本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
整数問題
合同式$x^2 \equiv 11\pmod {5^3}$を解く方針を説明せよ
$\bmod 5$から考えていく。このとき,$x\equiv 11 \equiv 1 \pmod 5$だからといって$11$を崩してはいけない。なぜなら,「$a$が法$p$($2$以外の素数)に対して平方剰余であるとき,任意の$p$の累乗$p^e\;(e \leq 1)$に対しても$a$は平方剰余になる」という定理を利用するため。
pell方程式について述べよ
$x^2-ay^2=1$を指す。一般にpell方程式は無限個の自然数解をもつが,最小の自然数解$(x_1, y_1)$に対して$x_n + y_n \sqrt{a}$もpell方程式の解になることを利用することで,漸化式を立てて逐次的に解を求めることができる。
オイラーの定理を述べよ
$m$が正の整数で$a$を$m$と互いに素な正の整数としたとき,
a^{\varphi(m)} \equiv 1\bmod m
\end{align}
オイラー関数の計算方法について述べよ
$m$の素因数分解が
m &= \prod_{k=1}^{d} p_k ^{e_k}
\end{align}
と与えられているならば,
\varphi(m) &= m\prod_{k=1}^{d} \left( 1 - \frac{1}{p_k} \right)
\end{align}
と計算できる。
オイラーの関数の代表的な性質を2つ挙げよ
- 素数$p$に対して$\varphi(p^{k}) = p^k - p^{k-1}$
- 互いに素な自然数$m,n$に対して$\varphi(nm) = \varphi(n)\varphi(m)$
オイラーの定理を利用できる例題を考えよ
例えば$2022^{22}$を$5^2$で割った余りを考える問題。オイラーの定理より
2022^{\varphi(25)} &\equiv 1 \bmod 25
\end{align}
となり,
\varphi(25) &= 25\cdot \left( 1 - \frac{1}{5} \right) \\[0.7em]
&= 20
\end{align}
であることから,$25$を法として
2022^{22} &\equiv 2022^{20}\cdot 2022^{2} \\[0.7em]
&\equiv 2022^{2} \\[0.7em]
&\equiv (2000 + 22)^2 \\[0.7em]
&\equiv 22^2 \\[0.7em]
&\equiv 9
\end{align}
と求めることができる。
種々の計算
$ax^{3}+bx^{2}+cx+d$の因数の候補を説明せよ
x &= \pm\frac{d\text{の約数}}{a\text{の約数}}
\end{align}
$u^{3}=\cos(\pi/3)+i\sin(\pi/3)$を満たす$u$を求めよ
ド・モアブルの定理より
u &= \cos\left(\frac{\pi}{9}\right)+i\sin\left(\frac{\pi}{9}\right)
\end{align}
となる。感覚的に$3$を掛けそうになってしまうため注意する。
$\sqrt[n]{a+b\sqrt{x}}$を簡単にする方法を説明せよ
$c,d$を有理数として
\sqrt[n]{a+b\sqrt{x}} &= c + d\sqrt{x}
\end{align}
とおいて両辺を$n$乗する。例えば$\sqrt[3]{10+6\sqrt{3}}$に対しては
\sqrt[3]{10+6\sqrt{3}} &= a + b\sqrt{3}
\end{align}
とおいて両辺を$3$乗する。
$a^{5}+b^{5}$を因数分解せよ
(a+b)(a^{4}-a^{3}b+a^{2}b^{2}-ab^{3}+b^{4})
\end{align}
対称式で表したい場合は,さらに
(a+b)\left\{(a^{2}+b^{2})^{2}-a^{2}b^{2}-ab(a^{2}+b^{2})\right\}
\end{align}
と表せる。
$a^{5}-b^{5}$を因数分解せよ
(a-b)(a^{4}+a^{3}b+a^{2}b^{2}+ab^{3}+b^{4})
\end{align}
対称式で表したい場合は,さらに
(a-b)\left\{(a^{2}+b^{2})^{2}-a^{2}b^{2}+ab(a^{2}+b^{2})\right\}
\end{align}
と表せる。
$x^{n}+y^{n}$を基本対称式で表せ
x^{n}+y^{n}
&= (x + y)(x^{n-1}+y^{n-1}) - xy(x^{n-2} + y^{n-2})
\end{align}
$x^{2}+y^{2}+z^{2}$を基本対称式で表せ
x^{2}+y^{2}+z^{2}
&= (x + y + z)^{2} - 2(xy + yz + zx)
\end{align}
$x^{3}+y^{3}+z^{3}$を基本対称式で表せ
x^{3}+y^{3}+z^{3}
&= (x + y + z)^{3} - 3(x + y + z)(xy + yz + zx) + 3xyz\\[0.7em]
&= (x + y + z)(x^{2} + y^{2} + z^{2} - xy - yz - zx) + 3xyz
\end{align}
$a^{3}+b^{3}+1-3ab$を因数分解せよ
x^{3}+y^{3}+z^{3}
&= (x + y + z)(x^{2} + y^{2} + z^{2} - xy - yz - zx) + 3xyz
\end{align}
において$x=a,y=b,c=1$を代入すると,
a^{3}+b^{3}+1-3ab
&= (a + b + c)(a^{2} + b^{2} + 1 - ab - b - c)
\end{align}
$a_{0}x^{3}+a_{1}x^{2}+a_{2}x+a_{3}=0~(a_{0}\neq 0)$の解と係数の関係を述べよ
\alpha + \beta + \gamma = -\frac{a_{1}}{a_{0}},\quad
\alpha\beta + \beta\gamma + \gamma\alpha = \frac{a_{2}}{a_{0}},\quad
\alpha\beta\gamma = -\frac{a_{3}}{a_{0}}
\end{align}
$f(x)=x^{3}-(y^{2}+yz+z^{2})x+yz(y+z)$を因数分解せよ
因数定理より$f(x){=}0$となる$x$の候補は$yz(y{+}z)$の約数となるため,$y,z,y{+}z$が因数の候補である。このうち$f(z){=}0$となることに注意すると,組立除法等を用いることにより
x^{3}-(y^{2}+yz+z^{2})x+yz(y+z)
&= (x-z)(x^{2}+zx-y(y+z))
\end{align}
が得られる。同様に$g(x)=x^{2}+zx-y(y+z)$は$g(y){=}0$となることに注意すると,
(x-z)(x^{2}+zx-y(y+z))
&= (x-z)(x-y)(x+y+z)
\end{align}
が得られる。
$f(x)=x^{3}+x^{2}+x+1$で$f(x^{10})$を$f(x)$で割るときの余りを求めよ
因数定理より
f(x) &= (x+1)(x^{2}+1)
\end{align}
が得られる。$f(x^{10})$を$f(x)$で割るときの商を$g(x)$,余りを$h(x)$とおくと,
f(x^{10}) &= (x+1)(x^{2}+1)g(x)+h(x)
\end{align}
