本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
内積
$V$を実数空間$\mR$または複素数空間$\mC$上のベクトル空間とする。$V$上の正定値であるエルミート双一次形式を内積という。
$V$が$\mR$上のベクトル空間の場合は,エルミート双一次形式と対称双一次形式は等価になりますから,正定値対称双一次形式を内積と呼びます。なお,正定値よりも弱い条件である非退化を内積の定義として採用することもあります。
補足
内積の定義において,正定値に加えて非退化を加える場合もありますが,正定値双一次形式は非退化になるため非退化に関する仮定は省略できます。以下で証明します。
エルミート双一次形式を$f$と置きます。$0$以外の任意の$V$の元$\vv$と任意の$V$の元$\vw$に対して,
\begin{align}
f(\vv,\vw) &= \vzero \label{1}
\end{align}
f(\vv,\vw) &= \vzero \label{1}
\end{align}
が成り立つとするならば,特に$\vw=\vv$のときに$f(\vv,\vv)=\vzero$となります。一方,エルミート双一次形式$f$が正定値であることから,$\vv$に対して以下が成り立ちます。
\begin{align}
f(\vv,\vv) &> 0
\end{align}
f(\vv,\vv) &> 0
\end{align}
したがって,式($\ref{1}$)が成り立つとするならば,$\vx=\vzero$でなければなりません。以上より,正定値エルミート双一次形式は非退化であることが示されました。
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