本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
随伴変換の一意性
随伴変換が一意であることから,随伴行列も一意に定まることが分かります。
証明
以下では,$G$の一意性を示した後に存在を証明します。$G,G^{\prime}$は$F$の随伴変換であるとします。随伴変換の定義より,全ての$u,v\in V$に対して
\begin{align}
(G(u)\mid v) &= (u\mid F(v)) \label{G}\\[0.7em]
(G^{\prime}(u)\mid v) &= (u\mid F(v)) \\[0.7em]
\end{align}
(G(u)\mid v) &= (u\mid F(v)) \label{G}\\[0.7em]
(G^{\prime}(u)\mid v) &= (u\mid F(v)) \\[0.7em]
\end{align}
が成り立つため,$G=G^{\prime}$が成り立ちます。すなわち,全ての$u,v\in V$に対して$G$が一意であることが示されました。次に,座標ベクトルを導入することで$G$の存在を証明します。$V$の正規直交基底の一つを$\beta$とし,$F$の表現行列を
\begin{align}
A &= [F]_{\beta}
\end{align}
A &= [F]_{\beta}
\end{align}
とします。$u,v\in V$の正規直交基底$\beta$に対する座標ベクトルをそれぞれ$\vx,\vy$と置くと,
\begin{align}
[u]_{\beta} = \vx,\quad [v]_{\beta} = \vy
\end{align}
[u]_{\beta} = \vx,\quad [v]_{\beta} = \vy
\end{align}
と表されます。いま,$F$による$v$の像$F(v)$を座標ベクトルで表すと,
\begin{align}
[F(v)]_{\beta} &= [F]_{\beta}[v]_{\beta} \\[0.7em]
&= A\vy
\end{align}
[F(v)]_{\beta} &= [F]_{\beta}[v]_{\beta} \\[0.7em]
&= A\vy
\end{align}
となります。座標ベクトルを導入しても標準内積の形が変わらないことを利用すると,
\begin{align}
(u\mid F(v)) &= (\vx\mid A\vy) \\[0.7em]
&= \ovx^{T} A\vy \\[0.7em]
&= \overline{(\oA^{T}\vx)^{T}}\vy \\[0.7em]
&= \overline{(A^{\ast}\vx)^{T}}\vy \\[0.7em]
&= (A^{\ast}\vx\mid \vy) \label{1}
\end{align}
(u\mid F(v)) &= (\vx\mid A\vy) \\[0.7em]
&= \ovx^{T} A\vy \\[0.7em]
&= \overline{(\oA^{T}\vx)^{T}}\vy \\[0.7em]
&= \overline{(A^{\ast}\vx)^{T}}\vy \\[0.7em]
&= (A^{\ast}\vx\mid \vy) \label{1}
\end{align}
となります。ただし,$A^{\ast}$は随伴行列を表します。このとき,$\beta$に関して$A^{\ast}$を表現行列をもつ$V$の線型変換を$G$とすれば,再び座標ベクトルを導入しても標準内積の形が変わらないことを利用して,
\begin{align}
(A^{\ast}\vx\mid \vy) &= (G(u)\mid v) \label{2}
\end{align}
(A^{\ast}\vx\mid \vy) &= (G(u)\mid v) \label{2}
\end{align}
となります。したがって,式($\ref{1}$)と式($\ref{2}$)より,式($\ref{G}$)を満たす$G$が存在することが示されました。
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