となる。これを$(x^{2}{+}1)g(x)$を$x{+}1$で割るときの余りが$h(x)$という見方をすると,余りの次数は商の次数よりも小さくなるため$g(x)$の次数は$0$となり,$h(x)$は定数$h$となる。両辺に$x{=}{-}1$を代入すると,
f((-1)^{10}) &= f(1) = 1^{3}+1^{2} + 1 + 1 = 4 = h
\end{align}
となるため,求める答えは$h=4$である。
$x^{4}-13x^{2}+4$を因数分解せよ
定数項に関して平方完成すると和と差の積で表されるタイプの因数分解。
x^{4}-13x^{2}+4
= (x^{2}-2)^{2}-9x^{2}
&= (x^{2}+3x-2)(x^{2}-3x-2)
\end{align}
特性方程式が異なる解をもつ三項間漸化式の解き方を説明せよ
特性方程式の解を$\lambda_{1},\lambda_{2}$とおくと,
a_{n} &= C_{1}\lambda_{1}^{n}+C_{2}\lambda_{2}^{n}
\end{align}
と表される。$C_{1}$と$C_{2}$は初期値から求める。
特性方程式が重解をもつ三項間漸化式の解き方を説明せよ
特性方程式の重解を$\lambda$とおくと,
a_{n} &= C_{1}\lambda^{n}+C_{2}n\lambda^{n}
\end{align}
と表される。$C_{1}$と$C_{2}$は初期値から求める。
線形代数
ある行列を対称行列と交代行列で表すときの方針を述べよ
対称行列と交代行列をそれぞれ文字で置いて両辺を転置する。
行列の$n$乗で二項定理を利用するときの注意点を述べよ
行列が可換($AB=BA$)であることを調べる。
対称性の見える行列の行列式を求める際に思い浮かべる方針を述べよ
$|A^{T}|{=}|A|$を利用するため,とりあえず置換した行列との積を計算してみる。例えば
M &=
\begin{pmatrix}
a & -b & -c & -d\\
b & a & -d & c\\
c & d & a & -b\\
d & -c & b & a
\end{pmatrix}
\end{align}
に対し,転置を左から掛けると
&M^{T}M =
\begin{pmatrix}
a & b & c & d\\
-b & a & d & -c\\
-c & -d & a & b\\
-d & c & -b & a
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a & -b & -c & -d\\
b & a & -d & c\\
c & d & a & -b\\
d & -c & b & a
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&=
\begin{pmatrix}
a^{2}{+b}^{2}{+}c^{2}{+}d^{2} & 0 & 0 & 0\\
0 & a^{2}{+}b^{2}{+}c^{2}{+}d^{2} & 0 & 0\\
0 & 0 & a^{2}{+}b^{2}{+}c^{2}{+}d^{2} & 0\\
0 & 0 & 0 & a^{2}{+}b^{2}{+}c^{2}{+}d^{2}\\
\end{pmatrix}\\[0.7em]
&= (a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2})E
\end{align}
となるため,$|M|{=}\sqrt{|M^{T}M|}{=}\sqrt{a^{2}{+}b^{2}{+}c^{2}{+}d^{2}}$と求められる。
「$ad-bc$を求めよ」という問題のテクニックを述べよ
行列式で登場する項であるため,両辺の行列式をとる操作が有効な場合がある。例えば,
A
\begin{pmatrix}
1 & 1\\
0 & m
\end{pmatrix}
&=
\begin{pmatrix}
1+k & 1\\
km & m
\end{pmatrix}
\end{align}
という等式において,両辺の行列式を取ると
(ad-bc)m &= (1+k)m-km = m
\end{align}
となるため,$ad-bc=1$が得られる。
任意の内積空間においてノルムを求める方法を述べよ
自分自身との内積を計算すればよい。例えば内積として
f\cdot g &= \int_{-1}^{1}f(x)g(x)dx
\end{align}
が定義されていた場合は,$|f|^{2}=f\cdot f$であることを利用する。
複素数の回転について述べよ
複素数$z$を$\varphi$回転するためには$e^{i\varphi}$を掛ければよい。なぜなら,$z=e^{\theta}$とおけば,指数部分が足し算になり位相が$\theta + \varphi$になるからである。別の言い方をすれば,$\cos \varphi + i\sin \varphi$を掛ければ$\varphi$回転を表すことになる。
回帰直線の方程式を述べよ
Y - E[Y] &= \rho(X,Y)\cdot\frac{\sigma_{Y}}{\sigma_{X}}\left(X-E[X]\right)
\end{align}
相関係数が傾きとなり,標準偏差でスケールすると覚えてしまうとよい。導出は少し面倒。
微分積分
$\lim_{n\rarr\infty}\sin(3n)/n$を求めよ
$-1\leq\sin(3n)\leq 1$に注意すると,はさみうちの原理より$0$となる。$\sin\theta/\theta$が$1$となるのは$\theta\rarr 0$のとき。
ネイピア数$e$の定義を述べよ
e &= \lim_{h\rarr 0}(1+h)^{1/h} = \lim_{x\rarr \infty}(1+1/x)^{x}
\end{align}
括弧の中は足し算であることに十分注意する。
スターリングの公式を述べよ
n! &\sim \sqrt{2\pi n}\left(\frac{n}{e}\right)^{n}
\end{align}
例えば,
\lim_{n\rarr\infty}\frac{n}{(n!)^{1/n}}
&{=} \frac{n}{(2\pi n)^{1/(2n)}\cdot (n/e)}
{=} \frac{1}{\left\{(2\pi n)^{1/(2\pi n)}\right\}^{\pi}\cdot e^{-1}}
{=} \frac{1}{1^{\pi}\cdot e^{-1}} = e
\end{align}
のように用いる。ただし,$x^{1/x}\rarr 1$を利用した。$n/(n!)^{1/n}$の極限はスターリングの公式を使用しないと非常に面倒。
$(a^{x})^{\prime}$を述べよ
(a^{x})^{\prime} &= a^{x}\log_{e}a~(a>0,a\neq 1)
\end{align}
$(\log_{a}x)^{\prime}$を述べよ
(\log_{a}x)^{\prime} &= \frac{1}{x\log_{e}a}~(a>0,a\neq 1)
\end{align}
双曲線関数の定義を述べよ
\sinh x {=} \frac{e^{x}-e^{-x}}{2},\quad
\cosh x {=} \frac{e^{x}+e^{-x}}{2},\quad
\tanh x {=} \frac{\sinh x}{\cosh x} {=} \frac{e^{x}-e^{-x}}{e^{x}+e^{-x}}
\end{align}
ダランベールの収束判定法を述べよ
数列${a_{n}}$に対し,
\lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_{n}}\right| &= r
\end{align}
が存在するとき,$0\leq r<1$ならば絶対収束し,$1<r$ならば発散する。
