本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
整数問題
因数の候補の探し方について説明せよ
分子が定数項の正の約数,分母が最高時の係数の正の約数とする分数を考える。ただし,正の場合も負の場合も考慮する。
合同式$x^2 \equiv 11\pmod {5^3}$を解く方針を説明せよ
$\bmod 5$から考えていく。このとき,$x\equiv 11 \equiv 1 \pmod 5$だからといって$11$を崩してはいけない。なぜなら,「$a$が法$p$($2$以外の素数)に対して平方剰余であるとき,任意の$p$の累乗$p^e\;(e \leq 1)$に対しても$a$は平方剰余になる」という定理を利用するため。
pell方程式について述べよ
$x^2-ay^2=1$を指す。一般にpell方程式は無限個の自然数解をもつが,最小の自然数解$(x_1, y_1)$に対して$x_n + y_n \sqrt{a}$もpell方程式の解になることを利用することで,漸化式を立てて逐次的に解を求めることができる。
オイラーの定理を述べよ
$m$が正の整数で$a$を$m$と互いに素な正の整数としたとき,
a^{\varphi(m)} \equiv 1\bmod m
\end{align}
オイラー関数の計算方法について述べよ
$m$の素因数分解が
m &= \prod_{k=1}^{d} p_k ^{e_k}
\end{align}
と与えられているならば,
\varphi(m) &= m\prod_{k=1}^{d} \left( 1 - \frac{1}{p_k} \right)
\end{align}
と計算できる。
オイラーの関数の代表的な性質を2つ挙げよ
- 素数$p$に対して$\varphi(p^{k}) = p^k - p^{k-1}$
- 互いに素な自然数$m,n$に対して$\varphi(nm) = \varphi(n)\varphi(m)$
オイラーの定理を利用できる例題を考えよ
例えば$2022^{22}$を$5^2$で割った余りを考える問題。オイラーの定理より
2022^{\varphi(25)} &\equiv 1 \bmod 25
\end{align}
となり,
\varphi(25) &= 25\cdot \left( 1 - \frac{1}{5} \right) \\[0.7em]
&= 20
\end{align}
であることから,$25$を法として
2022^{22} &\equiv 2022^{20}\cdot 2022^{2} \\[0.7em]
&= 2022^{2} \\[0.7em]
&= (2000 + 22)^2 \\[0.7em]
&\equiv 22^2 \\[0.7em]
&= 9
\end{align}
と求めることができる。
線形代数
球と平面の問題における定石について述べよ
まずは図示する。球の中心と切り取られた円の中心を結んだり,球の中心と球と平面が交わる部分を結んだりすることで,平行・垂直の関係が見えてくることが多い。垂直の関係を利用すれば,内積・外積が利用できるほか,三平方を利用して幾何的に解き進めることもできる。
四面体の体積の求め方を2通り述べよ
底面を構成する平面を定め,その外積を利用して四面体の高さを求めることができる。他には,以下のように行列式を利用して4点$P_i(x_i, y_i, z_i)$を頂点にもつ四面体の体積を求めることもできる。ただし,absは絶対値を表す。
V &=\mathrm{abs} \left( \frac{1}{6}
\begin{vmatrix}
x_1 & y_1 & z_1 & 1 \\
x_2 & y_2 & z_2 & 1 \\
x_3 & y_3 & z_3 & 1 \\
x_4 & y_4 & z_4 & 1
\end{vmatrix}
\right)
\end{align}
任意の二次正方行列$X$に対して$AX=XA$を成立させる$A$の条件は?
