はじめに
私が読書を始めたキッカケや他に読んだ書籍については,以下のページにまとめています。
基本情報
| タイトル | キャリアデザイン入門 [I] 基礎力編 |
|---|---|
| 著者 | 大久保幸夫 |
| 出版社 | 日本経済新聞出版社 |
| 発売日 | 2016年03月16日 |
| ページ数 | 176ページ |
概要と感想
本書の目的は,「キャリアデザインの必要性をある程度理解しながらも,まだキャリアの展望がうまくできていないという人々に,具体的な考え方や方法について解説し,キャリアデザインをサポートすること」にある。著者は,キャリアデザインのゴールを「自分らしく仕事をしている状態」,すなわちキャリアに対するフィット感・納得感を得られている状態と定義する。キャリアデザイン学への招待と比較するとやや狭義のキャリア観に思えるが,本書は特にビジネスキャリアに焦点を当てているためだと考えられる。
本書は基礎力編と専門力編に大別されるが,著者は一貫してキャリアを「筏下り」と「山登り」の比喩で説明する。働き始めてからの10〜15年は目の前の仕事にひたすら取り組む筏下り方式をとり,その後は腹決めした専門領域の頂上を目指す山登り方式に移ることでキャリアの成功が見えてくるという。またキャリアには,職務経歴といった客観的側面と自己イメージという主観的側面があり,両者を往復しながら内省と行動を繰り返すことがキャリアデザインであると説く。企業の人事では,「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」,いわゆるWill・Can・Mustを一致させるキャリアが望ましいとされ,個々人はまずこの三つの問いに向き合う必要がある。
著者が独自に構造化した概念として「基礎力」が挙げられる。基礎力とは,対人能力・対自己能力・対課題能力に,処理力と思考力を加えたものと定義される。本書ではこれらを説明するにあたり,EQ・IQg・人間力・コンピテンシーなど既存の概念を参照しつつ整理が試みられている。
一方で,個人的に本書で残念に感じた点もある。第一に,「人生の仕事的側面がキャリアである」と断言している点だ。キャリアには家族や市民性といった非職業的側面も含まれるはずだが,本書ではあたかも仕事だけを指すかのように扱われており,やや違和感を覚えた。第二に,出産や育休といったブランクを否定的に捉えている点である。当時の社会的背景を踏まえれば理解できなくはないが,読後感として「ブランクは作るな」というメッセージが強く,産休や育休が軽視されているように感じられてしまう。また「根拠のない自信」を否定的に扱っている点でも,管理人は根拠のない自信は挑戦を後押しする重要な資源になりうると考えており,見解の相違があった。


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