【徹底解説】非心F分布とは

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目次

非心$F$分布

独立な二つの確率変数$U{\sim}\chi^{2}(l,\lambda)$と$V{\sim}\chi^{2}(m)$に対して$X{=}(U/l)(V/m)$が従う分布を自由度$(l,1)$,非心度$\lambda$の非心$F$分布といい,$F(l,m,\lambda)$と表す。確率密度関数は,

\begin{align}
f(x) &= \sum_{i=0}^{\infty}p_{i}(\lambda/2)\frac{l^{l/2+i}}{B(l/2+i,~m/2)m^{l/2+i}}\frac{x^{l/2+i-1}}{\left\{1+(l/m)x\right\}^{(l+m)/2+i}}
\end{align}

となる。ただし,

\begin{align}
p_{\lambda/2}(i) &= \frac{(\lambda/2)^{i}}{i!}2^{-\lambda/2}
\end{align}

とおき,$B(\cdot,\cdot)$はベータ関数を表す。

通常の$F$分布と異なるのは,$Y$の定義における分子の$U$が非心カイ二乗分布に従う点であることに注意してください。分母の$V$は通常のカイ二乗分布に従います。

証明

F分布の確率密度関数の導出と同様の議論を行います。非心カイ二乗分布$\chi^{2}(l,\lambda)$の確率密度関数は,通常のカイ二乗分布$\chi^{2}(l{+}2i)$の確率密度関数$g_{i}$の重み付け和となっています。

$i$が重み付けするカイ二乗分布の自由度を定めている点に注意してください。

カイ二乗分布の導出で示されたように,通常のカイ二乗分布$\chi^{2}(n)$はガンマ分布$\Ga(n/2,1/2)$と等しくなりますので,非心カイ二乗分布$\chi^{2}(l,\lambda)$に従う$U$はガンマ分布$\Ga(l/2{+}i,1/2)$に従うことが分かります。同様に,カイ二乗分布$\chi^{2}(m)$に従う$V$はガンマ分布$\Ga(m/2,1/2)$に従います。一方,ガンマ分布に従う確率変数の変数変換に基づくベータ分布の導出で示したように,$U{\sim}\Ga(a, c)$と$V{\sim}\Ga(b,c)$という二つの独立な確率変数に対し,$U/(U{+}V)$は$\Be(a, b)$に従います。これらから,

\begin{align}
Y \equiv \frac{U}{U+V} &\sim \Be\left(\frac{l}{2}+i,~\frac{m}{2}\right)
\end{align}

が分かります。いま,$Z=U/V$とおきます。$Y$を$Z$で表すと$Y=Z/(1{+}Z)$となりますので,$g_{i}(y)$から$g_{i}(z)$を求める際のヤコビアンは,確率変数の変数変換において確率変数が一つの場合を考えて,

\begin{align}
\frac{dy}{dz} &= \frac{1}{(1+z)^2}
\end{align}

となります。ゆえに,$Z$の従う確率密度関数$f$は以下のように表されます。

\begin{align}
g_{i}(z) &= \frac{1}{B(l/2+i,~m/2)} \left(\frac{z}{1+z}\right)^{l/2+i-1}\left(\frac{1}{1+z}\right)^{m/2-1}\cdot\frac{1}{(1+z)^2}\\[0.7em]
&= \frac{1}{B(l/2+i,~m/2)}\frac{z^{l/2+i-1}}{(1+z)^{l/2+i+m/2}}
\end{align}

したがって,先ほどと同様に確率変数の変数変換において確率変数が一つの場合を考えれば,$X=(m/l)Z$の従う確率分布の確率密度関数は,

\begin{align}
g_{i}(x)
&= \frac{1}{B(l/2+i,~m/2)}\frac{\left\{(l/m)x\right\}^{l/2+i-1}}{\left\{1+(l/m)x\right\}^{(l+m)/2+i}}\cdot \frac{dz}{dx} \\[0.7em]
&= \frac{l^{l/2+i-1}}{B(l/2+i,~m/2)m^{l/2+i-1}}\frac{x^{l/2+i-1}}{\left\{1+(l/m)x\right\}^{(l+m)/2+i}}\cdot \frac{l}{m} \\[0.7em]
&= \frac{l^{l/2+i}}{B(l/2+i,~m/2)m^{l/2+i}}\frac{x^{l/2+i-1}}{\left\{1+(l/m)x\right\}^{(l+m)/2+i}}
\end{align}

と表されます。したがって,$g_{i}(x)$を重み付けることにより,非心$F$分布の確率密度関数は

\begin{align}
f(x)
&= \sum_{i=0}^{\infty}p_{i}(\lambda/2)g_{i}(x)\\[0.7em]
&= \sum_{i=0}^{\infty}p_{i}(\lambda/2)\frac{l^{l/2+i}}{B(l/2+i,~m/2)m^{l/2+i}}\frac{x^{l/2+i-1}}{\left\{1+(l/m)x\right\}^{(l+m)/2+i}}
\end{align}

と表されます。

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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