任意の$X$ということなので,一旦特定の$X$に対する必要条件から絞っていく。その際,以下のような簡単な$X$を選ぶとうまくいく。
X &=
\begin{pmatrix}
0 & 1 \\
0 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}
行列計算を簡単にする方針の一例を挙げよ
小行列に分割する。
ある行列を対称行列と交代行列で表すときの方針を述べよ
対称行列と交代行列をそれぞれ文字で置いて両辺を転置する。
ケイリー・ハミルトンの定理の逆に関して注意点を述べよ
例えば$2$次正方行列$A$が$A^2 - 7A + 10 = 0$を満たしているからといって$a+d=7$,$ad - bc = 10$となるとは限らない。この場合,条件式とケイリー・ハミルトンの定理を引き算して
A^2 - 7A + 10 &= 0 \\
A^2 - (a + d)A + (ad - bc)E &= 0\\
(a + d + 7)A + (ad - bc + 10)E &= 0
\end{align}
とする必要がある。
行列の$n$乗を求める手続きについて説明しなさい
まずは行列の対角化を用いて$n$乗を求められないか検討する。固有値が煩雑になったり,固有値が重解を持つ場合は,固有方程式に$A$を代入して得られる方程式から$A^n$の次元を落としていけないか検討する(ケーリー・ハミルトンの定理の利用)。
行列の$n$乗で二項定理を利用するときの注意点を述べよ
行列が可換($AB=BA$)であることを調べる。
置換の記号の順番に関する注意点と置換の逆変換の求め方を述べよ
置換の記号は関数と同じように先に適用するのが一番右側に位置する。逆置換は上下を入れかえた後に上の行に関して昇順に上下の対応関係を並び替えたものになる。
交代式と対称式を利用した行列式の因数分解について述べよ
交代式は最簡交代式と対称式の積で表される。両辺の次数は行列式の対角線をみて判断する。以下の例題に慣れたい。$k$の値は恒等式の考え方を利用して両辺に適当な値を代入して求めることができる。
\begin{vmatrix}
1 & b + c & a^2 \\
1 & c + a & b^2 \\
1 & a + b & c^2
\end{vmatrix}
&= \text{3次交代式} \\
&= k(a - b)(b - c)(c - a)\\
\begin{vmatrix}
1 & a^2 & (b + c)^2 \\
1 & b^2 & (c + a)^2 \\
1 & c^2 & (a + b)^2
\end{vmatrix}
&= \text{4次交代式} \\
&= k(a - b)(b - c)(c - a)(a + b + c)\\
\begin{vmatrix}
1 & a & a^2 & bcd \\
1 & b & b^2 & cda \\
1 & c & c^2 & dab \\
1 & d & d^2 & abc
\end{vmatrix}
&= \text{6次交代式} \\
&= k(a - b)(a - c)(a - d)(b - c)(b - d)(c - d)
\end{align}
小行列式を利用する因数分解で特に注意するべきケースについて述べよ
和と差の積。以下に気をつける。
\begin{vmatrix}
A & B \\
B & A
\end{vmatrix}
&= |A + B||A - B| \\
&\neq |A^2 - B^2|
\end{align}
クラメルの公式について述べよ
行列を用いた連立1次方程式の解法の1つ。係数行列(右辺の値を左辺に結合しないやつ)を$A$としたときに,$A$が正則の場合に利用できる。解は$\frac{D_i}{|A|}$という形になり,$D_i$は右辺の値を係数行列$A$の$i$列目と入れ替えたときの行列式の値を表している。
1. 定数項が全て0である連立方程式が自明でない解をもつ条件
2. 定数項が全て0でない連立方程式が解をもつ条件
3. $m$次方程式と$n$次方程式が共通解をもつ条件
を述べよ
- 必要十分条件は係数行列$A$が$|A|=0$を満たすこと
- 必要条件は係数行列の右端に右辺を結合した行列$B$が$|B|=0$を満たすこと
- 必要十分条件は係数行列の右端に右辺を結合した行列$B$のシルベスタ―行列$C$が$|C|=0$を満たすこと
例えば3. に関しては以下のように適用する。
x^3 + mx - 2 &= 0 \\
x^2 - 2x + m &= 0
\end{align}
が共通解をもつ必要十分条件は
\begin{vmatrix}
1 & 0 & m & -2 & 0 \\
0 & 1 & 0 & m & -2 \\
1 & -2 & m & 0 & 0 \\
0 & 1 & -2 & m & 0 \\
0 & 0 & 1 & -2 & m
\end{vmatrix}
&= 0
\end{align}
あるベクトルが線形独立となる条件を述べよ
