【徹底解説】三角行列の逆行列

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

三角行列の逆行列

三角行列の逆行列は三角行列になる。特に,単三角行列の逆行列は単三角行列になる。

三角行列を扱うモチベーションの一つでもあります。

証明

三角行列のうち上三角行列に関して上の主張を証明し,下三角行列の場合も同様として証明を行います。本証明では余因子行列による逆行列の表現に基づいて上三角行列の逆行列を求めるのですが,まず最初に上三角行列$A$の$(i,j)$余因子$\Delta_{i,j}$は$i<j$のとき$0$となることを確認します。厳密には数学的帰納法を用いて示すことができますが,$A$が$3$次元行列であるときを考えるだけで十分でしょう。

\begin{align}
A &= \begin{bmatrix}
a_{11} & a_{12} & a_{13}\\
0 & a_{22} & a_{23}\\
0 & 0 & a_{33}
\end{bmatrix}
\end{align}

$A$の第$i$行と第$j$列を取り除いて得られる$2$次の行列を$A_{i,j}$と表します。すると,$A_{11},A_{12},A_{13}$は以下のようになります。

\begin{align}
A_{11} &=
\begin{bmatrix}
a_{22} & a_{23}\\
0 & a_{33}
\end{bmatrix},\quad
A_{12} =
\begin{bmatrix}
0 & a_{23}\\
0 & a_{33}
\end{bmatrix},\quad
A_{13} =
\begin{bmatrix}
0 & a_{22}\\
0 & 0
\end{bmatrix}
\end{align}

同様に,$A_{21},A_{22},A_{23}$は以下のようになります。

\begin{align}
A_{21} =
\begin{bmatrix}
a_{12} & a_{13}\\
0 & a_{33}
\end{bmatrix},\quad
A_{22} =
\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{13}\\
0 & a_{33}
\end{bmatrix},\quad
A_{23} =
\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{22}\\
0 & 0
\end{bmatrix}
\end{align}

同様に,$A_{31},A_{32},A_{33}$は以下のようになります。

\begin{align}
A_{31} &=
\begin{bmatrix}
a_{12} & a_{13}\\
a_{22} & a_{33}
\end{bmatrix},\quad
A_{32} =
\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{13}\\
0 & a_{23}
\end{bmatrix},\quad
A_{33} =
\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{12}\\
0 & a_{22}
\end{bmatrix}
\end{align}

以上より,$A_{i,j}$は$i<j$のとき対角成分に$0$が含まれる上三角行列になることが分かります。三角行列の行列式が対角成分の積であることに注意すると,余因子の定義より$A$の$(i,j)$余因子$\Delta_{i,j}$は$i<j$のとき$0$となることが分かりました。ここで,冒頭の余因子行列による逆行列の表現に戻ります。余因子$\Delta_{j,i}$を$(i,j)$成分とする正方行列を余因子行列と定義されますので,余因子行列の$(i,j)$成分は$i>j$のとき$0$となります。したがって,$A^{-1}$は上三角行列であることが示されました。

次に,$A^{-1}$の対角成分を求めるため,

\begin{align}
\begin{bmatrix}
x_{1} && \ast\\
& \ddots\\
O && x_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}

とおきます。$n$次元単位行列を$I_{n}$とおくと,$AA^{-1}=I_{n}$でなければならないので,

\begin{align}
\begin{bmatrix}
a_{1} && \ast\\
& \ddots\\
O && a_{n}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
x_{1} && \ast\\
& \ddots\\
O && x_{n}
\end{bmatrix} &=
\begin{bmatrix}
a_{1}x_{1} && \ast\\
& \ddots\\
O && a_{n}x_{n}
\end{bmatrix} =
\begin{bmatrix}
1 && \ast\\
& \ddots\\
O && 1
\end{bmatrix}
\end{align}

が得られます。すなわち,対角成分の比較より

\begin{align}
x_{1} &= 1/a_{11},\quad \ldots,\quad x_{n} = 1/a_{nn}
\end{align}

となります。したがって,上三角行列$A$の逆行列$A^{-1}$は

\begin{align}
\begin{bmatrix}
1/a_{11} && \ast\\
& \ddots\\
O && 1/a_{nn}
\end{bmatrix}
\end{align}

と表されます。これより,単上三角行列の逆行列は単上三角行列となることが示されました。$A$が下三角行列の場合も同様にして示すことができます。

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