【徹底解説】ガウスによるガンマ関数の無限乗積表示

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ガウスのガンマ関数無限乗積表示

ガンマ関数は,以下のように無限乗積を用いて表すことができる。

(1)Γ(x)=limnn!nxm=0n1x+m

ただし,x0,1,2である。

ガンマ関数の定義域はxが実数のときはx>0でしたが,ガウスの無限乗積表示を用いるとx0,1に拡張することができます。定義域は複素数領域へ拡張することも可能です。

証明

積分を級数表示するために,ガンマ関数の積分表示ベータ関数で表すことを考えます。ガンマ関数とベータ関数の関係は極座標変換を用いて証明しましたが,今回はネイピア数の定義より無限級数に置き換えることによりベータ関数を出現させることを考えます。ガンマ関数の定義は

(2)Γ(x)=0tx1etdt

ですので,被積分関数をベータ関数の被積分関数の形であるt(1t)を出現させるために,ネイピア数側を少し変形してあげましょう。ネイピア数の定義より,

(3)et=limn{(1tn)nt}t(4)=limn(1tn)n

となりますので,ガンマ関数は以下のように表されます。

(5)Γ(x)=0tx1limn(1tn)ndt(6)=0limnfn(t)dt

ただし,

(7)fn(t)=tx1(1tn)n

と置きました。少しずつベータ関数の形に近づいてきました。ここで,fn(t)は連続かつ[0,]で可積分であり,nのときにfn(t)が可積分な関数tx1etに上から抑えられながら収束することを踏まえると,ルベーグの収束定理より式(6)の極限と積分を交換することができます。

(8)Γ(x)=0limnfn(t)dt(9)=limn0fn(t)dt(10)=limnΓn(x)

ただし,

(11)Γn(x)=0fn(t)dt

と置きました。ここで,

(12)u=tn

と置くと,以下のようにΓn(x)を変形できます。

(13)Γn(x)=nx10ux1(1u)nndu(14)=nx0ux1(1u)ndu(15)=nxB(x,n+1)

ただし,B(,)はベータ関数を表します。ここで,ガンマ関数と階乗の関係ガンマ関数とベータ関数の関係を利用すると,

(16)Γn(x)=nxΓ(x)Γ(n+1)Γ(x+n+1)(17)=nxΓ(x)n!(x+n)(x+n1)(x+1)xΓ(x)(18)=nxn!m=0n1x+m

と変形できます。ただし,x0,1とします。以上より,式(10)と式(18)を用いることで,式(1)が導かれます。

定義域を複素数に拡張すると,x0,1というのは「負の整数に極を持つ」と表現されます。

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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