【徹底解説】グラム・シュミットの正規直交化法

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

グラム・シュミットの正規直交化法

$V$を$n$次元内積空間とし,$\{w_{1},\ldots,w_{n}\}$を$V$の任意の基底とする。このとき,

\begin{align}
&\begin{cases}
v^{\prime}_{1} &= w_{1} \\[0.7em]
v_{1} &= v^{\prime}_{1}/\|v^{\prime}_{1}\|
\end{cases}\\[0.7em]
&\begin{cases}
v^{\prime}_{2} &= w_{2}-\overline{(w_{2}\mid v_{1})}v_{1} \\[0.7em]
v_{2} &= v^{\prime}_{2}/\|v^{\prime}_{2}\|
\end{cases}\\[0.7em]
&\quad\quad\vdots\notag\\[0.7em]
&\begin{cases}
v^{\prime}_{n} &= w_{n}-\overline{(w_{n}\mid v_{1})}v_{1}-\cdots -\overline{(w_{n}\mid v_{n-1})}v_{n-1} \\[0.7em]
v_{n} &= v^{\prime}_{n}/\|v^{\prime}_{n}\|
\end{cases}
\end{align}

と順次に元$v_{1},\ldots,v_{n}$を定めると,$\{v_{1},\ldots,v_{n}\}$は$V$の正規直交基底となる。さらに,$r=1,\ldots,n$に対して

\begin{align}
\langle w_{1},\ldots,w_{r}\rangle &= \langle v_{1},\ldots,v_{r}\rangle \label{主題}
\end{align}

が成り立つ。ただし,$\langle a_{1},\ldots,a_{r}\rangle$は$r$個の元$a_{1},\ldots,a_{r}$によって張られる部分空間を表す。

ある基底に対して正規直交基底が存在し,上の手続きに従えば作れることを意味しています。

証明

$r=1,\ldots,n$に対して$v_{1},\ldots,v_{r}$が正規直交系で式($\ref{主題}$)が成り立つことが示されれば,$\{w_{1},\ldots,w_{r}\}$が$V$の基底であることから$\{v_{1},\ldots,v_{r}\}$が正規直交基底であることが示されます。したがって,帰納法によりこれらを示します。

まず,$r=1$のときは$\|v_{1}\|=1$,$\langle w_{1}\rangle=\langle v_{1}\rangle$となるため,$v_{1}$は正規直交系で式($\ref{主題}$)を満たします。次に,$2\leq r\leq n$なる$r$に対して$v_{1},\ldots,v_{r-1}$が正規直交系で,

\begin{align}
\langle w_{1},\ldots,w_{r-1}\rangle &= \langle v_{1},\ldots,v_{r-1}\rangle \label{仮定}
\end{align}

が成り立つと仮定します。このとき,上で指定されたように

\begin{align}
\begin{cases}
v^{\prime}_{r} &= w_{r}-\overline{(w_{r}\mid v_{1})}v_{1}-\cdots -\overline{(w_{n}\mid v_{r-1})}v_{r-1}\\[0.7em]
v_{r} &= v^{\prime}_{r}/\|v^{\prime}_{r}\|
\end{cases}\label{1}\\[0.7em]
\end{align}

によって$v_{r}$を定めれば,$v_{1},\ldots,v_{r}$が正規直交系になり式($\ref{主題}$)を満たすことを示します。式($\ref{1}$)を$v^{\prime}_{r}$と$w_{r}$に対して二通りで整理することにより,

\begin{align}
v^{\prime}_{r} &\in \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},w_{r}\rangle \\[0.7em]
w_{r} &\in \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},v^{\prime}_{r}\rangle
\end{align}

が得られます。$v^{\prime}_{r}$と$w_{r}$は式($\ref{1}$)により同じ部分空間の元となることから,

\begin{align}
\langle v_{1},\ldots,v_{r-1},w_{r}\rangle &= \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},v^{\prime}_{r}\rangle
\end{align}

が成り立ちます。すると,式($\ref{仮定}$)より

\begin{align}
\langle w_{1},\ldots,w_{r-1},w_{r}\rangle &= \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},w_{r}\rangle \\[0.7em]
&= \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},v^{\prime}_{r}\rangle \label{基底}
\end{align}

が成り立ちます。すなわち,$v_{1},\ldots,v_{r-1},v^{\prime}_{r}$は$w_{1},\ldots,w_{r-1},w_{r}$の基底をなしています。ここで,式($\ref{主題}$)の$v^{\prime}_{r}$に注目すると,$w_{r}$の$v_{1},\ldots,v_{r-1}$方向の成分を$0$としていることから,あと一次元分だけ成分が$0$でない次元が存在します。実際,式($\ref{主題}$)により定められた$v^{\prime}_{r}$のノルムが$0$であるならば,式($\ref{主題}$)により定められる$w_{r}$は$v_{1},\ldots,v_{r-1}$の線型結合で表されてしまい,$w_{r}$が$V$の基底であることに反します。したがって,$\|v^{\prime}_{r}\|\neq 0$としてよく,$v^{\prime}_{r}$は式($\ref{1}$)により単位ベクトル$v_{1}$を作ることができます。

さらに,$v_{1},\ldots,v_{r-1}$が正規直交系であることから,$1\leq i\leq r-1$を満たす任意の$i$に対して

\begin{align}
(v^{\prime}_{r}\mid v_{i}) &= \left(w_{r}-\sum_{k=1}^{r-1}\overline{(w_{r}\mid v_{k})}v_{k}~\middle|~ v_{i}\right)\\[0.7em]
&= (w_{r}\mid v_{i})-\sum_{k=1}^{r-1}(w_{r}\mid v_{k})(v_{k}\mid v_{i}) \\[0.7em]
&= (w_{r}\mid v_{i})-(w_{r}\mid v_{i})\\[0.7em]
&= 0
\end{align}

が成り立ちます。ただし,内積のエルミート双一次形式としての性質と,$k\neq i$に対して$(v_{k}\mid v_{i})=0$かつ$k=i$に対して$(v_{k}\mid v_{i})=1$であることを利用しました。したがって,$v^{\prime}_{r}$の単位ベクトルである$v_{r}$は$v_{1},\ldots,v_{r-1}$のすべてと直交していて,$v_{1},\ldots,v_{r}$は正規直交系であることが示されました。さらに,$v_{r}$が$v^{\prime}_{r}$の単位ベクトルであることから,式($\ref{基底}$)は

\begin{align}
\langle w_{1},\ldots,w_{r-1},w_{r}\rangle &= \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},v^{\prime}_{r}\rangle \\[0.7em]
&= \langle v_{1},\ldots,v_{r-1},v_{r}\rangle
\end{align}

となります。以上より,帰納法によって$v_{1},\ldots,v_{n}$は正規直交系で式($\ref{主題}$)を満たすこと,すなわち$V$の正規直交基底であることが示されました。

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