【徹底解説】確率の性質

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確率の性質

確率$P(\cdot)$は以下を満たす。

  • 空事象$\phi$に対して
    \begin{align}
    P(\phi) &= 0
    \end{align}
  • $A_1, \ldots, A_n$が互いに排反な事象ならば
    \begin{align}
    P(A_i \cup \cdots \cup A_n) &= P(A_1) + \cdots + P(A_n)
    \end{align}
  • 任意の事象$A$に対して
    \begin{align}
    P(A^c) &= 1-P(A)
    \end{align}
  • 任意の事象$A$と$B$に対して
    \begin{align}
    P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)
    \end{align}

ただし,$A^c$は$A$が起きないという事象を表す。

上で挙げていることは全て定理です。私自身,統計学を学び始める前までは,恥ずかしながらこれらの定理を確率の定義だと思っていました。

証明

以下では4つの命題に関してそれぞれ証明をしていきます。

1. の証明

空事象$\phi$は互いに排反です。なぜなら,排反の定義は$P(A \cap B)=\phi$であるからで,空事象同士に適用すると$P(\phi \cap \phi)=\phi$となるからです。すると,確率の定義より,

\begin{align}
P(\phi) &= P(\phi \cup \phi \cup \cdots) \\[0.7em]
&= P(\phi) + P(\phi) + \cdots
\end{align}

となります。この式は,$P(\phi)=0$でなければ成り立ちません。したがって,$P(\phi)=0$です。

2. の証明

これは確率の定義そのままですね。定義式では和の上限はないのですが,今回の性質では$n$個目の事象までを考えています。どうすれば無限遠方と$n$個目のギャップを埋められるかというと,空集合を利用すればいいのです。つまり,$(n+1 \leq i)$なる$i$に対して$A_{i}=\phi$と定めれば,先ほど証明した通り$P(\phi)=0$ですので,確率の定義式から確率の性質($\ref{eq:2}$)を導出できます。

3. の証明

全事象を$\Omega$とすると

\begin{align}
1 &= P(\Omega) \\[0.7em]
&= P(A \cap A^c) \\[0.7em]
&= P(A) + P(A^c)
\end{align}

であるため,$P(A^c)=1-P(A)$が成り立ちます。

4. の証明

ベン図をイメージして式変形していくことで証明できます。

\begin{align}
P(A \cup B) &= P(A) + P(A^c \cap B) \\[0.7em]
&= P(A) + { P(B) - P(A \cap B) } \\[0.7em]
&= P(A) + P(B) - P(A \cap B)
\end{align}

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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