【過去問解答】2019年統計検定1級<数理統計問2>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

指数分布のパラメータ推定に関する出題です。

(1)

\begin{align}
E[U] &= \frac{2}{\lambda}
\end{align}

まず,指数分布に従う確率変数の期待値は$1/\lambda$となります。

したがって,期待値の線型性より,

\begin{align}
E[U] &= E[X_{1}]+E[X_{2}] = \frac{1}{\lambda}+\frac{1}{\lambda} = \frac{2}{\lambda}
\end{align}

が得られます。

本番では指数分布の期待値は定義から導出するか,モーメント母関数から導出した方が無難です。

(2)

\begin{align}
g(u) &=
\begin{cases}
\lambda^{2}ue^{-\lambda u}&(u>0)\\[0.7em]
0&(u\leq 0)
\end{cases}
\end{align}

以下の変数変換を考えます。

\begin{cases}
U = X_{1}+X_{2}\\[0.7em]
V = X_{2}
\end{cases}

このとき,$X_{1}$と$X_{2}$は互いに独立であることに注意すると,確率変数の和と畳み込みより,

\begin{align}
g_{U}(u) &= \int_{-\infty}^{\infty}f_{X}(u-v)f_{X}(v)dv
\end{align}

となります。$u-v>0$かつ$v>0$となるため,

\begin{align}
g(u) &= \int_{-\infty}^{\infty}f_{X}(u-v)f_{X}(v)dv
= \lambda^{2}e^{-\lambda u}\int_{0}^{u}dv
= \lambda^{2}ue^{-\lambda u}
\end{align}

が得られます。$u-v\leq 0$または$v\leq 0$のときは$f_{X}$のいずれかが$0$となりますので,

\begin{align}
g(u) &= \int_{-\infty}^{\infty}f_{X}(u-v)f_{X}(v)dv = 0
\end{align}

が得られます。

(3)

\begin{align}
E\left[\frac{1}{U}\right] &= \lambda
\end{align}

(2)の結果と期待値の定義に従って計算します。$U>0$の場合を考えれば十分ですので,

\begin{align}
E\left[\frac{1}{U}\right] &= \int_{0}^{\infty}\frac{1}{u}g(u)du\\[0.7em]
&= \int_{0}^{\infty}\frac{1}{u}\cdot\left(\lambda^{2}ue^{-\lambda u}\right)du\\[0.7em]
&= \lambda^{2}\left[-\frac{1}{\lambda}e^{-\lambda u}\right]_{0}^{\infty}
= \lambda^{2}\cdot \frac{1}{\lambda}
= \lambda
\end{align}

と求められます。

(4)

\begin{align}
\alpha = \sqrt{2}
\end{align}

まず,$R(\alpha,\theta)$を求めましょう。そのためには$E[\barX]$と$E[1/\barX]$の値が必要となるため,先んじて求めておきます。前問(3)の結果より,

\begin{align}
E[\barX] &= E\left[\frac{U}{2}\right] = \frac{1}{2}E[U] = \frac{1}{\lambda}
\end{align}

となります。次に,$E[1/\barX]$を求めましょう。同様に前問(3)の結果より,

\begin{align}
E\left[\frac{1}{\barX}\right] &= E\left[\frac{2}{U}\right] = 2E\left[\frac{1}{U}\right] = 2\lambda
\end{align}

となります。これらと$\theta=1/\lambda$を用いて$R(\alpha,\theta)$を求めましょう。

\begin{align}
R(\alpha,\theta) &= E[L(\alpha\barX,\theta)]\\[0.7em]
&= E\left[\frac{\alpha\barX}{\theta}+\frac{\theta}{\alpha\barX}-2\right]\\[0.7em]
&= \frac{\alpha}{\theta}E\left[\barX\right]+\frac{\theta}{\alpha}E\left[\frac{1}{\barX}\right]-2\\[0.7em]
&= \frac{\alpha}{\theta\lambda}+2\frac{\theta\lambda}{\alpha}-2
= \alpha+\frac{2}{\alpha}-2
\end{align}

$\alpha>0$かつ$2/\alpha>0$であることから相加相乗平均の関係が利用でき,

\begin{align}
R(\alpha,\theta) &\geq 2\sqrt{\alpha\cdot\frac{2}{\alpha}}-2
= 2(\sqrt{2}-1)
\end{align}

となります。ただし,等号成立条件は$\alpha{=}2/\alpha$かつ$\alpha{>}0$より,$\alpha{=}\sqrt{2}$となります。実際に増減表を書いても分かる通り,$R(\alpha,\theta)$は$\alpha{=}\sqrt{2}$で最小値$2(\sqrt{2}{-}1)$をとります。

$R^{\prime\prime}(\sqrt{2}){=}\sqrt{2}>0$であることから極値性を示してもよいでしょう。

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