【徹底解説】多変量正規分布の線形変換

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多変量正規分布の線形変換

確率変数を結合したベクトル$\mX \in \bbR^{D}$が$\N(\vmu, \Sigma)$に従っているならば,$A \in \bbR^{D^{\prime}\times D}$および$\vb \in \bbR^{D^{\prime}}$に対し,

\begin{align}
A\mX + \vb \sim \N(A\vmu + \vb, A\Sigma A^T)
\end{align}

である。

多変量正規分布を扱う上で非常に有用な定理です。分散と共分散が行列として定義されているために,スカラーの場合と同様に扱うことができない点に注意が必要です。

証明

$\mX$を変数変換した確率変数を$\mY$とおきます。

\begin{align}
\mY &= A\mX + \vb
\end{align}

$\mY$のモーメント母関数は以下のように表されます。

\begin{align}
E[\exp\left(\vt^T \mY\right)] &= E\left[\exp\left\{\vt^T (AX+\vb) \right\}\right] \\[0.7em]
&= E\left[ \exp{ (A^T\vt)^TX } \cdot \exp\left(\vt^T \vb\right) \right]\\[0.7em]
&= E\left[ \exp{ (A^T\vt)^TX } \right] \cdot \exp\left(\vt^T \vb\right)
\end{align}

多変量正規分布のモーメント母関数の定義を代入します。

\begin{align}
E\left[ \exp{ (A^T\vt)^TX } \right] \cdot \exp\left(\vt^T \vb\right) &= \exp\left\{\vmu^T (A^T \vt) + \frac{1}{2}(A^T \vt)^T\Sigma (A^T \vt) \right\} \cdot \exp\left( \vt^T \vb \right) \\[0.7em]
&= \exp\left[ (A\vmu + \vb)^T \vt + \frac{1}{2}\left\{\vt^T \left(A \Sigma A^T\right)\vt\right\} \right]
\end{align}

モーメント母関数と確率密度関数は一対一対応しますので,多変量正規分布のモーメント母関数の定義と係数比較をすることで,

\begin{align}
Y &\sim \N(A \vmu + \vb, A\Sigma A^T)
\end{align}

となることが分かります。

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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