【徹底解説】転置行列の行列式

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

転置行列の行列式

$n$次正方行列$A$とその転置$A^{T}$に対し,以下が成り立つ。

\begin{align}
\det (A) &= \det (A^{T}) \label{主題}
\end{align}

行列式の性質一覧はこちらのページより確認できます。

証明

行列式の置換を用いた表現より,$A^{T}$の行列式は

\begin{align}
\det (A^{T}) &= \sum_{\sigma \in S_{n}}\sgn (\sigma) \prod_{i=1}^{n}a_{\sigma(i),i}\label{置換}
\end{align}

と表されます。ここで,行のインデックス$\{\sigma(1),\ldots,\sigma(n)\}$は集合として$\{1,\ldots,n\}$に一致するから,行のインデックスを小さい順に並び替えることを考えます。すなわち,任意の$1\leq i\leq n$に対して$\sigma(i)=j$とすれば,$i=\sigma^{-1}(j)$となることに注意すると,式($\ref{置換}$)は

\begin{align}
\det (A^{T}) &= \sum_{\sigma \in S_{n}}\sgn (\sigma) \prod_{i=1}^{n}a_{i,\sigma^{-1}(i)} \label{置換前}
\end{align}

となります。また,置換と逆置換の符号が等しいことを利用すると,式($\ref{置換前}$)は

\begin{align}
\det (A^{T}) &= \sum_{\sigma \in S_{n}}\sgn (\sigma^{-1}) \prod_{i=1}^{n}a_{i,\sigma^{-1}(i)} \label{置換後}
\end{align}

となります。ここで,群の性質より$\sigma$と$\sigma^{-1}$を対応させる写像は全単射になりますので,$S_{n}$の元すべてを動く$\sigma$に対する$\sigma^{-1}$を,$S_{n}$の元すべてを動く$\tau$に置き換えることができます。すると,式($\ref{置換後}$)は

\begin{align}
\det (A^{T}) &= \sum_{\tau \in S_{n}}\sgn (\tau) \prod_{i=1}^{n}a_{i,\tau(i)} \\[0.7em]
&= \det (A)
\end{align}

となります。したがって,式($\ref{主題}$)を示すことができました。

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