$r=1$の場合は収束・発散いずれの可能性もあります。$a_{n+1}/a_{n}$は等比数列の公比を表しています。
収束半径の定義を述べよ
べき級数$\sum_{n=0}^{\infty}a_{n}(z-a)^{n}$に対し,
r &= \lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n}}{a_{n+1}}\right|
\end{align}
が存在するとき,$r$は収束半径である。
ダランベールの収束判定法と収束半径の違いを説明せよ
$a_{n+1}/a_{n}$なのか$a_{n}/a_{n+1}$なのか覚えにくい。「$|z{-}a|{<}r$のときに収束する場合の$r$」が収束半径の定義だと捉え,ダランベールの収束判定法は等比級数の公比から自明として考えると分かりやすい。実際に,ダランベールの収束判定法より
\lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n+1}(z-a)^{n+1}}{a_{n}(z-a)^{n}}\right|
&= \lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_{n}}\right|\cdot\left|z-a\right|
\end{align}
が存在するとき,この結果が$1$未満ならば絶対収束する。$|z-a|<r$とした場合に
r &= \lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n}}{a_{n+1}}\right|
\end{align}
であれば
\lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_{n}}\right|\cdot\left|z-a\right|
< \frac{1}{r}\cdot r = 1
\end{align}
となるため絶対収束する。ゆえに,
r &= \lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n}}{a_{n+1}}\right|
\end{align}
が収束半径となる。「$n{+}1$が分母にくる三角形となる」と視覚的に覚えてしまうと楽。
項別微分の条件を述べよ
収束半径を$r$とおくと,$|x|<r$のもとで項別微分が可能である。なお,
\lim_{n\rarr\infty}\left|\frac{a_{n}}{a_{n+1}}\right| &= r
\end{align}
が存在するならば,$\sum_{n=0}^{n}a_{n}x^{n}$の収束半径は$r$となる。
$\sum_{n=1}^{\infty} 1/(n\cdot 2^n)$を求めよ
分母の$n$に注目する。こいつを排除したいので,$x^n$を微分することを考える。収束半径は$2$であることから項別微分が可能で,
f(x) &= \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n\cdot 2^{n}}x^{n}
\end{align}
とおくと,
f^{\prime}(x) &= \frac{1}{2}\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{x}{2}\right)^{n-1} = \frac{1}{2(1-x/2)} = \frac{1}{2-x}
\end{align}
となるため,積分すれば$f(x)$が求められる。
$x^{m}/m$の形をした無限級数では,とにかく微分を疑いましょう。ただし,項別微分の条件である収束半径を確認する必要があります。
三角関数と多項式関数が混合した極限の求め方について述べよ
三角関数をマクローリン展開して多項式近似する。
部分分数分解の分母の候補について述べよ
例えば$1/(x+a)^2$という項があれば$1/(x+a)$と$1/(x+a)^2$の両方が候補になる
$\int 1/\sqrt{a^{2}-x^{2}}dx$を述べよ
\sin^{-1}\frac{x}{a} + C
\end{align}
係数に$1/a$が付かない点に注意してください。
$\int 1/\sqrt{a^{2}+x^{2}}dx$を述べよ
\log|x+\sqrt{a^{2}+x^{2}}| + C
\end{align}
$\int 1/(a^{2}+x^{2})dx$を述べよ
\frac{1}{a}\tan^{-1}\frac{x}{a} + C
\end{align}
係数に$1/a$がつく点に注意してください。
三角関数の積分で手詰まりになった際に利用する変換公式を述べよ
\tan\frac{x}{2} &= t
\end{align}
とおくことにより,
\sin x = \frac{2t}{1+t^{2}},\quad
\cos x = \frac{1-t^{2}}{1+t^{2}},\quad
dx = \frac{2}{1+t^{2}}dt
\end{align}
より$t$の有理関数の積分に帰着させることができる。
$\int_{-2}^{3}1/\sqrt{|x^{4}-4|}dx$の求め方を説明せよ
積分区間に被積分関数の特異点を含むため,
\lim_{\substack{\beta\rarr 2-0\\ \alpha\rarr-2+0}}
\int_{\alpha}^{\beta}\frac{1}{\sqrt{|x^{4}-4|}}dx+
\lim_{\substack{\beta\rarr 3-0\\ \alpha\rarr 2+0}}
\int_{\alpha}^{\beta}\frac{1}{\sqrt{|x^{4}-4|}}dx
\end{align}
のように広義積分を計算すればよい。
微分方程式
微分方程式の大分類を述べよ
- 定数係数非同次微分方程式
- 完全微分方程式
- 非同次オイラー方程式
微分方程式の分類を小分類を述べよ
定数係数非同次微分方程式がさらに細かく分かれる。
- 変数分離形
- 同次形
- 一階線形
- ベルヌーイ形
- 完全微分方程式
- 二階同次線形
- 二階非同次線形
- オイラーの微分方程式
- クレローの微分方程式
- ラグランジュの微分方程式
- リッカチの微分方程式
$y^{\prime}=P(x)Q(y)$の解法を述べよ
変数分離形。$Q(y)$を左辺に移項して両辺を$x$で微分。
$y^{\prime}=f(ax + by + c)$の解法を述べよ
変数分離形。$z=ax+by+c$と置いて他の微分方程式の形に帰着させる。
$y^{\prime}=f(y/x)$の解法を述べよ
同次形。$u=y/x$と置いて他の微分方程式の形に帰着させる。
$y' + P(x)y = Q(x)$の解法を述べよ
一階非同次線形。両辺に$\exp \left\{ \int P(x) dx \right\}$をかけることで部分積分の形に帰着させる。
$y' + P(x)y = Q(x)y^n$の解法を述べよ
ベルヌーイの微分方程式。両辺を$y^n$で割って$u = y^{1-n}$とおくことで1階線形形に帰着。
$P(x, y)dx + Q(x, y)dy = 0$の解法を述べよ
全微分方程式。$\frac{dP}{dy} = \frac{dQ}{dx}$を満たす場合は$P = \frac{dF}{dx}$,$Q = \frac{dF}{dy}$として解は$F(x, y) = C$となる。$\frac{dP}{dy} = \frac{dQ}{dx}$を満たさない場合は微分方程式の両辺に$\mu(x, y)$をかけて$\frac{dP\mu}{dy} = \frac{dQ\mu}{dx}$を満たすように$\mu$を調整する。後者の場合は$\mu$をうまく設定できるような問題がほとんど。
$y^{\prime \prime} + py' + qy = R(x)$の解法を述べよ
