本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
線型写像の性質
$V,W$をベクトル空間とし,$F:~V\rightarrow W$を線形写像とするとき,以下が成り立つ。
- $V$のゼロベクトル$\vzero_{V}$と$W$のゼロベクトル$\vzero_{W}$に対し$F(\vzero_{V})=\vzero_{W}$
- $V$の任意の元$v_{1},\ldots,v_{n}$と任意の実数$c_{1},\ldots,c_{n}$に対し,
\begin{align}
F(c_{1}v_{1}+\cdots+c_{n}v_{n}) &= c_{1}F(v_{1})+\cdots+c_{n}F(v_{n}) \label{主題}
\end{align}
F(c_{1}v_{1}+\cdots+c_{n}v_{n}) &= c_{1}F(v_{1})+\cdots+c_{n}F(v_{n}) \label{主題}
\end{align}
線型写像の定義から導かれる性質です。
証明
線型写像の定義の条件1より$V$の任意の元$u,v$に対して$F(u+v)=F(u)+F(v)$が成り立ちますので,$u=v=\vzero_{V}$を代入すると
\begin{align}
F(\vzero_{V})+F(\vzero_{V})&=F(\vzero_{V})
\end{align}
F(\vzero_{V})+F(\vzero_{V})&=F(\vzero_{V})
\end{align}
が得られます。したがって,$F(\vzero_{V})=\vzero_{W}$となります。続いて,式($\ref{主題}$)を数学的帰納法を用いて証明します。$n=1$のときは,線型写像の定義の条件2より成り立ちます。$n=k-1$のときに式($\ref{主題}$)が成り立つと仮定します。すると,$n=k$のとき,線型写像の定義の条件1と$n=k-1$の仮定より,
\begin{align}
F(c_{1}v_{1}+\cdots+c_{n}v_{n}) &= F(c_{1}v_{1}+\cdots+c_{n-1}v_{n-1})+F(c_{n}v_{n}) \\[0.7em]
&= c_{1}F(v_{1})+\cdots+c_{n}F(v_{n})
\end{align}
F(c_{1}v_{1}+\cdots+c_{n}v_{n}) &= F(c_{1}v_{1}+\cdots+c_{n-1}v_{n-1})+F(c_{n}v_{n}) \\[0.7em]
&= c_{1}F(v_{1})+\cdots+c_{n}F(v_{n})
\end{align}
が成り立ちます。したがって,式($\ref{主題}$)が示されました。
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