本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
直交空間
$V$を$\mK$上の$n$次元内積空間とする。ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表す。$W$を$V$部分空間とすれば,$W$の直交空間$W^{\perp}$に対し
V &= W\oplus W^{\perp} \label{主題}
\end{align}
が成り立つ。この$W^{\perp}$を直交補空間という。
直交空間は固有空間の性質を記述する際に便利な概念です。
補足
以下では,式($\ref{主題}$)が成り立つことを証明します。$\dim V=n$,$\dim W=r$とし,$\{v_{1},\ldots,v_{r}\}$を$W$の一つの正規直交基底とします。これを正規直交系の拡大により$V$の直交基底$\{v_{1},\ldots,v_{r},v_{r+1},\ldots,v_{n}\}$に拡大すると,$V$の任意の元$v$は
v &= x_{1}v_{1}+\cdots+x_{r}v_{r}+x_{r+1}v_{r+1}+\cdots+x_{n}v_{n} \label{1}
\end{align}
と表されます。いま,$v\in W^{\perp}$とすると,$v$は$W$のすべての元と直交しますから,$W$の基底と直交します。すなわち,$1\leq i\leq r$を満たす$i$に対して
(v_{i}\mid v) &= 0
\end{align}
が成り立ちます。このとき,座標の抽出より
x_{i} &= (v_{i}\mid v)
\end{align}
が成り立つので,$x_{1}=0$となります。これを式($\ref{1}$)に代入すると,
v &= x_{r+1}v_{r+1}+\cdots+x_{n}v_{n}
\end{align}
となります。すなわち,$W^{\perp}$の任意の元$v$が$v_{r+1},\ldots,v_{n}$の一次結合で表されているため,$W^{\perp}$は$v_{r+1},\ldots,v_{n}$で張られる部分空間
\langle v_{r+1},\ldots,v_{n}\rangle
\end{align}
と等しくなります。したがって,$V$は$W$と$W^{\perp}$の直和で表されます。すなわち,式($\ref{主題}$)が示されました。
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