【徹底解説】三角行列の積

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

三角行列の積

$A,B$が$n$次の三角行列

\begin{align}
A =
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}
\end{bmatrix},\quad
B =
\begin{bmatrix}
\beta_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\beta_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}

ならば,積$AB$は三角行列

\begin{align}
AB =
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}\beta_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}\beta_{n}
\end{bmatrix}\label{主題}
\end{align}

となる。

三角行列の積が三角行列となることは頭の片隅に入れておきましょう。

証明

行列積の定義より明らかですが,ここでは帰納法を用いて証明しましょう。$n=1$のときは,明らかに式($\ref{主題}$)は成り立ちます。$A,B$が$n-1$次行列のときに式($\ref{主題}$)が成り立つと仮定します。このとき,列の区分け方と行の区分け方が同じ場合,それらのブロック行列同士の積は通常の行列積と同じように扱えることから,$A,B$の$n-1$次首座小行列を$A_{n-1}$とおくと,積$A_{n-1}B_{n-1}$は式($\ref{主題}$)を満たす三角行列になることから,

\begin{align}
AB &=
\begin{bmatrix}
A_{n-1}&\ast\\
0&\alpha_{n}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
B_{n-1}&\ast\\
0&\beta_{n}
\end{bmatrix} \\[0.7em]
&=
\begin{bmatrix}
A_{n-1}B_{n-1}&\ast\\
0&\alpha_{n}\beta_{n}
\end{bmatrix} \\[0.7em]
&=
\begin{bmatrix}
\alpha_{1}\beta_{1}&&\ast\\
&\ddots&\\
0&&\alpha_{n}\beta_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}

が成り立ちます。したがって,帰納法により任意の$n$に対して式($\ref{主題}$)が成り立つことが示されました。

シェアはこちらからお願いします!

コメント

コメントする

※ Please enter your comments in Japanese to distinguish from spam.

目次