ベクトルを並べた行列のランクがベクトルの数と一致すること。特にベクトルの数と実数空間の次数が等しい場合にはベクトルを並べた行列が正則であること。
部分空間の次元と基底の問題の定石を述べよ
元を並べた行列に対し,ランクを求めるときと同様にして行基本変形によって変形を行う。そうすることで変換後の次元が分かり,線形従属な元を排除することで適切な基底を選択することができる。その際,基本変形後の行列を参考にすることで線形従属の具体的な係数も分かる。
線形変換$A$の像に関して,$|A|\neq 0$の場合と$|A|= 0$の場合それぞれについて方針を述べよ
$A$が正則の場合には,実際に逆行列をかけることで変換後の変数を変換前の変数で表してしまう。正則でない場合は媒介変数表示などでちまちま計算していく。
$A = \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}$と$B = \begin{pmatrix} a & b \\ b & -a \end{pmatrix}$の定める線形変換の意味を述べよ。
$A$は原点を中心として$\theta$だけ回転させてから原点からの距離を$\sqrt{a^2 + b^2}$倍にする変換。$B$は直線$y = x\tan \frac{\theta}{2}$に関して対称移動してから原点からの距離を$\sqrt{a^2 + b^2}$倍にする変換。なお,$\theta$は$\cos \theta = \frac{a}{\sqrt{a^2 + b^2}}$を満たす角度である。
基底に関する線形写像の表現行列の定義を述べよ
基底$[{\bf v}_1, \ldots, {\bf v}_n]$,$[{\bf w}_1\ldots {\bf w}_n]$と線形写像$f$に関して,表現行列$P$は以下のように定義される。
A[{\bf v}_1, \ldots, {\bf v}_n] &= [{\bf w}_1\ldots {\bf w}_n]P
\end{align}
上式を
AV &= WP
\end{align}
と表すと,$W$は基底を集めた行列であり正則であることから以下のように$P$を求められる。
P &= W^{-1} AV
\end{align}
$\mathrm{Im}(f)$の次元と基底,$\mathrm{Ker}(f)$の次元と基底の選び方について述べよ
$\mathrm{Im}(f)$の次元は表現行列のランク,基底は表現行列からランク数分選ぶ。$\mathrm{Ker}(f)$の次元は次元の定理,もしくは実際に$A{\bf x} = {\bf 0}$を解くことで求める。基底も実際に$A{\bf x} = {\bf 0}$を解くことで求める。
全射・単射・全単射の判別方法を$\mathrm{rank}(A)$を用いて述べよ
- $\mathrm{rank} A \neq \mathrm{rank} V$,$\mathrm{rank} A = \mathrm{rank} V$のとき全射
- $\mathrm{rank} A = \mathrm{rank} V$,$\mathrm{rank} A \neq \mathrm{rank} V$のとき単射
- $\mathrm{rank} A = \mathrm{rank} V$,$\mathrm{rank} A = \mathrm{rank} V$のとき全単射
シュミットの直交化法を説明すると同時に最初の処理を具体的に示せ
まずは基準となるベクトル${\bf b}_1$を正規化${\bf u}_1={\bf b}_1/|{\bf b}_1|$する。そのあと,${\bf b}_2={\bf a}_2 - ({\bf a}_2 \cdot {\bf u}_1){\bf u}_1$として前に設定した基底方向の成分を引き算していく。
直交補空間の正規直交基底の求め方を述べよ
${\bf a}_1$と${\bf a}_2$によって生成される空間の直交補空間に属するベクトルを${\bf x}$とおくと,${\bf x}\cdot {\bf a}_1=0$と${\bf x}\cdot {\bf a}_2=0$をまとめて行列表記して行基本変形を行うことで${\bf x}$を何かしらのベクトルの線形和として表す。これらのベクトルからシュミットの直交化法を用いて基底を求めればよい。
対称行列と対角化可能性に関して説明せよ
実対称行列は直交行列で対角化可能。同様に,エルミート行列(共役転置をとっても同じ行列になるもの)はユニタリ行列で対角化可能。
行列$A$が対角化不可能であるケースを1つ挙げたうえで三角化を行うための手続きを説明せよ
固有値の重複度よりも固有ベクトルの個数が少ないときには対角化不可能。その際は,固有ベクトルに直交する適当なベクトルを用意して,シュミットの直交化法を用いることで疑似的に対角化を行う。すると,三角行列が出現する。
フロベニウスの定理について述べよ
行列の多項式の固有値は,行列の固有値を代入すると求められるよという定理。なお,行列が正則の場合は逆行列の固有値は逆数になる。
