【初学者向け】二階非同次線形の微分方程式

zuka

こんにちは。
zuka(@beginaid)です。

本記事では,数学検定1級で頻出の微分方程式についてまとめていきます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

二階非同次線形微分方程式

以下の形をした微分方程式を二階非同次線形微分方程式と呼びます。

\begin{align}
\frac{d^2 y}{dx^2} + P(x)\frac{dy}{dx} + Q(x)y &= R(x)
\end{align}

解法

$P(x)$と$Q(x)$が定数でない場合は,オイラーの微分方程式とそれ以外に分類され,後者は定数変化法によって解を求めることができます。しかし,定数変化法は数学検定では滅多に出題されないため,今回は$P(x)$と$Q(x)$が定数である場合の非同次線形微分方程式とオイラーの微分方程式を扱うことにします。

本稿では,$P(x)$と$Q(x)$が定数である場合の非同次線形微分方程式を扱います。

\begin{align}
\frac{d^2 y}{dx^2} + p \frac{dy}{dx} + q y &= R(x) \label{定数係数非同次微分方程式}
\end{align}

ここで,$R(x)=0$とおいた方程式は同次方程式と呼ばれています。逆に,元の方程式のように$R(x)\neq 0$であるものを非同次方程式と呼びます。さらに,非同次方程式の一般解を$y$,非同次方程式の特殊解を$Y$,同次方程式の一般解を$y_c$と置くと,以下のような関係があります。

\begin{align}
y &= y_c + Y \label{非同次方程式の解き方}
\end{align}

つまり,非同次方程式の一般解を求めたければ,特殊解$Y$に同次方程式の一般解$y_c$を加えてあえれば良いのです。この関係はおまじないでも何でもないので,怖がる必要はありません。まず,式($\ref{定数係数非同次微分方程式}$)を満たす特殊解$Y$が見つかったと仮定します。これは,先ほどお伝えした「非同次方程式の解き方」で求めることができるので安心してください。

\begin{align}
\frac{d^2 Y}{dx^2} + p \frac{dY}{dx} + q Y &= R(x)
\end{align}

これを非同次方程式($\ref{定数係数非同次微分方程式}$)から引くと,以下のような方程式が得られます。

\begin{align}
\frac{d^2}{dx^2}(y-Y) + p \frac{d}{dx}(y - Y) + q(y - Y) &= 0
\end{align}

$y - Y = z$と置きなおすと,上の式は式($\ref{定数係数非同次微分方程式}$)の同次方程式になっていることが分かります。

\begin{align}
\frac{d^2 z}{dx^2} + p \frac{dz}{dx} + qz &= 0
\end{align}

この同次方程式の解を$y_c$とおけば,以下の関係が成り立つことが分かります。

\begin{align}
y - Y &= y_c \\[0.7em]
y &= y_c + Y
\end{align}

先ほどの関係式が得られましたね。

ちなみに,$y_c$は同次方程式の一般解は非同次方程式の余関数(cofunction)とも呼ばれているため,添え字に$c$が用いられています。

実際にどのように$y_c$と$Y$を求めるのかという部分についてお伝えしていきます。$y_c$は演習問題の冒頭で説明した同次方程式の解き方で求めることができます。$Y$に関しては,完全に「当てずっぽう」で定めてしまうのです。ただし,完全な当てずっぽうではなく,$R(x)$の形を吟味して「この形は最低限必要だろう」というセーフティーネットを張って$Y$を決め打ちしてしまうのです。ただし,$y_c$の形が$R(x)$とバッティングする場合には,特性方程式の重複度に応じて$x$あるいは$x^2$を$Y$に掛けなければならず,これは後半の問題で出てきます。

この「当てずっぽう」の部分が初学者にとってハードルとなり得えます。微分方程式は意外と勘に頼る場面も少なくありません。答えを見つけるために多少天下り的に関数形を定めていくというのが定石になりますので,気楽に読み進めてみらえればと思います。

例題

以下では,二つのパターンの例題を通して変数分離形微分方程式の解法を確認します。

パターン1

以下の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため適切な定数項を設定します。

\begin{align}
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= x^{2} \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= \sin x \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= e^{x} \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= e^{x} x^2 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= e^{x} \sin x
\end{align}

パターン1は,同次方程式の一般解が$R(x)$とバッティングしていないケースになります。この場合は,同次方程式の一般解をそのまま利用することができます。それぞれの同次方程式は全て同じで,以下のようになります。

\begin{align}
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= 0
\end{align}

特性方程式の解は$\lambda = -1, -4$ですので,同次方程式の一般解は以下のようになります。

\begin{align}
y_c &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x}
\end{align}

続いて,特殊解$Y$を求めていきたいと思います。 $R(x)$の形を吟味して「この形は最低限必要だろう」というセーフティーネットを張って$Y$を決め打ちしてしまうのでした。

\begin{align}
Y &= A x^2 + B x + C \\[0.7em]
Y &= A\cos x + B\sin x \\[0.7em]
Y &= Ae^{x} \\[0.7em]
Y &= e^{x} \left( Ax^2 + Bx + C \right) \\[0.7em]
Y &= e^{x} \left( A\cos x + B\sin x \right)
\end{align}

したがって,式($\ref{非同次方程式の解き方}$)に従えば,求める解は以下のようになります。

\begin{align}
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + A x^2 + B x + C \\[0.7em]
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + A\cos x + B\sin x \\[0.7em]
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + Ae^{x} \\[0.7em]
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + e^{x} \left( Ax^2 + Bx + C \right) \\[0.7em]
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + e^{x} \left( A\cos x + B\sin x \right)
\end{align}

