【徹底解説】群の性質

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

群の性質

ある群$G$の元$a,b,c$で,$a\neq b$ならば

\begin{align}
ac \neq bc,\quad ca \neq cb,\quad a^{-1} &\neq b^{-1} \label{1}
\end{align}

となる。さらに,$c$を固定するとき,以下で定義される三つの写像

\begin{align}
F_{1}:~a\rightarrow ac,\quad F_{2}:~a\rightarrow ca,\quad F_{3}:~a\rightarrow a^{-1}
\end{align}

はいずれも全単射となる。

入門レベルの線型代数では群論まで立ち入る必要はありませんが,行列式の性質を証明する際に群の性質を利用する必要があります。

証明

式($\ref{1}$)は対偶を示します。$a,b,c\in G$に対して$ac=bc$と仮定すると,群の定義より$G$には単位元$\varepsilon$と逆元が存在し,結合法則が成り立つので

\begin{align}
a &= a\varepsilon = a(cc^{-1}) = (ac)c^{-1} = (bc)c^{-1} \\[0.7em]
&= b(cc^{-1}) = b\varepsilon = b
\end{align}

となります。すなわち,$ac=bc$ならば$a=b$という命題が示されましたので,対偶をとることで$a\neq b$ならば$ac\neq bc$が成り立ちます。同様に,$ca=cb$と仮定すると,群の定義より

\begin{align}
a &= \varepsilon a = (c^{-1}c)a = c^{-1}(ca) = c^{-1}(cb) \\[0.7em]
&= (c^{-1}c)b = \varepsilon b = b
\end{align}

となります。すなわち,$ca=cb$ならば$a=b$という命題が示されましたので,対偶をとることで$a\neq b$ならば$ca\neq cb$が成り立ちます。同様に,$a^{-1}=b^{-1}$と仮定すると,群の定義より

\begin{align}
b &= \varepsilon b = (aa^{-1})b = (ab^{-1})b \\[0.7em]
&= a(b^{-1}b) = a\varepsilon = a
\end{align}

が成り立ちます。すなわち,$a^{-1}=b^{-1}$ならば$a=b$という命題が示されましたので,対偶をとることで$a\neq b$ならば$a^{-1}\neq b^{-1}$が成り立ちます。

式($\ref{1}$)の主張は,三つの写像$F_{1},F_{2},F_{3}$が単射であることを意味しています。したがって,これらが全射であることを示せば三つの写像が全単射であることを示すことができます。まず,$F_{1}$に関して,$G$の任意の元$d_{1}$に対して$a=d_{1}c^{-1}$とおけば,群の定義より結合法則が成り立ちますので

\begin{align}
F_{1}(a) &= ac = (d_{1}c^{-1})c\\[0.7em]
&= d_{1}(cc^{-1}) = d_{1}
\end{align}

となります。すなわち,$F_{1}$は全射になります。同様に,$F_{2}$に関して,$G$の任意の元$d_{2}$に対して$a=c^{-1}d_{2}$とおけば,

\begin{align}
F_{2}(a) &= ca = c(c^{-1}d_{2})\\[0.7em]
&= (cc^{-1})d_{2} = d_{2}
\end{align}

となります。すなわち,$F_{2}$は全射になります。同様に,$F_{3}$に関して,$G$の任意の元$d_{3}$に対して$a=d_{3}^{-1}$とおけば,

\begin{align}
F_{3}(a) &= a^{-1} =(d_{3}^{-1})^{-1} = d_{3}
\end{align}

となります。すなわち,$F_{3}$は全射になります。以上より,三つの写像$F_{1},F_{2},F_{3}$が全単射であることを示せました。

シェアはこちらからお願いします!

コメント

コメントする

※ Please enter your comments in Japanese to distinguish from spam.

目次