【徹底解説】確率変数の和の分布と畳み込み

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確率変数の和の分布と畳み込み

離散型確率変数$X$,$Y$に対して,$U=aX+bY$の確率質量関数は,$V=Y$を用いて

\begin{align}
f_{U}(u) &= \sum_{l=1}^{\infty}f_{XY}\left(\frac{u}{a}-\frac{bv_{l}}{a},v_{l}\right)\label{主題1}
\end{align}

で表される。同様に,$X$,$Y$が連続型確率変数であるときは,$U$の確率密度関数は,$V=Y$を用いて

\begin{align}
f_{U}(u) &= \int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{|a|}f_{XY}\left(\frac{u}{a}-\frac{bv}{a},v\right)dv\label{主題2}
\end{align}

で表される。特に,$a=b=1$かつ$X$と$Y$が独立であるとき,$U$の確率密度関数は

\begin{align}
f_{U}(u) &= \int_{-\infty}^{\infty}f_{X}(u-v)f_{Y}(v)dv\label{主題3}
\end{align}

という畳み込み積分で表される。

「確率変数の和の分布が畳み込み積分になる」と暗記するのは危険です。畳み込み積分の形は,あくまでも確率変数の変数変換の性質と独立の性質を利用して得られることに注意してください。

証明

$(U,V)=\vg(X,Y)$とおき,$\vg$の逆関数を$\vh$とおくと,

\begin{align}
(X,Y) &= \vh(U,V) = \left(\frac{U}{a}-\frac{bV}{a}, V\right)
\end{align}

と表されます。ここで,確率変数の変数変換の性質より,

\begin{align}
f_{UV}(u, v) &= f_{X Y} \left\{ \vh(u, v) \right\} = f_{XY}\left(\frac{u}{a}-\frac{bv}{a},v\right)
\end{align}

が成り立ちます。$V$に関して周辺化すると,式($\ref{主題1}$)が得られます。同様に,確率変数の変数変換の性質より,

\begin{align}
f_{U, V}(u,v) &= f_{X, Y} \left(\vh(u, v)\right)\cdot | J(u,v) |\\[0.7em]
&= f_{XY}\left(\frac{u}{a}-\frac{bv}{a},v\right)\cdot | J(u,v) |\label{変数変換後}
\end{align}

が成り立ちます。ヤコビアンは

\begin{align}
J(u, v) &= \left|
\begin{array}{cc}
\partial (u/a-bv/a)/ \partial u & \partial (u/a-bv/a) / \partial v \\
\partial v / \partial u & \partial v / \partial v
\end{array}
\right| \\[0.7em]
&= \left|
\begin{array}{cc}
1/a & -b/a \\
0 & 1
\end{array}
\right| \\[0.7em]
&= \frac{1}{|a|}
\end{align}

と計算できますので,式($\ref{変数変換後}$)に代入した後,$V$に関して周辺化すると,式($\ref{主題2}$)が得られます。式($\ref{主題2}$)に対し,$a=b=1$と変数変換の性質と独立の性質を利用すると,式($\ref{主題3}$)が得られます。

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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