【徹底解説】エルミート形式の標準形の定義

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

エルミート形式の標準形

$V$を$n$次元内積空間,$g$を$V$上のエルミート形式,$f$を$g$の極形式であるエルミート双一次形式とする。$f$に一対一対応するエルミート変換を$F$とし,$F$の固有値を重複も含めて$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}$とする。$V$の適当な正規直交基底に関する座標ベクトル$\vx=[x_{1},\ldots,x_{n}]$によって,エルミート形式$g$は

\begin{align}
g(v) &= \alpha_{1} |x_{1}|^{2}+\cdots+\alpha_{n} |x_{n}|^{2}\label{主題1}
\end{align}

と表される。これをエルミート形式$g$の直交標準系という。また,$g$の符号が$(p,q)$であれば,

\begin{align}
g(v) &= |x_{1}|^{2}+\cdots+|x_{p}|^{2}-|x_{p+1}|^{2}-\cdots-|x_{p+q}|^{2}\label{主題2}
\end{align}

と表される。これをエルミート形式$g$のシルヴェスター標準系という。

式($\ref{主題1}$)はユークリッド幾何学の立場における標準系に相当し,式($\ref{主題2}$)はアフィン幾何学の立場における標準系に相当します。シルヴェスター標準系の基底は正規直交系ではないことに注意して下さい。

補足

まず,エルミート形式$g$が式($\ref{主題1}$)の形で表されることを示します。エルミート変換は正規変換であることから,複素数空間におけるテプリッツの定理より,$F$は$V$の適当な正規直交基底に関して対角行列

\begin{align}
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\\
&\ddots&\\
&&\alpha_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}

で表現されます。二次形式の行列による表現より,$g(v)=\ovx^{T}A\vx$となりますので,行列積の定義より式($\ref{主題1}$)が導かれます。

次に,$g$の符号が$(p,q)$であるとき,エルミート形式$g$が式($\ref{主題2}$)の形で表されることを示します。必要があれば番号をつけかえることにより,

\begin{align}
\alpha_{1}&>0,~\cdots,~\alpha_{p}>0\\[0.7em]
\alpha_{p+1}&<0,~\cdots,~\alpha_{p+q}<0\\[0.7em]
\alpha_{p+q+1}&=0,~\cdots,~\alpha_{n}=0
\end{align}

とします。このとき,$j=1,\ldots,p$,$k=p,\ldots,p+q$,$l=p+q+1,\ldots,n$に対し,

\begin{align}
\tilde{v}_{j} &= \frac{1}{\sqrt{a_{j}}}v_{j}\\[0.7em]
\tilde{v}_{k} &= \frac{1}{\sqrt{-a_{k}}}v_{k}\\[0.7em]
\tilde{v}_{l} &= v_{l}
\end{align}

とおけば,$\tilde{v}_{i}$は$v_{i}$の定数倍で定義されるため,$\tilde{\beta}=\{\tilde{v}_{1},\ldots,\tilde{v}_{n}\}$は$V$の基底となります。また,共役双一次形式と線型変換より,$i=1,\ldots,n$に対して

\begin{align}
f(v_{i},v_{i}) = (v_{i}\mid F(v_{i})) = (v_{i}\mid \alpha_{i}v_{i}) = \alpha_{i}(v_{i}\mid v_{i}) = \alpha_{i}
\end{align}

が成り立ちます。したがって,

\begin{align}
g(\tilde{v}_{j}) &= f(\tilde{v}_{j},\tilde{v}_{j}) = f(v_{j}/\sqrt{\alpha_{j}},v_{j}/\sqrt{\alpha_{j}}) = f(v_{j},v_{j})/\alpha_{j} = 1\\[0.7em]
g(\tilde{v}_{k}) &= f(\tilde{v}_{k},\tilde{v}_{k}) = f(v_{k}/\sqrt{-\alpha_{k}},v_{k}/\sqrt{-\alpha_{k}}) = f(v_{k},v_{k})/(-\alpha_{k}) = -1\\[0.7em]
g(\tilde{v}_{l}) &= f(\tilde{v}_{l},\tilde{v}_{l}) = f(v_{l},v_{l}) = \alpha_{l} = 0\\[0.7em]
f(\tilde{v}_{r},\tilde{v}_{s}) &= 0
\end{align}

が成り立ちます。ただし,$r\neq s$とします。したがって,$v\in V$に対し,基底$\tilde{\beta}$に関する座標ベクトルを改めて$\vx=[x_{1},\ldots,x_{n}]$とおけば,$g(v)=f(v,v)$の表現行列の定義より,エルミート形式$g$の表現行列は

\begin{align}
\begin{bmatrix}
1&&&&&&&&\\
&\ddots&&&&&&&\\
&&1&&&&&&\\
&&&-1&&&&&\\
&&&&\ddots&&&&\\
&&&&&-1&&&\\
&&&&&&0&&\\
&&&&&&&\ddots&\\
&&&&&&&&0
\end{bmatrix}
\end{align}

となります。したがって,エルミート形式$g$は式($\ref{主題2}$)の形で表されます。

シェアはこちらからお願いします!
URLをコピーする
URLをコピーしました!

コメント

コメントする

※ Please enter your comments in Japanese to distinguish from spam.

目次
目次
閉じる