本記事は「これなら分かる!はじめての数理統計学」シリーズに含まれます。
不適切な内容があれば,記事下のコメント欄またはお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
目次
多変量正規分布の標準化
多変量正規分布$\N(\vmu, \Sigma)$に従う$\mX$に対し,以下で定義される確率変数
\begin{align}
\mZ &= \Sigma^{-1/2}(\mX-\vmu)\label{線形変換}
\end{align}
\mZ &= \Sigma^{-1/2}(\mX-\vmu)\label{線形変換}
\end{align}
は$\N(\vzero_n, I_n)$に従う。ただし,$\vzero_n$は$n$次元ゼロベクトル,$I_n$は$n$次元単位行列を表す。
$1$次元の場合と本質的には同じ操作を行っています。
証明
式($\ref{線形変換}$)を変形すると,
\begin{align}
\mZ &= \Sigma^{-1/2}\mX - \Sigma^{-1/2}\vmu
\end{align}
\mZ &= \Sigma^{-1/2}\mX - \Sigma^{-1/2}\vmu
\end{align}
となります。多変量正規分布の線形変換の定理において,
\begin{align}
A = \Sigma^{-1/2},\quad \vb = -\Sigma^{-1/2}\vmu
\end{align}
A = \Sigma^{-1/2},\quad \vb = -\Sigma^{-1/2}\vmu
\end{align}
を代入すると,$\mZ$もまた多変量正規分布に従い,その平均ベクトルは,
\begin{align}
A\vmu + \vb &= \Sigma^{-1/2}\vmu - \Sigma^{-1/2}\vmu = \vzero
\end{align}
A\vmu + \vb &= \Sigma^{-1/2}\vmu - \Sigma^{-1/2}\vmu = \vzero
\end{align}
となり,分散共分散行列は
\begin{align}
A\Sigma A^{T} &= \Sigma^{-1/2}\Sigma \left(\Sigma^{-1/2}\right)^{T}
= \Sigma^{1/2}\left(\Sigma^{T}\right)^{-1/2}
= \Sigma^{1/2}\Sigma^{-1/2}
= I_{n}
\end{align}
A\Sigma A^{T} &= \Sigma^{-1/2}\Sigma \left(\Sigma^{-1/2}\right)^{T}
= \Sigma^{1/2}\left(\Sigma^{T}\right)^{-1/2}
= \Sigma^{1/2}\Sigma^{-1/2}
= I_{n}
\end{align}
となります。ただし,$I_{n}$は$n$次元単位行列を表し,正則行列において逆行列の転置と転置の逆行列が等しくなること,および$\Sigma$が対称行列であることを利用しました。したがって,
\begin{align}
\mZ &\sim \N(\vzero_n, I_n)
\end{align}
\mZ &\sim \N(\vzero_n, I_n)
\end{align}
が得られます。
参考文献
本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。
コメント
コメント一覧 (2件)
(2)におけるZの分散は線形変換の定理に従えば,Σ^(-1/2)Σ(Σ^(-1/2))^Tだと思いますが,なぜそのような結果になるのか教えていただきたいです.
aos様
本文で詳しめに記述しました。ご確認お願い致します。