【徹底解説】オイラー関数の乗法的性質

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

オイラー関数の乗法的性質

互いに素な自然数$a,b$に対して,

\begin{align}
\varphi(a,b) &= \varphi(a)\varphi(b)\label{主題}
\end{align}

が成り立つ。

証明

$a,b$を法とする既約剰余系をそれぞれ

\begin{align}
\{a_{1},\ldots,a_{m}\},\quad
\{b_{1},\ldots,b_{n}\}
\end{align}

とおくと,既約剰余類の個数より$m{=}\varphi(a),n{=}\varphi(b)$となります。このとき,

\begin{align}
\varphi(ab) &= mn\label{証明のテーマ}
\end{align}

を示すことができれば式($\ref{主題}$)が示されます。そこで,やや天下り的ですが$mn$組の連立一次合同式

\begin{cases}
x\equiv a_{i}\pmod{a}\\[0.7em]
x\equiv b_{i}\pmod{b}\label{連立方程式}
\end{cases}

を考えます。$a$と$b$が互いに素であることに注意すると,中国剰余定理より$ab$を法としてただ一つの解$c_{ij}$をもちます。この$c_{ij}$たちが$ab$を法とする既約剰余系の一つをなすことを示すことができれば,既約剰余類の個数より式($\ref{証明のテーマ}$)が示されます。そこで,以下では

  1. $c_{ij}$が$ab$を法とする剰余類に重複して登場しないこと
  2. $c_{ij}$が$ab$を法とする既約剰余類の一部をなしていること
  3. $c_{ij}$が$ab$を法とする既約剰余類を網羅していること

の順番で証明を続けます。これらの命題を示すことができれば,$c_{ij}$たちが$ab$を法とする既約剰余系の一つをなすことが示され,式($\ref{証明のテーマ}$)が示されます。

$c_{ij}$が$ab$を法とする剰余類に重複して登場しないこと

$c_{ij}$が$ab$を法とする剰余類に重複して登場すると仮定すると,

\begin{align}
c_{ij} \equiv c_{kl}
\end{align}

となる$i,j,k,l$が存在します。このとき,$c_{ij},c_{kl}$が連立方程式($\ref{連立方程式}$)の解であることに注意すると,

\begin{cases}
a_{i}\equiv c_{ij} \equiv c_{kl} \equiv a_{k}\pmod{a}\\[0.7em]
b_{j}\equiv c_{ij} \equiv c_{kl} \equiv b_{l}\pmod{b}
\end{cases}

が得られますが,$a_{i},a_{k}$は$a$を法とする既約剰余系の要素として定義されていますので,$i{=}k$でなければなりません。同様に,$j{=}l$でなければなりません。以上より,$c_{ij}{=}c_{kl}$となるため,$c_{ij}$が$ab$を法とする剰余類に重複して登場しないことが示されました。

$c_{ij}$が$ab$を法とする既約剰余類の一部をなしていること

連立方程式($\ref{連立方程式}$)より,$c_{ij}$は

\begin{align}
c_{ij}\equiv a_{i}\pmod{a}
\end{align}

を満たすため,$c_{ij}$は$a$を法とする既約剰余類$R(a_{i})$に含まれます。すると,既約剰余類の定義より$c_{ij}$は$a$と互いに素となります。同様に,$c_{ij}$は$b$とも互いに素となります。よって,互いに素な整数からなる積の性質より$c_{ij}$は$ab$と互いに素となるため,$c_{ij}$は$ab$を法とする既約剰余類の代表元となります。これより,$c_{ij}$が$ab$を法とする既約剰余類の一部をなしていることが示されました。

$c_{ij}$が$ab$を法とする既約剰余類を網羅していること

$c_{ij}$が$ab$を法とする既約剰余類を網羅していることを示すためには,$ab$と互いに素である整数$c$に対し,必ず

\begin{align}
c \equiv c_{ij}\pmod{ab}\label{パート3の主題}
\end{align}

を満たすことを示せばよいです。$ab$と互いに素である整数$c$は$a$および$b$とも互いに素であることから,既約剰余類の定義より

\begin{cases}
c\equiv a_{i}\pmod{a}\\[0.7em]
c\equiv b_{i}\pmod{b}
\end{cases}

となる$i,j$がただ一つ存在します。これより,$x{=}c$は連立方程式($\ref{連立方程式}$)の解となることが分かりました。一方,$c_{ij}$は中国剰余定理より連立方程式($\ref{連立方程式}$)のただ一つの解であるため,式($\ref{パート3の主題}$)が示されました。

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