本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
共役双一次形式と線型変換
$V$を$\mK$上の$n$次元内積空間とする。$V$上の共役双一次形式$f$と$V$の線型変換$F$に対し,
\begin{align}
f(u,v) &= (u\mid F(v))\label{主題}
\end{align}
f(u,v) &= (u\mid F(v))\label{主題}
\end{align}
が成り立つ。
共役双一次形式と線型変換が一対一対応することを意味しています。
証明
上の主張を示すためには,
- $F$が$V$の線型変換ならば,式($\ref{主題}$)で定義される$f$は共役双一次形式になる
- $F$は$V$上の共役双一次形式ならば,式($\ref{主題}$)で定義される$F$は$V$の線型変換になる
を示す必要があります。まず,$F$が$V$の線型変換であるときに,式($\ref{主題}$)で定義される$f$は共役双一次形式になることを示しましょう。すなわち,式($\ref{主題}$)で定義される$f$が共役双一次形式の定義を満たすことを確認すればよいです。ただし,標準内積のエルミート双一次形式としての性質と$F$の線型性を利用することに注意して下さい。
\begin{align}
f(u+u^{\prime},v) &= (u+u^{\prime}\mid F(v)) = (u\mid F(v))+(u^{\prime}\mid F(v))\\[0.7em]
f(cu,v) &= (cu\mid F(v)) = \oc(u\mid F(v))\\[0.7em]
f(u,v+v^{\prime}) &= (u\mid F(v+v^{\prime})) = (u\mid F(v)+F(v^{\prime})) = (u\mid F(v))+(u\mid F(v^{\prime}))\\[0.7em]
f(u,cv) &= (u\mid F(cv)) = (u\mid cF(v)) = c(u\mid F(v))
\end{align}
f(u+u^{\prime},v) &= (u+u^{\prime}\mid F(v)) = (u\mid F(v))+(u^{\prime}\mid F(v))\\[0.7em]
f(cu,v) &= (cu\mid F(v)) = \oc(u\mid F(v))\\[0.7em]
f(u,v+v^{\prime}) &= (u\mid F(v+v^{\prime})) = (u\mid F(v)+F(v^{\prime})) = (u\mid F(v))+(u\mid F(v^{\prime}))\\[0.7em]
f(u,cv) &= (u\mid F(cv)) = (u\mid cF(v)) = c(u\mid F(v))
\end{align}
したがって,$f$が共役双一次形式になることが示されました。次に,$F$は$V$上の共役双一次形式であるとき,式($\ref{主題}$)で定義される$F$が線型変換になることを示しましょう。$u,v\in V$の座標ベクトルを
\begin{align}
[u]_{\beta} = \vx,\quad [v]_{\beta} = \vy
\end{align}
[u]_{\beta} = \vx,\quad [v]_{\beta} = \vy
\end{align}
とすれば,双一次形式の行列による表現により,
\begin{align}
f(u,v) = \ovx A\vy = (\vx\mid A\vy)
\end{align}
f(u,v) = \ovx A\vy = (\vx\mid A\vy)
\end{align}
が成り立ちます。したがって,基底$\beta$に関して$A$を表現行列にもつ$V$に線型変換を$F$とおけば,座標ベクトルの内積の性質より,
\begin{align}
f(u,v) &= (u\mid F(v))
\end{align}
f(u,v) &= (u\mid F(v))
\end{align}
が成り立ちます。以上の手続きに従うことにより,$F$が一意的に定められることが示されました。
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