スペクトル分解を得るための手続きを説明せよ
行列$A$を固有値を係数とする線形結合$\lambda_1 A_1 + \lambda_2 A_2$などとして分解する。その際,固有ベクトルを並べた行列との積を考えることで$A_1$と$A_2$を求める。
固有多項式と最小多項式に関して説明せよ
固有多項式の因数を含むものが候補となる。実際に固有多項式の要請を満たすかどうか次数の低いものから確認していく。
次元定理の核に関して固有値とのつながりを説明せよ
核の定義から固有値$0$を表していると読むこともできる。
3次方程式の一般的な解法について述べよ
$x^3 + ax^2 + bx + c = 0$に対しては,
- $x = y - \frac{a}{3}$とおくことで$x^2$の項を消す
- 2乗のかたまりを改めて文字で置きなおす
- $y = u + v$とおくことで解と係数の関係に帰着させる
- $u^3 = A^3$の解は$A, \omega A, \omega^2 A$となることを利用して解を求める
x_1 &= u + v \\
x_2 &= \omega u + \omega^2 v \\
x_3 &= \omega^2 u + \omega v
\end{align}
複素数の回転について述べよ
複素数$z$を$\varphi$回転するためには$e^{i\varphi}$を掛ければよい。なぜなら,$z=e^{\theta}$とおけば,指数部分が足し算になり位相が$\theta + \varphi$になるからである。別の言い方をすれば,$\cos \varphi + i\sin \varphi$を掛ければ$\varphi$回転を表すことになる。
微分積分
シグマの極限が出てきたときに思い浮かべる方針を述べよ
区分求積法
階乗の極限が出てきたときに思い浮かべる方針を述べよ
スターリングの公式。
n! \sim \sqrt{2\pi n}\left(\frac{n}{e}\right)^n
\end{align}
$\sum_{n=1}^{\infty} 1/(n\cdot 2^n)$の求め方を述べよ
分母の$n$に注目する。こいつを排除したいので,$x^n$を微分することを考える。$f(x)=\sum_{n=1}^{\infty} 1/(n\cdot 2^n)x^n$とおくと,$f'(x)$が無限等比級数の公式を利用して求められるので,そいつを積分したものが答え。
無限級数の求め方の典型例について説明せよ
無限級数で$x^m / m$のような形が出現していれば,とにかく微分を疑う。上の問題もその一例になっている。ただし,その際は収束半径を明示する必要がある。収束半径$R$は$1/R = \lim_{n\rightarrow \infty} a_{n}/a_{n+1}$で求められる。
三角関数と多項式関数が混合した極限の求め方について述べよ
三角関数をマクローリン展開して多項式近似すればよい。他にも,分数関数$f/g$になっていて,$\lim_{x\rightarrow z} f'/g'$が存在し,極限値の十分近くで$g'$が存在する場合はロピタルの定理をキレイな形になるまで適用すればよい。
$\tan x$のマクローリン展開の求め方について述べよ
マクローリン展開の式に$\tan x$の微分を代入していては煩雑になってしまうので$\sin x$と$\cos x$のマクローリン展開が容易に求められることに注目して,$\sin x = \tan x \cdot \cos x$を利用する。具体的には,$\tan x$が奇関数であることから$x$の指数が奇数に絞られ,それらの係数を$\sin x = \tan x \cdot \cos x$を恒等式として満たすように定めていけばよい。
ライプニッツの公式の概要とその注意点について述べよ
関数の積を二項定理likeに展開できる公式。例えばいずれか一方のうち微分可能回数が少ない方が$3$回微分可能であれば$n=3$でストップする
部分分数分解の分母の候補について述べよ
例えば$1/(x+a)^2$という項があれば$1/(x+a)$と$1/(x+a)^2$の両方が候補になる
逆三角関数になる積分公式2つと類似する公式を述べよ
\int \frac{dx}{\sqrt{a^2 - x^2}} &= \sin ^{-1}\frac{x}{a} + C \\
&= -\cos ^{-1}\frac{x}{a} + C (a > 0) \\
\int \frac{dx}{ x^2 + a^2 } &= \frac{1}{a}\tan^{-1}\frac{x}{a} + C (a \neq 0) \\
\int \frac{dx}{\sqrt{x^2 + A}} &= \log |x + \sqrt{x^2 + A}| + C
\end{align}
注意するべきケースは,逆三角関数をそのまま積分するもの。この場合は,部分積分を利用して逆三角関数の微分を利用して解く。