初期条件が与えられていれば,定数項を初期条件から求めるために上記一般解から$y^{\prime}$をそれぞれ計算するのですが,今回は定数項を残してよいとのことでしたので,ここで終了です。

パターン2

以下の例題を解きましょう。ただし,初期条件は与えないため適切な定数項を設定します。

\begin{align}
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} &= x^2 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} &= x^2 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= e^{-x} \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 4y &= e^{-2x} \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= e^{-x} x^2 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 4y &= e^{-2x} x^2 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 4y &= \sin -2x \\[0.7em]
y^{\prime\prime} - 2y^{\prime} + 4y &= e^{-x} \sin \sqrt{3}x \\[0.7em]
\end{align}

パターン2は,同次方程式の一般解が$R(x)$とバッティングしているケースになります。それぞれの同次方程式は以下の5種類のいずれかになります。

\begin{align}
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} &= 0 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} &= 0 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 5y^{\prime} + 4y &= 0 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} + 4y &= 0 \\[0.7em]
y^{\prime\prime} - 2y^{\prime} + 4y &= 0
\end{align}

それぞれの特性方程式の解は以下のようになります。

\begin{align}
\lambda &= 0, -5 \\[0.7em]
\lambda &= 0 \\[0.7em]
\lambda &= -1, -4 \\[0.7em]
\lambda &= -2 \\[0.7em]
\lambda &= -1 \pm \sqrt{3}
\end{align}

したがって,同次方程式の一般解はそれぞれ以下のようになります。

\begin{align}
y_c &= C_1 + C_2 e^{-5x} \\[0.7em]
y_c &= C_1 + C_2 x \\[0.7em]
y_c &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} \\[0.7em]
y_c &= (C_1 + C_2x) e^{-2x} \\[0.7em]
y_c &= e^{-x}\left( C_1\cos \sqrt{3}x + C_2 \sin \sqrt{3}x \right)
\end{align}

ここまでは先ほどと全く同様の手続きなのですが,ここから変わってきます。非同次方程式の特殊解$Y$を求めるためには,$R(x)$の形を吟味して「この形は最低限必要だろう」というセーフティーネットを張って$Y$を決め打ちしてしまうのでした。このセーフティーネットの張り方に少し工夫が必要になります。

前回と同じように$Y$を定めると,それぞれ以下のようになります。

\begin{align}
Y &= Ax^2 + Bx + C \\[0.7em]
Y &= Ax^2 + Bx + C \\[0.7em]
Y &= Ae^{-x} \\[0.7em]
Y &= Ae^{-2x} \\[0.7em]
Y &= e^{-x}\left( Ax^2 + Bx + C \right) \\[0.7em]
Y &= e^{-2x}\left( Ax^2 + Bx + C \right) \\[0.7em]
Y &= A\sin 2x + B\cos 2x \\[0.7em]
Y &= e^{-x}\left( A\sin \sqrt{3}x + B\cos \sqrt{3}x \right)
\end{align}

これで一件落着かと思いきや,そうではないのです。$y_c$と$Y$に同じ項が被ってしまっているために,解を上手く求めることができないのです。特殊解の予想$Y$を同次方程式の一般解$y_c$と被らせないために,特性方程式の重複度に応じて$x$もしくは$x^2$を掛ける必要があるのです。このテクニックについては,一旦は「こうすれば上手くいくから」と理解しておけばOKです。天下り的に捉えてしまったほうが楽です。

さて,あとは特殊解の定数係数を求めるだけです。問題文では「適切な定数項を設定しなさい」とありますが,この定数項は同次方程式の一般解の定数であって,非同次方程式の特殊解の係数ではありません。ここを勘違いしてしまう人が非常に多いです。初期条件が与えられていなくても,特殊解の係数を求めることは可能です。

しかし,本記事では紙面の都合上,特殊解の係数を求める作業は割愛します。その代わりに,あとで説明するオイラーの微分方程式では,非同次線形微分方程式に帰着させた後に特殊解の係数を求めていますので,そちらをご参照ください。

実際に重複度に応じて特殊解に$x$もしくは$x^2$を掛けたものを$Y$として採用すると,結局非同次方程式の一般解$Y$は以下のように求められます。

\begin{align}
Y &= C_1 + C_2 e^{-5x} + x\cdot (Ax^2 + Bx + C) \\[0.7em]
Y &= C_1 + C_2 x + x^2\cdot (Ax^2 + Bx + C) \\[0.7em]
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + x\cdot Ae^{-x} \\[0.7em]
Y &= (C_1 + C_2x) e^{-2x} + x^2\cdot Ae^{-2x} \\[0.7em]
Y &= C_1 e^{-x} + C_2 e^{-4x} + x\cdot e^{-x}\left( Ax^2 + Bx + C \right) \\[0.7em]
Y &= (C_1 + C_2x) e^{-2x} + x^2\cdot e^{-2x}\left( Ax^2 + Bx + C \right) \\[0.7em]
Y &= (C_1 + C_2x) e^{-2x} + x\cdot \left( A\sin 2x + B\cos 2x \right) \\[0.7em]
Y &= e^{-x}\left( C_1\cos \sqrt{3}x + C_2 \sin \sqrt{3}x \right) + x\cdot e^{-x}\left( A\sin \sqrt{3}x + B\cos \sqrt{3}x \right)
\end{align}

初期条件が与えられていれば,同次方程式の一般解の定数項$C_1$,$C_2$を求めることができるのですが,今回は初期条件が与えられていないためここで終了です。

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