二階非同次線形。$y = y_c + Y$として求める。$y_c$は同次方程式の解き方を用いて求める。
- 異なる2つの実数が解のとき:$Y = C_1e^{\lambda_1 x} + C_2e^{\lambda_2 x}$
- 重解のとき:$Y = (C_1 + C_2 x) e^{\lambda_1 x}$
- 虚数解をもつとき:$Y = e^{\alpha x} (C_1 \cos \beta x + C_2 \sin \beta x)$
$Y$は右辺の$R(x)$の形を見て形を予想したうえで代入する。もしその予想系の項が$y_c$と被っていたら,重複度に応じて$Y$に$x$もしくは$x^2$をかける必要がある。具体的には,1重解であった場合は$x$,2重解であった場合は$x^2$を掛ける。
$x^2y^{\prime \prime} + axy' + by = R(x)$の解法を述べよ
オイラーの微分方程式。$x=e^{t}$とおくことで,二階線形に帰着。
$p = y^{\prime}$のとき$y=px+f(p)$の解法を述べよ
クレローの微分方程式。両辺を$x$で微分する。一般解である直線群と特異解である包絡線が得られる。
$p = y^{\prime}$のとき$y=f(p)x+g(p)$の解法を述べよ
ラグランジュ(ダランベール)の微分方程式。両辺を$x$で微分する。最終的には媒介変数が残ったままになるが気にしなくてOK。
$y' + P(x)y^2 + Q(x)y + R(x) = 0$の解法を述べよ
リッカチの微分方程式。$R(x)$の形に着目することで特殊解$Y$を見つける。同次方程式の一般解を$u$として$y = u + z$を元の式に代入すると,ベルヌーイの微分方程式に帰着。
変数分離系における絶対値の外し方を説明せよ
変数分離系では$1/y$のような積分を扱い$\log|y|{=}x{+}C_{1}$となることが多い。このとき,絶対値は
y &= \pm e^{x+C_{1}} = Ce^{x}
\end{align}
のように$\pm e^{C_{1}}$とおいて外すことが多い。
確率統計
基本操作
チェビシェフの不等式を述べよ
P(|X - \mu|\geq k\sigma) \leq \frac{1}{k^2}
\end{align}
チェビシェフの不等式を利用する問題の例を1つ挙げよ
サイコロを900回振ったとき,6の目が出る回数は80%以上の確率で何回になると考えられるか。この問題では$X\sim B(900, 1/6)$と考えられるから,$\mu = 150$,$\sigma = \sqrt{900\cdot 1/6 \cdot 5/6} = 5\sqrt{5}$であり,
P(|X - 150| \geq 5\sqrt{5}k) \leq \frac{1}{k^2} \\
P(|X - 150| < 5\sqrt{5}k) > 1 - \frac{1}{k^2}
\end{align}
となります。この右辺が0.8となる$k$を求めて代入すると答えが求められる。
区間推定
区間推定の大分類と小分類を述べよ
- 母集団が正規分布
- 母集団がベルヌーイ分布
母集団が正規分布の平均を区間推定する解法を述べよ
- 母分散が既知の場合
-
\begin{align}
z &= \frac{\overline{x} - \mu}{\sqrt{\sigma^2 / n}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align} - 母分散が未知の場合
-
\begin{align}
z &= \frac{\overline{x} - \mu}{\sqrt{s^2 / n}}\sim t^{(n-1)}
\end{align}
ただし,$s^2$は不偏分散とする。
母集団が正規分布の平均の差を区間推定する解法を述べよ
- 母分散が既知の場合
-
\begin{align}
z &= \frac{\overline{x} - \overline{y}-(\mu_{x}-\mu_{y})}{\sqrt{\sigma_x^2 / m + \sigma_y^2 / n}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align} - 母分散が未知の場合
-
\begin{align}
z &= \frac{\overline{x} - \overline{y}-(\mu_{x}-\mu_{y})}{\sqrt{(1/m + 1/n)s^2}}\sim t^{(m+n-2)}
\end{align}
ただし,$s^2$はプールした不偏分散である。
s^2 &= \frac{1}{m+n-2}\left( \sum_{i=1}^m (x_i - \overline{x})^2 + \sum_{i=1}^n (y_i - \overline{y})^2 \right)
\end{align}
母集団が正規分布の分散を区間推定する解法を述べよ
- 母平均が既知の場合
-
\begin{align}
v &= \sum_{i=1}^n \left( \frac{x_i - \mu}{\sigma} \right)^2 \sim \chi^2(n)
\end{align} - 母平均が未知の場合
-
\begin{align}
v &= \sum_{i=1}^n \left( \frac{x_i - \overline{x}}{\sigma} \right)^2 \sim \chi^2(n-1)
\end{align}
母集団がベルヌーイ分布の母比率平均を区間推定する解法を述べよ
z &= \frac{\hat{p} - p_0}{\sqrt{p_0(1 - p_0) / n}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
ただし,$\hat{p}$は標本比率,$p_0$は母比率を表す。
母集団がベルヌーイ分布の母比率平均の差を区間推定する解法を述べよ
z &= \frac{\hat{p}_1 - \hat{p}_2 - (p_1 - p_2)}{\sqrt{p_1(1 - p_1) / n_1 - p_2(1 - p_2) / n_2}} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
ただし,$\hat{p}$は標本比率,$p_1$,$p_2$は母比率を表す。
母相関係数の信頼区間を区間推定する解法を述べよ
z &= \frac{1}{2} \log \frac{1 + r}{1-r} \sim \mathcal{N}\left( \frac{1}{2}\log \frac{1 + \rho}{1-\rho}, \frac{1}{n-3} \right)
\end{align}
ただし,$r$は標本相関係数,$\rho$は母相関係数を表す。
検定
検定の大分類と小分類を述べよ
- 母集団が正規分布
- 母集団がベルヌーイ分布
- 母集団がポアソン分布
- 母集団が$\chi^2$分布
母集団が分布のポアソン分布の平均を検定する解法を述べよ
z &= \frac{x - n\lambda}{n\lambda} \sim \mathcal{N}(0,1)
\end{align}
母集団が$\chi^2$分布の適合度を検定する解法を述べよ
v &= \sum_{i=1}^n \frac{\left(x_i - np_i\right)^2}{np_i} \sim \chi^2(n-1)
\end{align}
分子は理論値とのズレ,分母は理論値と覚える。
母集団が$\chi^2$分布の独立性を検定する解法を述べよ
v &= \sum_{i=1}^r\sum_{j=1}^c \frac{\left(x_{ij} - n_{ij}p_{ij}\right)^2}{n_{ij}p_{ij}} \sim \chi^2\left((r-1)\cdot(c-1)\right)
