本記事は「これなら分かる!はじめての数理統計学」シリーズに含まれます。
不適切な内容があれば,記事下のコメント欄またはお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
ガンマ関数とベータ関数
ベータ関数は,ガンマ関数を用いて以下のように表される。
B(a,b) &= \frac{\Gamma(a)\Gamma(b)}{\Gamma(a+b)} \label{主題}
\end{align}
証明
ガンマ関数は積分ですので,積分の積と相性が良い極座標変換を利用します。ベータ関数に$1-\mu$という形が表が表れていることに注意すると,ベータ分布を極座標で表すために,
\mu &= \sin^2\theta \label{mu}
\end{align}
という変数変換が利用できます。三角関数の二乗で$\mu$を定義すると$\sin^2 + \cos^2 = 1$を用いることができます。このとき,
d\mu &= 2\sin\theta\cos\theta d\theta
\end{align}
となります。$\mu$の定義域は$[0,1]$ですので,$\theta$の定義域は$[0, \pi/2]$になります。
B(a,b) &= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2a-2}\theta\cos^{2b-2}\theta\cdot 2\sin\theta \cos\theta d\theta\\[0.7em]
&= 2\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2a-1}\theta\cos^{2b-1}\theta d\theta \label{正弦波導入後のベータ関数}
\end{align}
ここで,極座標変換を用いて式(\ref{正弦波導入後のベータ関数})に近づけるために,$t=x^2$の変数変換を行います。
\Gamma(a) &= \int_{0}^{\infty} x^{2a-2}e^{-x^2}2xdx\\[0.7em]
&= 2\int_{0}^{\infty} x^{2a-1}e^{-x^2}dx
\end{align}
同様に,$\Gamma(b)$に対して$t=y^2$の変数変換を行います。
\Gamma(b) &= \int_{0}^{\infty} y^{2b-2}e^{-y^2}2ydy\\[0.7em]
&= 2\int_{0}^{\infty} y^{2b-1}e^{-y^2}dy
\end{align}
ここで,二つのガンマ分布の積を計算してみます。
\Gamma(a)\Gamma(b) &=
\left(2\int_{0}^{\infty} x^{2a-1}e^{-x^2}dx\right) \cdot
\left(2\int_{0}^{\infty} y^{2b-1}e^{-y^2}dy\right) \\[0.7em]
&= 4\int_{0}^{\infty} \int_{0}^{\infty}
x^{2a-1}y^{2b-1}e^{-(x^2+y^2)} \label{極座標変換前のガンマ分布の積}
dxdy
\end{align}
思惑通り,$x^2+y^2$という項が出現しましたので,満を持して極座標変換を行います。いま,
x &= r\cos\theta \\[0.7em]
y &= r\sin\theta
\end{align}
と置きます。ただし,$r>0$とします。このとき,ヤコビアン$J$は以下のように計算されます。
J &=
\abs \begin{vmatrix}
\partial x / \partial r & \partial x / \partial \theta \\
\partial y / \partial r & \partial y / \partial \theta \\
\end{vmatrix}\\[0.7em]
&=
\abs \begin{vmatrix}
\cos \theta & -r\sin\theta \\
\sin \theta & r\cos \theta \\
\end{vmatrix}\\[0.7em]
&= \abs \left(r \cos^2\theta + r \sin^2\theta\right) \\[0.7em]
&= r
\end{align}
ただし,$|\cdot|$は行列式,$\abs$は絶対値を表します。したがって,式(\ref{極座標変換前のガンマ分布の積})は以下のように変換されます。
\Gamma(a)\Gamma(b)
&= 4\int_{0}^{\infty} \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}
r^{2a-1}\cos^{2a-1}\theta \; r^{2b-1}\sin^{2b-1}\theta
~e^{-r^2}r~drd\theta \\[0.7em]
&= 2\int_{0}^{\infty} r^{2(a+b)-1} e^{-r^2}dr \cdot
2\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2a-1}\theta \cos^{2b-1}\theta d\theta\\[0.7em]
&= \Gamma(a+b)B(a, b)
\end{align}
したがって,式($\ref{主題}$)が示されました。
別証明
二つの独立な確率変数$X\sim \Ga(a,1)$と$Y\sim\Ga(b,1)$を考えます。かなり恣意的ですが,新しく以下で定義される二つの確率変数
U = \frac{X}{X+Y},\quad V=X+Y
\end{align}
を導入します。逆変換は$X=UV$と$Y=V(1-U)$となりますので,ヤコビアンは
J &=
\abs \begin{vmatrix}
\partial x / \partial u & \partial x / \partial v \\
\partial y / \partial u & \partial y / \partial v
\end{vmatrix}\\[0.7em]
&=
\abs \begin{vmatrix}
v & u \\
-v & 1-u
\end{vmatrix}\\[0.7em]
&= \abs (v(1-u)+uv) \\[0.7em]
&= v
\end{align}
となります。$X,Y$の従う確率密度関数をそれぞれ$f(x),g(x)$とおくと,$X$と$Y$の独立性と確率変数の変数変換より,$U,V$の同時確率密度関数$h$は
h(u,v)
&= f(uv)\cdot g(v(1-u))\\[0.7em]
&= \frac{v^{a-1}u^{a-1}e^{-uv}}{\Gamma(a)}\cdot\frac{v^{b-1}(1-u)^{b-1}e^{-v(1-u)}}{\Gamma(b)}\\[0.7em]
&= \left(v^{a+b-1}e^{-v}\right)\cdot\left\{\frac{1}{\Gamma(a)\Gamma(b)}u^{a-1}(1-u)^{b-1}\right\}\\[0.7em]
&= \left\{\frac{1}{\Gamma(a+b)}v^{a+b-1}e^{-v}\right\}\cdot\left\{\frac{\Gamma(a+b)}{\Gamma(a)\Gamma(b)}u^{a-1}(1-u)^{b-1}\right\}\label{分布の積}
\end{align}
が得られます。ここで,$x=y=0$のとき$v$は定義されないため,$x\neq0$かつ$y\neq 0$とします。さらに,ガンマ分布の定義域が非負であることに注意すると,$0<u<1$かつ$0<v$となります。以上より,式($\ref{分布の積}$)はガンマ分布とベータ分布の確率密度関数の積となっていることが分かります。$h(u,v)$が$h(u)$と$h(v)$の積で表されることから$U$と$V$は独立となり,$h(u)$と$h(v)$の形から$V\sim\Ga(a+b,1)$かつ$U\sim\Be(a,b)$となります。ベータ関数の基準化定数はベータ関数$1/B(a,b)$でしたので,係数比較することにより式($\ref{主題}$)が示されました。
参考文献
本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。
コメント