三角関数の積分で手詰まりになった際に利用する変換公式を述べよ
\tan\frac{x}{2} &= t
\end{align}
ウォリスの公式を述べよ
($n$が2以上の偶数のとき)
\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x dx &= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^n x dx \\
&= \frac{n-1}{n}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{\pi}{2}
\end{align}
($n$が3以上のの奇数のとき)
\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x dx &= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^n x dx \\
&= \frac{n-1}{n}\cdot \frac{2}{3}
\end{align}
・直線
・円
・正葉線
・カージオイド
・レム二スケート
の極方程式を述べよ
・直線
r\cos(\theta - \alpha) &= a\;(a > 0)
\end{align}
・円
r &= 2a\cos(\theta - \alpha)
\end{align}
・正葉線
r &= a\cos 2\theta
\end{align}
・カージオイド
r &= a(1 + \cos\theta)
\end{align}
・レム二スケート
r^2 &= 2a^2\cos 2\theta
\end{align}
極方程式で表された図形の面積の求め方を述べよ
S &= \int_{\alpha}^{\beta} \frac{1}{2}r^2 d\theta \\
&= \int_{\alpha}^{\beta} \frac{1}{2}\left\{f(\theta)\right\}^2 d\theta
\end{align}
媒介変数表示された曲線を$x$軸で回転させたときの体積の求め方を述べよ
V &= \int_{a}^{b} \pi y^2 dx \\
&= \int_{\alpha}^{\beta} \pi \left\{ g(t) \right\}^2 f'(t) dt
\end{align}
曲線の長さの求め方を述べよ
l &= \int_{a}^{b} \sqrt{1 + \left\{ f'(t) \right\}^2}dx
\end{align}
2変数関数の極値に関して説明せよ
- 偏導関数の値が全て0かつヘッセ行列が正定値→極小
- 偏導関数の値が全て0かつヘッセ行列が負定値→極大
なお,正定値の判断は首座小行列が全て正かどうかで行う。ヘッセ行列の負が正定値の場合には負定値となる。首座小行列に0のものが含まれる場合は極値を取るかどうかの吟味が別途必要になる。
ヘッセ行列が$0$だった場合の極値の扱いについて述べよ
例えば一回微分を$0$にする点のうち$(1, -1)$と$(1, -2)$に関してヘッセ行列が$0$となったケースを考える。この場合は,$f^{\prime}(x, a)$の$x=1$まわりに関する増減表を考える。すると,例えば$f^{\prime}(1, a)$の前後で符号が負の場合は,導関数が負であり続けるということなので,$f(x, y)$が$(1, a)$において極値を取らないことが分かる。そのほかの場合も,$f^{\prime}(x, a)$の$x=1$まわりの符号の変化で極値を取るか取らないかを吟味する。
包絡線の求め方を述べよ
パラメータを変数とみなして偏微分をして偏導関数が$0$になるパラメータを元の式に代入する。
接平面と法線の求め方を述べよ
(接平面の方程式)
f_x(x_0, y_0, z_0)(x - x_0) + f_y(x_0, y_0, z_0)(y - y_0) + f_z(x_0, y_0, z_0)(z - z_0) &= 0
\end{align}
(法線の方程式)
\frac{(x - x_0)}{f_x(x_0, y_0, z_0)} = \frac{(y - y_0)}{f_y(x_0, y_0, z_0)} = \frac{(z - z_0)}{f_z(x_0, y_0, z_0)}
\end{align}
3重積分の極座標変換とヤコビアンを述べよ
x &= r\sin\theta \cos \varphi \\
y &= r\sin\theta \sin \varphi \\
z &= r\cos\theta
\end{align}
とおくとき,ヤコビアンは
J &= r^2\sin \theta
\end{align}
積分における特異点の処理について述べよ
積分範囲で被積分関数が発散した場合には適当な変数に置き換えて広義積分を利用する
微分方程式
微分方程式の大分類を述べよ
- 定数係数非同次微分方程式
