本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
線型変換の行列式
$V$を$\mK$上の$n$次元ベクトル空間とし,$F:V\rightarrow V$を線型変換とする。$F$の表現行列の行列式は基底のとり方に関係なく一定であり,これを線型変換$F$の行列式と定義する。
相似な行列の行列式は等しくなるということです。
補足
表現行列の行列式が基底のとり方に関係ないことを証明します。$\alpha,\alpha^{\prime}$を$V$の二つの基底とし,
\begin{align}
[F]_{\alpha} = A,\quad [F]_{\alpha^{\prime}} = A^{\prime}
\end{align}
[F]_{\alpha} = A,\quad [F]_{\alpha^{\prime}} = A^{\prime}
\end{align}
とします。このとき,$\alpha$の要素である$\vp_{1},\ldots,\vp_{n}$を列ベクトルとする$n$次正方行列$P$と,$\alpha^{\prime}$の要素である$\vp^{\prime}_{1},\ldots,\vp^{\prime}_{n}$を列ベクトルとする$n$次正方行列$P^{\prime}$に対し,行列の相似と表現行列より$A^{\prime}=P^{-1}AP$が成り立ちますので,
\begin{align}
\det(A^{\prime}) &= \det(P^{-1})\cdot\det(A)\cdot\det(P)\\[0.7em]
&=\det(P)^{-1}\cdot\det(A)\cdot\det(P)\\[0.7em]
&= \det(A)
\end{align}
\det(A^{\prime}) &= \det(P^{-1})\cdot\det(A)\cdot\det(P)\\[0.7em]
&=\det(P)^{-1}\cdot\det(A)\cdot\det(P)\\[0.7em]
&= \det(A)
\end{align}
となります。ただし,逆行列の行列式の性質を利用しました。
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