\end{align}
こちらも分子は理論値とのズレ,分母は理論値と覚える。
母集団が正規分布の等分散性を区間推定する解法を述べよ
- 母平均が未知の場合
-
\begin{align}
u &= \frac{s_x^2}{s_y^2} \sim F(m-1, n-1)
\end{align}
無相関を検定する解法を述べよ
t &= \frac{|r|\sqrt{n-2}}{\sqrt{1-r^2}} \sim t^{(n-1)}
\end{align}
ただし,$r$は標本相関係数を表す。
母相関係数を検定する解放を述べよ
z &= \frac{1}{2}\log\frac{1+r}{1-r},\quad
\xi = \frac{1}{2}\log\frac{1+\rho}{1-\rho_{0}}
\end{align}
とおいたときに,
\frac{z-\xi}{\sqrt{1/(n-3)}} &\sim \N(0,1)
\end{align}
$z,\xi$の定義は$z$変換表で与えられるため覚える必要はありません。
母相関係数の差を検定する解放を述べよ
z_{1} &= \frac{1}{2}\log\frac{1+r_{1}}{1-r_{1}},\quad
z_{2} = \frac{1}{2}\log\frac{1+r_{2}}{1-r_{2}}
\end{align}
とおいたときに,
\frac{z_{1}-z_{2}}{\sqrt{1/(n_{1}-3)+1/(n_{2}-3)}} &\sim \N(0,1)
\end{align}
$z_{1},z_{2}$の定義は$z$変換表で与えられるため覚える必要はありません。
引っかかりポイント
$\int_{0}^{\infty}\sin^{2}x/x^{2}dx$の求め方を説明せよ
数検1級の範囲では,以下のディリクレ積分が与えられる。
\int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}dx &= \frac{\pi}{2}
\end{align}
ここで,早とちりして
\int_{0}^{\infty}\left(\frac{\sin x}{x}\right)^{2}dx &= \left(\frac{\pi}{2}\right)^{2}
\end{align}
としないこと。両辺を$2$乗すると
\left(\int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}dx\right)^{2} &= \left(\frac{\pi}{2}\right)^{2}
\end{align}
となる。正しくは,部分積分を用いて
\int_{0}^{\infty}\left(-\frac{1}{x}\right)^{\prime}\sin^{2}x~dx
&= \left[-\frac{\sin x}{x}\cdot\sin x\right]_{0}^{\infty}+\int_{0}^{\infty}\frac{2\sin x\cos x}{x}dx\\[0.7em]
&= \int_{0}^{\infty}\frac{\sin 2x}{x}dx
\end{align}
となるが,ここでも早とちりして
\int_{0}^{\infty}\frac{\sin 2x}{x}dx
&= 2\int_{0}^{\infty}\frac{\sin 2x}{2x}dx = 2\cdot\frac{\pi}{2} = \pi
\end{align}
としないこと。$dx$がディリクレ積分と揃っていない。正しくは$t=2x$とおいて
\int_{0}^{\infty}\frac{\sin 2x}{x}dx
&= \int_{0}^{\infty}\frac{\sin t}{t/2}(dt/2)
= \int_{0}^{\infty}\frac{\sin t}{t}dt = \frac{\pi}{2}
\end{align}
となる。
$\sum_{k=1}^{\infty}k/(k^{4}+k^{2}+1)$のアプローチを説明せよ
部分分数分解を疑う。分母は$(k^{2}+1)^{2}-k^{2}=(k^{2}+k+1)(k^{2}-k+1)$と分数分解できるため,部分分数分解を行うことができそうである。
$1-1/2+1/2-1/4+1/4+\cdots$の収束先はどのように記述すればよいか
極限を用いて記述する。$1/k-1/(2k)$を$1$つの項として考えると,$n$項目までの和の極限は
\lim_{n\rarr\infty}\left(1-\frac{1}{2n}\right) &= 1
\end{align}
となる。$\cdots$を用いて$1$だけ残ることを自明とするよりもベター。
$\tan^{-1}2+\tan^{-1}3$を求めよ($-\pi/2<\tan^{-1}x<\pi/2$)
$X{=}\tan^{-1}2,Y{=}\tan^{-1}3$とおいて$\tan(X{+}Y)$を考える。
\tan(X+Y)
&= \frac{\tan X+\tan Y}{1-\tan X\tan Y}
= \frac{2+3}{1-2\cdot 3}
= -1
\end{align}
となり,$0{<}X{<}\pi/2,0{<}Y{<}\pi/2$より$0{<}X{+}Y{<}\pi$に注意すると$X{+}Y{=}3\pi/4$が得られます。
$X{+}Y$も$-\pi/2<\tan^{-1}x<\pi/2$としないことに注意する。
$\sqrt{1+\sin x}$を見て思い出すことは何か
$2$倍角の公式から
\left(\sin\frac{x}{2}+\cos\frac{x}{2}\right)^{2}
&= 1+2\sin\frac{x}{2}\cos\frac{x}{2} = 1+\sin x
\end{align}
となるため,$0<x<\pi$のとき
\sqrt{1+\sin x} &= \sin\frac{x}{2}+\cos\frac{x}{2}
\end{align}
となること。
$\lim_{x\rarr\infty}(\sqrt{x^{2}+3x-1} - \sqrt[3]{x^{3}+x^{2}-1})$の求め方を説明せよ
$(1+x)^{n}$のマクローリン展開
(1+x)^{n} &= 1+nx+\frac{n(n-1)}{2}x^{2}+\cdots
\end{align}
で$x$の$1$次の項以降を無視すると,
&\sqrt{x^{2}{+}3x{-}1} - \sqrt[3]{x^{3}{+}x^{2}{-}1}
= x(1{+}3x^{-1}{-}x^{-3})^{1/3} - x(1{+}x^{-1}{-}x^{-3})^{1/3}\\[0.7em]
&\simeq x\left\{1+\frac{1}{2}\left(3x^{-1}-x^{-3}\right)\right\} - x\left\{1+\frac{1}{3}\left(x^{-1}-x^{-3}\right)\right\}\\[0.7em]
&= \frac{3}{2}-\frac{1}{2x^{2}}-\frac{1}{3}+\frac{1}{3x^{2}}
~\rarr~\frac{7}{6}~(x\rarr\infty)
\end{align}
二重根号の解答について注意点は何か
二重根号のまま解答せず,二重根号を外して解答するべき点
行列の階数を行列式から求める方法を説明せよ
行列の階数は小行列式の最大次数となる。ただし,最大次数が$r$であるとは「$0$とならない$r$次小行列が少なくとも$1$つ存在し,それより大きい次数の小行列式は全て$0$となる」と定義される。
例えば
A &=
\begin{pmatrix}
1 & 1 & 2 \\
1 & 1 & 2 \\
1 & 2 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
