本稿では,代表的な微分方程式の解法をお伝えします。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
オイラーの微分方程式
二階非同次線形微分方程式のうち,以下の形をしたものをオイラーの微分方程式と呼びます。
\begin{align}
x^2 \frac{d^2 y}{dx^2} + ax\frac{dy}{dx} + by &= R(x)
\end{align}
x^2 \frac{d^2 y}{dx^2} + ax\frac{dy}{dx} + by &= R(x)
\end{align}
解法
- $x > 0$ のときは$x = e^{t}$
- $x < 0$ のときは$x = -e^{t}$
と置くことで,定数係数の二階非同次微分方程式に帰着させることができます。
例題
次の例題を解きましょう。ただし$x>0$とし,初期条件は与えないため定数項はそのまま残してよいです。
\begin{align}
x^2 \frac{d^2 y}{dx^2} - 3x\frac{dy}{dx}+ 4y &= x^2\log x
\end{align}
x^2 \frac{d^2 y}{dx^2} - 3x\frac{dy}{dx}+ 4y &= x^2\log x
\end{align}
$x>0$ですので,$x = e^t$と置けばよいです。このとき,一階微分は
\begin{align}
\frac{dy}{dx}
&= \frac{dy}{dt}\frac{dt}{dx}
= \frac{dy}{dt}\frac{1}{x}
= \frac{dy}{dt}e^{-t}
\end{align}
\frac{dy}{dx}
&= \frac{dy}{dt}\frac{dt}{dx}
= \frac{dy}{dt}\frac{1}{x}
= \frac{dy}{dt}e^{-t}
\end{align}
と表され,二階微分は
\begin{align}
\frac{d^2y}{dx^2}
&= \frac{d}{dx}\left( \frac{dy}{dx} \right)
= \frac{d}{dx}\left( \frac{dy}{dt}e^{-t} \right)
= \frac{d}{dt}\left( \frac{dy}{dt}e^{-t} \right) \frac{dt}{dx}\\[0.7em]
&= \left( \frac{d^2y}{dt^2}e^{-t} - \frac{dy}{dt}e^{-t} \right)e^{-t}
= \left( \frac{d^2y}{dt^2} - \frac{dy}{dt} \right)e^{-2t}
\end{align}
\frac{d^2y}{dx^2}
&= \frac{d}{dx}\left( \frac{dy}{dx} \right)
= \frac{d}{dx}\left( \frac{dy}{dt}e^{-t} \right)
= \frac{d}{dt}\left( \frac{dy}{dt}e^{-t} \right) \frac{dt}{dx}\\[0.7em]
&= \left( \frac{d^2y}{dt^2}e^{-t} - \frac{dy}{dt}e^{-t} \right)e^{-t}
= \left( \frac{d^2y}{dt^2} - \frac{dy}{dt} \right)e^{-2t}
\end{align}
と表されます。これらを元の微分方程式に代入すると,
\begin{align}
e^{2t}\cdot (y^{\prime\prime}- y^{\prime})e^{-2t} -3e^{t}\cdot y^{\prime}e^{-t} + 4y &= t e^{2t}\\[0.7em]
y^{\prime\prime}- 4y^{\prime} + 4y &= t e^{2t} \label{整理後のオイラー方程式}
\end{align}
e^{2t}\cdot (y^{\prime\prime}- y^{\prime})e^{-2t} -3e^{t}\cdot y^{\prime}e^{-t} + 4y &= t e^{2t}\\[0.7em]
y^{\prime\prime}- 4y^{\prime} + 4y &= t e^{2t} \label{整理後のオイラー方程式}
\end{align}
となり,非同次線形微分方程式に帰着しました。
元々係数にかかっていた$x^{2}{=}e^{2t}$や$x{=}e^{t}$が変数変換によって消える部分がポイントです。
同次方程式の特性方程式の解は$\lambda{=}2$の重解で,右辺の$e^{2t}$の係数とバッティングしているパターンですので,特殊解$Y$の予想に$t^{2}$を掛けます。よって,特殊解は以下のような形になります。
\begin{align}
Y &= t^{2}\cdot (At + B)e^{2t}
\end{align}
Y &= t^{2}\cdot (At + B)e^{2t}
\end{align}
特殊解の一階微分と二階微分を計算して特殊解の係数を求めます。
\begin{align}
Y^{\prime} &= \left\{ 2At^3 + (3A + 2B)t^2 + 2Bt\right\}e^{2t} \\[0.7em]
Y^{\prime\prime} &= \left\{ 4At^3 + (12A + 4B)t^2 + (6A + 8B)t\right\}e^{2t}
\end{align}
Y^{\prime} &= \left\{ 2At^3 + (3A + 2B)t^2 + 2Bt\right\}e^{2t} \\[0.7em]
Y^{\prime\prime} &= \left\{ 4At^3 + (12A + 4B)t^2 + (6A + 8B)t\right\}e^{2t}
\end{align}
式(\ref{整理後のオイラー方程式})に代入して整理します。
\begin{align}
(6At + 2B)e^{2t} &= te^{2t}
\end{align}
(6At + 2B)e^{2t} &= te^{2t}
\end{align}
したがって,特殊解の定数係数は以下のようになります。
\begin{align}
A &= \frac{1}{6},\quad
B = 0
\end{align}
A &= \frac{1}{6},\quad
B = 0
\end{align}
よって,求める一般解は
\begin{align}
y &= (C_1 + C_2 \log x)x^2 + \frac{1}{6}x^2 (\log x)^3
\end{align}
y &= (C_1 + C_2 \log x)x^2 + \frac{1}{6}x^2 (\log x)^3
\end{align}
となります。$t$を$x$に戻すのを忘れないようにしましょう。
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