本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
フロベニウスの定理
$\mK$上の$n$次元ベクトル空間$V$の線型変換$F$の固有値が$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}$ならば,$\mK$上の多項式$\rho(x)$に対して線型変換$\rho(F)$の固有値は$\rho(\alpha_{1}),\ldots,\rho(\alpha_{n})$となる。
本質的には,単なる行列積の演算により証明される定理です。
証明
$F$の固有値を$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}$とすると,三角化定理より$V$の適当な基底$\{v_{1},\ldots,v_{n}\}$に関して$F$は三角行列
\begin{align}
A =
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}
A =
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}
で表現されます。このとき,$\rho(A)$を考えます。いま,$\mK$の元$c_{0},\ldots,c_{r}$に対して多項式$\rho(x)$を
\begin{align}
\rho(x) &= \sum_{k=0}^{r}c_{k}x^{k}
\end{align}
\rho(x) &= \sum_{k=0}^{r}c_{k}x^{k}
\end{align}
とすると,$\rho(A)$は
\begin{align}
\rho(A) &= \sum_{k=0}^{r}c_{k}A^{k}
\end{align}
\rho(A) &= \sum_{k=0}^{r}c_{k}A^{k}
\end{align}
と表されます。ここで,三角行列の積の性質を利用すると,
\begin{align}
A^{k} =
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}^{k}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}^{k}
\end{bmatrix}
\end{align}
A^{k} =
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}^{k}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}^{k}
\end{bmatrix}
\end{align}
が成り立ちます。したがって,$\rho(A)$の第$(i,i)$成分は
\begin{align}
\sum_{k=0}^{r}c_{k}\alpha_{i}^{k} &= \rho(\alpha_{i})
\end{align}
\sum_{k=0}^{r}c_{k}\alpha_{i}^{k} &= \rho(\alpha_{i})
\end{align}
となります。すなわち,$\rho(A)$は以下のように表されます。
\begin{align}
\rho(A) =
\begin{bmatrix}
\rho(\alpha_{1})&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\rho(\alpha_{n})
\end{bmatrix}
\end{align}
\rho(A) =
\begin{bmatrix}
\rho(\alpha_{1})&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\rho(\alpha_{n})
\end{bmatrix}
\end{align}
$\rho(A)$は基底$\beta$に対する$\rho(F)$の表現行列であることに注意すると,三角行列の固有値は対角成分となることから,フロベニウスの定理が示されます。
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