で$3$次小行列式は$0$となるが$2$次小行列の中には$0$とならないものが存在するため,$A$の小行列式の最大次数は$2$となる。ゆえに,$A$の階数は$2$となる。この例の場合は行基本変形を用いて階段の形に変形する方法が行列の階数を求めるには簡単だろう。
小行列式は首座小行列式とは限りません。行番号と列番号を適当に選べます。
係数行列と拡大係数行列の階数により連立方程式の解を判別せよ
- 係数行列と拡大係数行列の階数が等しい場合:解が存在する(不定形含む)
- 係数行列と拡大係数行列の階数が等しくない場合:解が存在しない
「この数は$n$次の代数方程式の解の$1$つです」系の問題の解き方を説明せよ
与式を$x$とおいて$n$乗する。例えば
\sqrt[3]{6+\sqrt{\frac{980}{27}}}
+\sqrt[3]{6-\sqrt{\frac{980}{27}}}
\end{align}
が$3$次の代数方程式の解の$1$つであるときに方程式を求めるためには,与式を$x$とおいて$3$乗することで
x^{3}
&= 12 - 2x
\end{align}
という関係式が得られる。これにより$x^{3}+2x-12=0$と求められる。
複雑な$n$乗根が与えられたときの対応について説明せよ
与式を$x$とおいて$n$乗することで$x$の関係式を導き,代数方程式の解として綺麗な形を求める。例えば
\sqrt[3]{6+\frac{14}{3}\sqrt{\frac{5}{3}}}
+\sqrt[3]{6-\frac{14}{3}\sqrt{\frac{5}{3}}}
\end{align}
が与えられたときに,これを$x$とおいたときの代数方程式は$x^{3}+2x-12=0$となるが,この方程式を解くと
x &= 2,-1\pm\sqrt{5}
\end{align}
と求められる。与式がこの$3$解のうちどれに相当するのかを,$x=a+b\sqrt{5/3}$の形の恒等式を立てて両辺を$3$乗して求める。
$\tan^{-1}$の中身が複雑なときの対応について説明せよ
公式
\tan^{-1}\frac{A-B}{1+AB} &= \tan^{-1}A - \tan^{-1}B
\end{align}
を利用する。例えば
\sum_{k=1}^{n}\tan^{-1}\frac{1}{k^{2}+k+1}
&= \sum_{k=1}^{n}\tan^{-1}\frac{(k+1)-k}{1+(k+1)k}\\[0.7em]
&= \sum_{k=1}^{n}\left\{\tan^{-1}(k+1)-\tan^{-1}k\right\}\\[0.7em]
&= \tan^{-1}(n+1)-\tan^{-1}1
= \tan^{-1}(n+1)-\frac{\pi}{4}
\end{align}
のように用いる。
$y^{3}=27$を解け
因数分解すると
(y-3)(y^{2}+3y+9)
\end{align}
となるため,
y &= 3,\frac{-3\pm3\sqrt{3}i}{2}
\end{align}
となる。決して$y=3$のように早とちりしないこと。
$\sum_{k=1}^{\infty}k^{3}/k!$を求めよ
$\sum_{k=1}^{\infty}1/k!=e$を利用するため,分子を階乗の形で表すことを目指す。
k^{3} &= k(k-1)(k-2) + ak(k-1) + bk\\[0.7em]
&= k^{3} + (a-3)k^{2} + (2-a+b)k
\end{align}
とおくと,$(a,b)=(3,1)$となるため,
\sum_{k=1}^{\infty}\frac{k^{3}}{k!}
&= \sum_{k=1}^{\infty}\frac{k(k-1)(k-2)+3k(k-1)+k}{k!}\\[0.7em]
&= \sum_{k=3}^{\infty}\frac{1}{(k-3)!}+3\sum_{k=2}^{\infty}\frac{1}{(k-2)!}+\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{(k-1)!}\\[0.7em]
&= e + 3e + e = 5e
\end{align}
が得られる。
$\alpha>0$に対し$\sum_{n=1}^{\infty}1/n^{\alpha}$の収束を判定せよ
コーシーの積分判定法により$\sum_{n=1}^{\infty}f(n)$と$\int_{1}^{\infty}f(x)dx$の収束と発散は対応する。$f(x){=}1/x^{\alpha}$とおくと,$0{<}\alpha{<}1$のとき
\int_{1}^{\infty}f(x)dx
&= \lim_{R\rarr\infty}\left[\frac{x^{1-\alpha}}{1-\alpha}\right]_{0}^{R}
= \lim_{R\rarr\infty}\frac{R^{1-\alpha}}{1-\alpha} = +\infty
\end{align}
となるため発散する。$\alpha{=}1$のとき
\int_{1}^{\infty}f(x)dx
&= \lim_{R\rarr\infty}\left[\log x\right]_{0}^{R}
= \lim_{R\rarr\infty}\log R = +\infty
\end{align}
となるため発散する。$\alpha{>}1$のとき
\int_{1}^{\infty}f(x)dx
&= \lim_{R\rarr\infty}\left[\frac{x^{1-\alpha}}{1-\alpha}\right]_{0}^{R}
= \lim_{R\rarr\infty}\frac{R^{1-\alpha}}{1-\alpha} = \frac{1}{\alpha-1}
\end{align}
となるため収束する。
行列式を二つの行列式に分解する際の注意点を述べよ
セルだけで考えずに,行もしくは列セットで考えること。具体的には,
\begin{vmatrix}
1 {+} x_{1} & 1 & 1\\
1 & 1 {+} x_{2} & 1\\
1 & 1 & 1 {+} x_{3}
\end{vmatrix}
&=
\begin{vmatrix}
1 & 1 & 1\\
1 & 1 {+} x_{2} & 1\\
1 & 1 & 1 {+} x_{3}
\end{vmatrix}
+
\begin{vmatrix}
x_{1} & 1 & 1\\
1 & 1 {+} x_{2} & 1\\
1 & 1 & 1 {+} x_{3}
\end{vmatrix}
\end{align}
とせずに,
\begin{vmatrix}
1 {+} x_{1} & 1 & 1\\
1 & 1 {+} x_{2} & 1\\
1 & 1 & 1 {+} x_{3}
\end{vmatrix}
&=
\begin{vmatrix}
1 & 1 & 1\\
1 & 1 {+} x_{2} & 1\\
1 & 1 & 1 {+} x_{3}
\end{vmatrix}
+
\begin{vmatrix}
x_{1} & 1 & 1\\
0 & 1 {+} x_{2} & 1\\
0 & 1 & 1 {+} x_{3}
\end{vmatrix}
\end{align}
としなければならない。
$\sum_{k=1}^{n}(-1)^{k+1}{}_{n}C_{k}/k$を求めよ
$x^{k}$を付けて微分を利用する。
f(x) &= \sum_{k=1}^{n}\frac{(-1)^{k+1}{}_{n}C_{k}}{k}x^{k}
\end{align}
とおくと,$f(1)$を求めればよい。両辺を微分すると
f^{\prime}(x)
&= \sum_{k=1}^{n}(-1)^{k+1}{}_{n}C_{k}x^{k-1}\\[0.7em]