- 完全微分方程式
- 非同次オイラー方程式
微分方程式の分類を小分類を述べよ
定数係数非同次微分方程式がさらに細かく分かれる。
- 変数分離形
- 同次形
- 一階線形
- ベルヌーイ形
- 完全微分方程式
- 二階同次線形
- 二階非同次線形
- オイラーの微分方程式
- クレローの微分方程式
- ラグランジュの微分方程式
- リッカチの微分方程式
$y^{\prime}=P(x)Q(y)$の解法を述べよ
変数分離形。$Q(y)$を左辺に移項して両辺を$x$で微分。
$y^{\prime}=f(ax + by + c)$の解法を述べよ
変数分離形。$z=ax+by+c$と置いて他の微分方程式の形に帰着させる。
$y^{\prime}=f(y/x)$の解法を述べよ
同次形。$u=y/x$と置いて他の微分方程式の形に帰着させる。
$y' + P(x)y = Q(x)$の解法を述べよ
一階非同次線形。両辺に$\exp \left\{ \int P(x) dx \right\}$をかけることで部分積分の形に帰着させる。
$y' + P(x)y = Q(x)y^n$の解法を述べよ
ベルヌーイの微分方程式。両辺を$y^n$で割って$u = y^{1-n}$とおくことで1階線形形に帰着。
$P(x, y)dx + Q(x, y)dy = 0$の解法を述べよ
全微分方程式。$\frac{dP}{dy} = \frac{dQ}{dx}$を満たす場合は$P = \frac{dF}{dx}$,$Q = \frac{dF}{dy}$として解は$F(x, y) = C$となる。$\frac{dP}{dy} = \frac{dQ}{dx}$を満たさない場合は微分方程式の両辺に$\mu(x, y)$をかけて$\frac{dP\mu}{dy} = \frac{dQ\mu}{dx}$を満たすように$\mu$を調整する。後者の場合は$\mu$をうまく設定できるような問題がほとんど。
$y^{\prime \prime} + py' + qy = R(x)$の解法を述べよ
二階非同次線形。$y = y_c + Y$として求める。$y_c$は同次方程式の解き方を用いて求める。
- 異なる2つの実数が解のとき:$Y = C_1e^{\lambda_1 x} + C_2e^{\lambda_2 x}$
- 重解のとき:$Y = (C_1 + C_2 x) e^{\lambda_1 x}$
- 虚数解をもつとき:$Y = e^{\alpha x} (C_1 \cos \beta x + C_2 \sin \beta x)$
$Y$は右辺の$R(x)$の形を見て形を予想したうえで代入する。もしその予想系の項が$y_c$と被っていたら,重複度に応じて$Y$に$x$もしくは$x^2$をかける必要がある。具体的には,1重解であった場合は$x$,2重解であった場合は$x^2$を掛ける。
$x^2y^{\prime \prime} + axy' + by = R(x)$の解法を述べよ
オイラーの微分方程式。$x=e^{t}$とおくことで,二階線形に帰着。
$p = y^{\prime}$のとき$y=px+f(p)$の解法を述べよ
クレローの微分方程式。両辺を$x$で微分する。一般解である直線群と特異解である包絡線が得られる。
$p = y^{\prime}$のとき$y=f(p)x+g(p)$の解法を述べよ
ラグランジュの微分方程式。両辺を$x$で微分する。最終的には媒介変数が残ったままになるが気にしなくてOK。
$y' + P(x)y^2 + Q(x)y + R(x) = 0$の解法を述べよ
リッカチの微分方程式。$R(x)$の形に着目することで特殊解$Y$を見つける。同次方程式の一般解を$u$として$y = u + z$を元の式に代入すると,ベルヌーイの微分方程式に帰着。
確率統計
基本操作
チェビシェフの不等式を述べよ
P(|X - \mu|\geq k\sigma) \leq \frac{1}{k^2}
\end{align}
チェビシェフの不等式を利用する問題の例を1つ挙げよ
サイコロを900回振ったとき,6の目が出る回数は80%以上の確率で何回になると考えられるか。
この問題では$X\sim B(900, \frac{1}{6})$と考えられるから$\mu = 150$,$\sigma = \sqrt{900\cdot \frac{1}{6}\cdot \frac{5}{6}}=5\sqrt{5}$
P(|X - 150| \geq 5\sqrt{5}k) \leq \frac{1}{k^2} \\
P(|X - 150| < 5\sqrt{5}k) > 1 - \frac{1}{k^2}
\end{align}
この右辺が0.8となる$k$を求めて代入すると答えが求められる。
区間推定
区間推定の大分類と小分類を述べよ
- 母集団が正規分布
- 母集団がベルヌーイ分布
母集団が正規分布の平均を区間推定する述べよ
(母分散が既知の場合)
