【徹底解説】スカラーの合成関数のベクトルによる微分

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

スカラーの合成関数のベクトルによる微分

スカラー$f$は$n$次元縦ベクトル$\vu=(u_{1},\ldots,u_{n})^{T}$の関数とする。$\vu$が$n$次元縦ベクトル$\vx=(x_{1},\ldots,x_{n})^{T}$の関数であるとき,$f$の$\vx$による微分は以下のように表される。

\begin{align}
\frac{\partial f}{\partial \vx} &= \frac{\partial \vu}{\partial \vx}\frac{\partial f}{\partial \vu}
\end{align}

スカラーの合成関数の微分とは異なり,積の順番を変えられない点に要注意です。

証明

$f$が$u_{1},\ldots,u_{n}$の関数であることに注意すると,$f$の全微分は以下のようになります。

\begin{align}
\partial f &= \frac{\partial f}{\partial u_{1}}\partial u_{1}+\cdots+\frac{\partial f}{\partial u_{n}}\partial u_{n} \label{全微分}
\end{align}

まずは,$\vx$の$i$番目の要素による$f$の微分を考えます。両辺を$\partial x_{i}$で割ります。

\begin{align}
\frac{\partial f}{\partial x_{i}} &=
\frac{\partial f}{\partial u_{1}}\frac{\partial u_{1}}{\partial x_{i}}+\cdots+
\frac{\partial f}{\partial u_{n}}\frac{\partial u_{n}}{\partial x_{i}} \\[0.7em]
&= \left(\frac{\partial u_{1}}{\partial x_{i}},\ldots,\frac{\partial u_{n}}{\partial x_{i}}\right)
\left(\frac{\partial f}{\partial u_{1}},\ldots,\frac{\partial f}{\partial u_{n}}\right)^{T} \label{変形前}
\end{align}

ここで,スカラーのベクトルによる微分の定義とベクトルのベクトルによる微分の定義より,式($\ref{変形前}$)は以下のように変形できます。

\begin{align}
\frac{\partial f}{\partial x_{i}} &= \left[\frac{\partial \vu}{\partial \vx}\right]_{i}\left[\frac{\partial f}{\partial \vu}\right]_{i} \\[0.7em]
&= \left[\frac{\partial \vu}{\partial \vx}\frac{\partial f}{\partial \vu}\right]_{i}
\end{align}

ただし,$[\cdot]_{i}$はベクトルの$i$番目の要素を表しています。したがって,スカラーのベクトルによる微分の定義より,以下が成り立ちます。

\begin{align}
\frac{\partial f}{\partial \vx} &= \frac{\partial \vu}{\partial \vx}\frac{\partial f}{\partial \vu}
\end{align}

 

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