&= -\frac{1}{x}\left(\sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}(-x)^{k}-1\right)
= \frac{1-(1-x)^{n}}{x}
\end{align}
となるため,$f(0)=0$に注意すると
f(1)
&= \int_{0}^{1}f^{\prime}(x)dx
= \int_{0}^{1}\frac{1-(1-x)^{n}}{x}dx
= \int_{0}^{1}\frac{1-t^{n}}{1-t}dt\\[0.7em]
&= \int_{0}^{1}(1 + t + \frac{t^{2}}{2} + \cdots + t^{n-1})dt
= 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots\frac{1}{n}
\end{align}
となる。
オイラー定数を説明せよ
$1{+}1/2{+}\cdots$と$\log_{e}n$の発散スピードはほぼ同じであり,その差をオイラー定数$\gamma$という。
\gamma &= \lim_{n\rarr\infty}\left(\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}-\log_{e}n\right)
\end{align}
$\lim_{n\rarr\infty}(\sqrt{x^{2}+3x-1}-\sqrt[3]{x^{3}+x^{2}-1})$の求め方を説明せよ
いずれも$x$の次数は$1$となるため,
\left(\sqrt{x^{2}+3x-1}-x\right)-\left(\sqrt[3]{x^{3}+x^{2}-1}-x\right)
\end{align}
を有理化して分数の極限を考えればよい。
ルートをとるときの注意点
実数の議論をしている場合はルートをとる前に正であることを確認する。例えば,
(x - a)^{2} &= \left\{(\sqrt{x}+\sqrt{a})(\sqrt{x}-\sqrt{a})\right\}^{2}
\end{align}
とするときには$x>0$および$a>0$をしっかりと確認すること。
コーシーシュワルツの不等式とその活用方法を説明せよ
任意の正の整数$n$に対して
\left(\sum_{i=1}^{n}a_{i}^{2}\right)\left(\sum_{i=1}^{n}b_{i}^{2}\right)
&\geq \left(\sum_{i=1}^{n}a_{i}b_{i}\right)^{2}
\end{align}
が成り立つ。ただし,等号成立条件は$i=1,2,\ldots,n$に対し$a_{i}x-b_{i}=0$となる$x$が存在することである。
$a_{i}\neq 0$のときは等号成立条件を$b_{1}/a_{1}=\cdots=b_{n}/a_{n}$と理解するとよいでしょう。
これは例えば$x,y,z>0,x+y+z=1$のとき$x^{2}+y^{2}+z^{2}$の最小値を求めるような問題で活躍する。コーシーシュワルツの不等式より
(1+1+1)(x^{2}+y^{2}+z^{2}) &\geq (x + y + z)^{2} = 1
\end{align}
となるため,$x^{2}+y^{2}+z^{2}$は
\frac{x}{1} = \frac{y}{1} = \frac{z}{1}
\end{align}
のとき,すなわち$x=y=z=1/3$のとき最小値$1$をとる。他にも,コーシーシュワルツの不等式より
&(\sqrt{x}^{2} + \sqrt{y}^{2} + \sqrt{z}^{2})\left(\sqrt{\frac{1}{x}}^{2}+\sqrt{\frac{1}{y}}^{2}+\sqrt{\frac{1}{z}}^{2}\right)\notag\\[0.7em]
&\quad = (x + y + z)\left(\frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z}\right)\\[0.7em]
&\quad = \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z}
\geq \left(\sqrt{x}\cdot\frac{1}{\sqrt{x}}+\sqrt{y}\cdot\frac{1}{\sqrt{y}}+\sqrt{z}\cdot\frac{1}{\sqrt{z}}\right)^{2}
= 9
\end{align}
となるため,$1/x+1/y+1/z$は
\frac{\sqrt{x}}{1/(1/\sqrt{x})} = \frac{\sqrt{y}}{1/(1/\sqrt{y})} = \frac{\sqrt{z}}{1/(1/\sqrt{z})}
\end{align}
のとき,すなわち$x=y=z=1/3$のときに最小値$9$をとる。
片方の変数に関して複雑な累次積分の注意点を述べよ
積分領域を図示して必ず簡単な順序で行う。例えば,
\int_{0}^{2}\left(\int_{y}^{2}x\sqrt{x^{3}+1}dx\right)dy
\end{align}
は$x\rarr y$の順番で積分しているが,積分領域を図示して$y\rarr x$の順番に入れ替えると
\int_{0}^{2}\left(\int_{0}^{x}dy\right)x\sqrt{x^{3}+1}dx
&= \int_{0}^{2}x^{2}\sqrt{x^{3}+1}dx
= \frac{1}{3}\int_{1}^{9}t^{1/2}dt = \frac{52}{9}
\end{align}
と簡単に計算できる。
極座標変換の注意点を述べよ
ヤコビアン$r$を忘れないこと。答えに違和感がない場合は気づくことが難しいため,十分注意する。
狙われる可能性は低いポイント
極方程式$r\cos(\theta-\alpha)=a~(a>0)$は何を表すか
原点$O$と異なる点$(a,\alpha)$を通り$OA$に垂直な直線。$\cos$の定義を思い浮かべればよい。極方程式を覚える必要はないが,この極方程式が与えられた際に図形を描けるようになる必要がある。
極方程式$r=2a\cos(\theta-\alpha)~(a>0)$は何を表すか
中心が$(a,\alpha)$で半径が$a$の円。$\cos$の定義を思い浮かべればよい。極方程式を覚える必要はないが,この極方程式が与えられた際に図形を描けるようになる必要がある。
極方程式$r=a\cos2\theta~(a>0)$は何を表すか
正葉線。「+」を半時計回りに$\pi/4$回転させたような図形である。極方程式を覚える必要はないが,この極方程式が与えられた際に図形を描けるようになる必要がある。
極方程式$r=a(1+\cos\theta)~(a>0)$は何を表すか
カージオイド。いわゆる心臓形である。極方程式を覚える必要はないが,この極方程式が与えられた際に図形を描けるようになる必要がある。
極方程式$r^{2}=2a^{2}\cos 2\theta~(a>0)$は何を表すか
レムニスケート。$8$を横にしたような図形である。極方程式を覚える必要はないが,この極方程式が与えられた際に図形を描けるようになる必要がある。
極方程式で表された図形の面積の求め方を述べよ
S &= \int_{\alpha}^{\beta} \frac{1}{2}r^2 d\theta
= \int_{\alpha}^{\beta} \frac{1}{2}\left\{f(\theta)\right\}^2 d\theta
\end{align}
曲線の長さの求め方を述べよ
l &=
