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非心分布の定義
平均が$0$の正規変量で定義された分布を平均が$0$でない正規変量に一般化した分布を非心分布という。
非心分布が平均が$0$の正規変量について定義された分布と異なるのは平均であり,分散は興味の対象外です。分布の中心が平均という捉え方をすると「非(中)心」分布の興味の対象が平均であることを理解しやすいでしょう。
具体例
非心分布の具体例としては,非心$t$分布,非心カイ二乗分布,非心$F$分布をおさえておきましょう。
非心$t$分布
$U\sim\N(\lambda,1)$と$V\sim\chi^{2}(n)$に対して$T{=}U/\sqrt{V/n}$が従う分布を自由度$n$,非心度$\lambda$の非心$t$分布といい,$t(n,\lambda)$と表す。確率密度関数は,
f(t)
&= \cfrac{e^{-\lambda^{2}/2}}{\sqrt{\pi n}\Gamma\left(\cfrac{n}{2}\right)}
\sum_{i=0}^{\infty}\cfrac{\Gamma\left(\cfrac{n+1+i}{2}\right)2^{i/2}\lambda^{i}t^{i}}{\left(1+\cfrac{t^{2}}{n}\right)^{(n+1+i)/2}i!n^{i/2}}
\end{align}
となる。
非心カイ二乗分布
$i=1,\ldots,n$に対し,互いに独立な確率変数$X_{i}\sim\N(\mu_{i},1)$を用いて
Y = \sum_{i=1}^{n}X_{i}^{2},\quad \lambda = \sum_{i=1}^{n}\mu_{i}^{2}
\end{align}
とおくとき,$Y$が従う分布を自由度$n$,非心度$\lambda$の非心カイ二乗分布といい,$\chi^{2}(n,\lambda)$と表す。確率密度関数は,
f(y) &= \sum_{i=0}^{\infty}p_{i}(\lambda/2)g_{n+2i}(y)
\end{align}
となる。ただし,
p_{i}(\lambda/2) &= \frac{(\lambda/2)^{i}}{i!}2^{-\lambda/2}
\end{align}
とおき,$g_{k}(y)$は$\chi^{2}(k)$の確率密度関数を表す。
非心$F$分布
独立な二つの確率変数$U{\sim}\chi^{2}(l,\lambda)$と$V{\sim}\chi^{2}(m)$に対して$X{=}(U/l)(V/m)$が従う分布を自由度$(l,1)$,非心度$\lambda$の非心$F$分布といい,$F(l,m,\lambda)$と表す。確率密度関数は,
f(x) &= \sum_{i=0}^{\infty}p_{i}(\lambda/2)\frac{l^{l/2+i}}{B(l/2+i,~m/2)m^{l/2+i}}\frac{x^{l/2+i-1}}{\left\{1+(l/m)x\right\}^{(l+m)/2+i}}
\end{align}
となる。ただし,
p_{\lambda/2}(i) &= \frac{(\lambda/2)^{i}}{i!}2^{-\lambda/2}
\end{align}
とおき,$B(\cdot,\cdot)$はベータ関数を表す。
参考文献
本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。
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