{1}{+}{\cdots}{+}X_{i}$,$V{=}X_{i+1}{+}{\cdots}{+}X_{n+1}$とおくと,$U$は自由度$i$のガンマ分布,$V$は自由度$n+1-i$のガンマ分布に従う。ここで,

\begin{cases}
T = U+V\\[0.7em]
\displaystyle
Y = \frac{U}{T}
\end{cases}

の逆変換は

\begin{cases}
U = TY\\[0.7em]
V = T(1-Y)
\end{cases}

であるため,ヤコビアンは

\begin{align}
\det
\begin{pmatrix}
\partial u/\partial y&\partial u/\partial t\\
\partial v/\partial y&\partial v/\partial t
\end{pmatrix}
= \det
\begin{pmatrix}
t&y\\
-t&1-y
\end{pmatrix}
= t
\end{align}

となる。$X_{1},\ldots,X_{n+1}$の独立性から$U,V$は独立であることに注意すると,$(T,Y_{i})$の同時確率密度関数は

\begin{align}
f_{T,Y_{i}}(t,y)
&= f_{U,V}(ty, t(1-y))\\[0.7em]
&= \left\{\frac{1}{\Gamma(i)}(ty)^{i-1}e^{-ty}\right\}\cdot\left\{\frac{1}{\Gamma(n+1-i)}(t(1-y))^{n-i}e^{-t(1-y)}\right\}\cdot t\\[0.7em]
&= \frac{1}{\Gamma(i)\Gamma(n+1-i)}t^{n}e^{-t}y^{i-1}(1-y)^{n-i}\\[0.7em]
&= \left\{\frac{1}{\Gamma(n+1)}t^{n}e^{-t}\right\}\cdot\left\{\frac{\Gamma(n+1)}{\Gamma(i)\Gamma(n+1-i)}y^{i-1}(1-y)^{n-i}\right\}
\end{align}

となり,$T$は自由度$n+1$のガンマ分布,$Y_{i}$は自由度$(i, n+1-i)$のベータ分布に従うことが示された。また,$f_{T,Y_{i}}(t,y){=}f_{T}(t)f_{Y_{i}}(y)$と表されるため,$T$と$Y_{i}$は独立となり,$T$と$(Y_{1},\ldots,Y_{n})$も独立となる。

公式解答ではベータ分布とガンマ分布の分解を経由せず,変数変換ゴリ押しで導出しています。管理人としては,後半の小問でも結局ベータ分布との関連を問われること,および式変形の簡易さの観点から,ガンマ分布とベータ分布の関係を利用して解答する方がスマートだと考えています。

モーメント母関数の再生性を詳細に示しておきたい場合は,

\begin{align}
M_{T}(t) &= E[e^{tT}]
= E[e^{t(X_{1}+\cdots+X_{n+1})}]
= E[e^{tX_{1}}]\cdots E[e^{tX_{n+1}}]\\[0.7em]
&= M_{X_{1}}(t)\cdots M_{X_{n+1}}(t)
= (1-t)^{-(n+1)}
\end{align}

と記述します。モーメント母関数と確率分布の一意性より,これは$T$が従う確率分布を示す証明でもあります。

(4)

$Y_{i}$が従う分布と$U_{(i)}$従う分布が等しいことを示すことができれば,$(Y_{1},\ldots,Y_{n})$の同時分布と$(U_{(1)},\ldots,U_{(n)})$の同時分布も等しくなることが示される。そのため,第$i$順序統計量$U_{(i)}$が従う分布が小問(3)で求めたベータ分布と等しくなることを示す。

順序統計量の確率密度関数に関する定理で,母集団が連続一様分布である場合を考える。一様分布の累積分布関数と確率密度関数は

\begin{align}
F(x) &= x,\quad
f(x) = 1
\end{align}

と表されるため,第$i$順序統計量$U_{(i)}$の確率密関数は以下のように表される。

\begin{align}
f_{U_{(i)}}(u) &= {}_{n-1} C_{i-1}~nu^{i-1}(1-u)^{n-i} \\[0.7em]
&= \frac{n!}{(i-1)!(n-i)!} u^{i-1}(1-u)^{n-i} \\[0.7em]
&= \frac{\Gamma(n+1)}{\Gamma(i)\Gamma(n+1-i)} u^{i-1}(1-x)^{n-i} \\[0.7em]
&= \frac{1}{B(i, n+1-i)} u^{i-1}(1-x)^{n-i}\label{Be}
\end{align}

ただし,ガンマ関数と階乗の関係ガンマ関数とベータ関数の関係を利用した。式($\ref{Be}$)は自由度$(i, n+1-i)$のベータ分布の確率密度関数であるため,第$i$順序統計量$U_{(i)}$が従う分布が小問(3)で求めたベータ分布と等しくなることが示された。

(5)

自由度$(a,b)$のベータ分布に従う確率変数の期待値は$a/(a+b)$となる。小問(4)より$U_{(i)}$は自由度$(i, n+1-i)$のベータ分布に従うため,$U_{(i)}$の期待値は$i/(n+1)$となる。

ベータ分布の期待値の導出もご参照ください。

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