\int_{a}^{b}\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^{2}+\left(\frac{dy}{dt}\right)^{2}}dt
= \int_{a}^{b} \sqrt{1 + \left\{ f^{\prime}(x) \right\}^2}dx
\end{align}
ただし,途中の変形では$x=t$かつ$y=f(t)$とおき,$t$を$x$とおきなおした。
$x=\tan\theta$とおきたくなりますが,計算が煩雑になってしまいます。
曲面積の求め方を述べよ
S &= \int\int_{D} \sqrt{1 + \left\{ f_{x}(x,y) \right\}^{2} + \left\{ f_{y}(x,y) \right\}^{2}}dxdy
\end{align}
曲線とは異なり平行四辺形の微小面積から求められます。
$\int\sqrt{1+x^{2}}dx$の求め方を説明せよ
I &= \int\sqrt{1+x^{2}}dx
\end{align}
とおいて部分積分を適用して$I$を再び出現させる。
ガウス積分を述べよ
\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^{2}}dx &= \sqrt{\frac{\pi}{a}}\quad(a>0)
\end{align}
2変数関数の極値に関して説明せよ
- 偏導関数の値が全て$0$でヘッセ行列が正定値ならば極小値
- 偏導関数の値が全て$0$でヘッセ行列が負定値ならば極大値
- 偏導関数の値が全て$0$でヘッセ行列が不定値ならば鞍点
- 偏導関数の値が全て$0$でヘッセ行列が正定値または半負定値ならば極値判定不能
包絡線の求め方を述べよ
パラメータを変数とみなして偏微分をして偏導関数が$0$になるパラメータを元の式に代入する。
3重積分の極座標変換とヤコビアンを述べよ
\begin{cases}
x = r\sin\theta \cos \varphi \\[0.7em]
y = r\sin\theta \sin \varphi \\[0.7em]
z = r\cos\theta
\end{cases}
とおくとき,ヤコビアンは
J &= r^2\sin \theta
\end{align}
となる。
積分における特異点の処理について述べよ
積分範囲で被積分関数が発散した場合には適当な変数に置き換えて広義積分を利用する
内積が満たすべき性質を述べよ
$(f,g)$が内積であることを示すためには,
- $(f,g)=(g,f)$
- $(cf,g)=c(f,g)$
- $(f_{1}+f_{2},g)=(f_{1},g)+(f_{2},g)$
- $(f,f)\geq 0$
- $(f,f)=0$ならば$f=0$
を確認すればよい。
球面積の公式を述べよ
S &= 4\pi r^{2}
\end{align}
球の体積の公式である$4\pi r^{3}/3$を$r$に関して微分するイメージで覚えるとよい。
懺悔集
- 「最大」と「最小」を読み間違えた
-
連立合同式
\begin{cases}
x\equiv 4\pmod{7}\\[0.7em]
x\equiv 7\pmod{17}
\end{cases}を満たす$5000$未満の整数$x$のうち最大のものを求めよという問題で「最小」を答えてしまった。わざわざ$5000$未満と書いてあることは目に入ったが最小を求めていることに疑いを持てなかった。
- 固有方程式を頭の中で計算してサラスの公式の後半に$\lambda$を入れるのを忘れた
-
\begin{pmatrix}
3 & 5 & 2\\
4 & -4 & 6\\
2 & -3 & 5
\end{pmatrix}の固有値を求める際に,サラスの公式を頭の中で計算したことにより,
\begin{align}
(3-\lambda)(-4-\lambda)(5-\lambda)+60-24-\{-16-54+100\} &= 0
\end{align}としてしまい,固有方程式の解が求められなかった。この懺悔から学べる点としては
- $A-\lambda I_{n}$はしっかり手を動かして書くこと
- 固有方程式の解が見つからない場合は固有方程式自体を疑うこと
- 行基本変形を用いた余因子展開により検算すること
が挙げられる。特に
\begin{vmatrix}
3-\lambda & 5 & 2\\
4 & -4-\lambda & 6\\
2 & -3 & 5-\lambda
\end{vmatrix}をしっかり書いて固有値・固有ベクトルが見つかれば,実質検算できていることになる。1.が本当に大切である。
- 一階線形微分方程式で左辺をはらった後に右辺の積分定数を加えた
-
一階線形微分方程式である
\begin{align}
y^{\prime} - 2y &= \sin x
\end{align}において,両辺に$e^{-2x}$をかけて
\begin{align}
(e^{-2x}y) &= e^{-2x}\sin x
\end{align}とし,両辺を$x$で積分して
\begin{align}
e^{-2x}y &= -\frac{2}{5}e^{-2x}\sin x - \frac{1}{5}e^{-2x}\cos x + C
\end{align}とするまではよかったが,両辺に$e^{2x}$をかけて
\begin{align}
y &= -\frac{2}{5}\sin x - \frac{1}{5}\cos x + C
\end{align}としてしまった。これは,積分定数を頭の中で付け加えていたから起きてしまった間違いであり,やはり途中式は省略せずに全て記述するように心がけた方がよい。
- 母集団のサイズとサンプルサイズを混同した
-
「$1000$人のうち$800$人を無作為に抽出し…」という文章を読んで$1000$人をサンプルサイズだと勘違いしてしまった。$800$人がサンプルサイズで$n{=}800$だ。$1000$という母集団のサイズは使わないこともあるため注意。
- カルダノの公式で$u,v$の必要条件を求めるフェーズで手が止まった
-
\begin{align}
y^{3}+py+q &= 0
\end{align}で$y=u+v$とおいて
\begin{align}
u^{3}+v^{3}+q+3(u+v)\left(uv+\frac{p}{3}\right) &= 0
\end{align}までは変形できたが,
\begin{cases}
u^{3}+v^{3} + q = 0\\[0.7em]
\displaystyle
uv+\frac{p}{3} = 0
\end{cases}が思い浮かばなかった。同値変形ではなく必要条件に舵を切って代数学の基本定理により十分性を担保するという流れが染み付いていなかった。$u^{3}+v^{3}$は和に関する条件なので$u+v$ではなく$uv$に関する条件を抽出する点も難しい。$u+v$の項は無視してしまう感覚を何回も味わっておくとよい。
- 微分方程式で置換しても綺麗な形にならなそうだからといって置換を諦めた
-
積分の問題であれば置換後の結果はある程度綺麗になっていないと意味がない。しかし,微分方程式であれば置換の結果が多少汚くとも解くことができる可能性が高い。具体的には,
\begin{align}
\frac{y(1 - xy - \log x - \log y)}{x(xy + \log x + \log y)}
\end{align}という式に対し,明らかに$t=xy$というブロックが見えるのに$y/x$の項が消えなさそうだからといって置換の計算を試さなかった。$t=xy$とおいて$y$を消去すれば
\begin{align}
f(t)dt &= g(x)dx
\end{align}の変数分離系に帰着した。
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