【徹底解説】グラムシュミット分解の存在

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

グラムシュミット分解の存在

任意の$n$次元正則行列$A$は,ユニタリ行列$U$と対角成分が正の実数である三角行列$T$の積で表される。ただし,$T$が上三角行列の場合は$UT$,下三角行列の場合は$TU$となる。

正則行列に対してグラムシュミット分解が存在することを主張する定理です。

証明

正則行列の列ベクトルは線型独立であることから,$A=[\va_{1},\ldots,\va_{n}]$とすると,$\langle\va_{1},\ldots,\va_{n}\rangle$は線型独立になります。これをグラムシュミットの正規直交化法に基づいて正規直交化したものを$\langle\vu_{1},\ldots,\vu_{n}\rangle$とおくと,ユニタリ行列と同値な条件より$U=[\vu_{1},\ldots,\vu_{n}]$はユニタリ行列になります。グラムシュミットの正規直交化法は,

\begin{align}
\left\{
\begin{alignedat}{1}
\vu^{\prime}_{k} &= \va_{k}-\sum_{j=1}^{k-1}\overline{(\va_{k}\mid \vu_{j})}\vu_{j}\\[0.7em]
\vu_{k} &= \vu^{\prime}_{k}/\|\vu^{\prime}_{k}\|
\end{alignedat}
\right.\label{正規直交化}
\end{align}

のように$\vu_{k}$を生成します。ここで,$t_{k,k}=\|\vu^{\prime}_{k}\|$とおき,$1\leq j\leq k-1$に対して$t_{j,k}=\overline{(\va_{k}|\vu_{j})}$とおきます。すると,$\vu^{\prime}_{k}\neq\vzero$より$t_{k,k}>0$となります。また,式($\ref{正規直交化}$)を変形すると,

\begin{align}
\va_{k} &= \vu^{\prime}_{k}+\sum_{j=1}^{k-1}\overline{(\va_{k}\mid \vu_{j})}\vu_{j}
= t_{k,k}\vu_{k}+\sum_{j=1}^{k-1}t_{j,k}\vu_{j}
= \sum_{j=1}^{k}t_{j,k}\vu_{j}\label{ベクトル表記}
\end{align}

が得られます。グラムシュミットの正規直交化法の生成過程より,$j>k$のときは$t_{j,k}=0$となりますので,$T=(t_{j,k})$とおくと$T$は上三角行列となります。さらに,式($\ref{ベクトル表記}$)より

\begin{align}
a_{i,k} &= \sum_{j=1}^{n}u_{i,j}t_{j,k}
\end{align}

と書けますので,$A=UT$が示されました。$A$の行ベクトルに対して同様の証明を行うことにより,下三角行列$T$に対して$A=TU$が成り立つことが示されます。

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