z &= \frac{\overline{x} - \mu}{\sqrt{\sigma^2 / n}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
(母分散が未知の場合)
z &= \frac{\overline{x} - \mu}{\sqrt{s^2 / n}}\sim t^{(n-1)}
\end{align}
ただし,$s^2$は不偏分散。
母集団が正規分布の平均の差を区間推定する解法を述べよ
(母分散が既知の場合)
z &= \frac{\overline{x} - \overline{y}}{\sqrt{\sigma_x^2 / m + \sigma_y^2 / n}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
(母分散が未知の場合)
z &= \frac{\overline{x} - \overline{y}}{\sqrt{(1/m + 1/n)s^2}}\sim t^{(m+n-2)}
\end{align}
ただし,$s^2$はプールした不偏分散。
s^2 &= \frac{1}{m+n-2}\left( \sum_{i=1}^m (x_i - \overline{x})^2 + \sum_{i=1}^n (y_i - \overline{y})^2 \right)
\end{align}
母集団が正規分布の分散を区間推定する解法を述べよ
(母平均が既知の場合)
v &= \sum_{i=1}^n \left( \frac{x_i - \mu}{\sigma} \right)^2 \sim \chi^2(n)
\end{align}
(母平均が未知の場合)
v &= \sum_{i=1}^n \left( \frac{x_i - \overline{x}}{\sigma} \right)^2 \sim \chi^2(n-1)
\end{align}
母集団がベルヌーイ分布の母比率平均を区間推定する解法を述べよ
z &= \frac{\hat{p} - p_0}{\sqrt{p_0(1 - p_0) / n}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
ただし,$\hat{p}$は標本比率,$p_0$は母比率を表す。
母集団がベルヌーイ分布の母比率平均の差を区間推定する解法を述べよ
z &= \frac{\hat{p}_1 - \hat{p}_2 - (p_1 - p_2)}{\sqrt{p_1(1 - p_1) / n_1 - p_2(1 - p_2) / n_2}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
ただし,$\hat{p}$は標本比率,$p_1$,$p_2$は母比率を表す。
母相関係数の信頼区間を区間推定する解法を述べよ
z &= \frac{1}{2} \log \frac{1 + r}{1-r} \sim \mathcal{N}\left( \frac{1}{2}\log \frac{1 + \rho}{1-\rho}, \frac{1}{n-3} \right)
\end{align}
ただし,$r$は標本相関係数,$\rho$は母相関係数を表す。
検定
検定の大分類と小分類を述べよ
- 母集団が正規分布
- 母集団がベルヌーイ分布
- 母集団がポアソン分布
- 母集団が$\chi^2$分布
母集団が分布のポアソン分布の平均を検定する解法を述べよ
z &= \frac{x - n\lambda}{n\lambda} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
母集団が$\chi^2$分布の適合度を検定する解法を述べよ
v &= \sum_{i=1}^n \frac{\left(x_i - np_i\right)^2}{np_i} \sim \chi^2(n-1)
\end{align}
分子は理論値とのズレ,分母は理論値と覚える。
母集団が$\chi^2$分布の独立性を検定する解法を述べよ
v &= \sum_{i=1}^r\sum_{j=1}^c \frac{\left(x_{ij} - n_{ij}p_{ij}\right)^2}{n_{ij}p_{ij}} \sim \chi^2\left((r-1)\cdot(c-1)\right)
\end{align}
こちらも分子は理論値とのズレ,分母は理論値と覚える。
母集団が正規分布の等分散性を区間推定する解法を述べよ
(母平均が未知の場合)
u &= \frac{s_x^2}{s_y^2} \sim F(m-1, n-1)
\end{align}
無相関を検定する解法を述べよ
t &= \frac{|r|\sqrt{n-2}}{\sqrt{1-r^2}} \sim t^{(n-1)}
\end{align}
ただし,$r$は標本相関係数を表す。
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