【徹底解説】t分布とベータ分布の関係

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目次

t分布とベータ分布の関係性

以下の確率変数を考える。

\begin{align}
X &\sim t(n) \\[0.7em]
U &= \left( 1+\frac{X^2}{n} \right)^{-1} \label{U}
\end{align}

このとき,

\begin{align}
U &\sim \Be \left( \frac{n}{2}, \frac{1}{2} \right) \label{主題}
\end{align}

となる。

証明

変数変換に逆変換が存在する場合は変数変換の定理を利用することができますが,式($\ref{U}$)には逆変換が存在しないため適用することができません。そこで,カイ二乗分布を導出した際と同様の手続きを考えます。すなわち,$X$の累積分布関数を軸にして$U$が従う確率分布の確率密度関数を導出します。いま,$U$の累積分布関数は

\begin{align}
P(U\leq u) &= P\left\{ \left( 1+\frac{X^2}{n} \right)^{-1} \leq u \right\} \\[0.7em]
&= P(X\leq -a,~a\leq X)
\end{align}

ただし,$0\leq u\leq 1$であることから$u^{-1}-1\geq 0$を利用し,

\begin{align}
a &= \sqrt{n}\left( u^{-1}-1\right)^{1/2}
\end{align}

と置きました。すると,以下のように$U$が従う確率分布の確率密度関数$g(u)$を計算することができます。

\begin{align}
g(u) &= \frac{d}{du} P(X\leq -a,~a\leq X) \\[0.7em]
&= \frac{d}{du}\left(\int_{-\infty}^{-a}f(x)dx + \int_{a}^{\infty}f(x)dx\right) \label{1}\\[0.7em]
&= 2\frac{d}{du}\int_{a}^{\infty}f(x)dx\label{2}\\[0.7em]
&= 2\frac{d}{du}\left\{1-F(a)\right\} \\[0.7em]
&= -2f(a)\cdot \frac{da}{du} \\[0.7em]
&= -2f(a)\cdot \frac{\sqrt{n}}{2}\left(-u^{-2}\right)\left(u^{-1}-1\right)^{-1/2} \\[0.7em]
&= f(a)\cdot \sqrt{n}u^{-3/2}\left(1-u\right)^{1/2-1} \\[0.7em]
&= \frac{1}{\sqrt{n}B(n/2, 1/2)}u^{(n+1)/2}\cdot \sqrt{n}u^{-3/2}\left(1-u\right)^{1/2-1} \\[0.7em]
&= \frac{1}{B(n/2, 1/2)}u^{n/2-1}\left(1-u\right)^{1/2-1} \label{Be}
\end{align}

ただし,t分布の確率密度関数を$f$,原始関数の一つを$F$と書き,式($\ref{1}$)から式($\ref{2}$)はt分布の確率密度関数$f$が奇関数であることを利用しました。式($\ref{Be}$)はベータ分布$\Be(n/2,1/2)$の確率密度関数ですので,式($\ref{主題}$)を示すことができました。

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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