本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
行列の対角化<基底が全て固有ベクトル>
$A$を$n$次元正方行列とする。$A$の固有ベクトルだけで$\mK^{n}$の基底が構成できるならば,それらの縦ベクトルを横に並べた行列$P$は正則行列となり,つぎが成り立つ。
\begin{align}
P^{-1}AP &= \Lambda \label{主題}
\end{align}
P^{-1}AP &= \Lambda \label{主題}
\end{align}
ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表し,$\Lambda$は対角成分に固有値が並ぶ正方行列であり,それぞれの固有値は$P$における同じ列の固有ベクトルに対応する。
学部生で学習する線形代数では,この対角化が一つのゴールとなります。固有値・固有ベクトルの定義と正則の定義を理解する必要があり,行列の対角化は教育的にも非常に良質なテーマになっています。
証明
$A$の各列は$\mK^{n}$の基底であるため一次独立になります。したがって,行列の階数は一次独立な列ベクトルの最大個数であることから$A$はフルランクであり,フルランクな行列は正則であることから$A$は正則になります。また,固有値と固有ベクトルの定義より,
\begin{align}
A\vp_{1}=\lambda_{1}\vp_{1},\quad\ldots\quad A\vp_{n}=\lambda_{n}\vp_{n}
\end{align}
A\vp_{1}=\lambda_{1}\vp_{1},\quad\ldots\quad A\vp_{n}=\lambda_{n}\vp_{n}
\end{align}
が成り立ちます。ただし,$\lambda_{i}$は$\vp_{i}$の固有値とします。すると,$\alpha=\{\vp_{1},\ldots,\vp_{n}\}$に関する$L_{A}$の表現行列は,線型変換の行列表現の定義より,
\begin{align}
[L_{A}]_{\alpha} &=
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} &&O\\
&\ddots&\\
O&&\lambda_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}
[L_{A}]_{\alpha} &=
\begin{bmatrix}
\lambda_{1} &&O\\
&\ddots&\\
O&&\lambda_{n}
\end{bmatrix}
\end{align}
となります。これらを行列の相似と表現行列に適用すると,上の主張が成り立ちます。
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