統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。
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問題
統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。
解答
カイ二乗分布とコーシー分布に関する出題でした。
(1)
$V$から$Z$を一意に定めることはできず,逆関数は存在しないため,$V$の累積分布関数から確率密度関数を求める。累積分布関数の定義より,
P(Z^{2}\leq v) &= P(-\sqrt{v}\leq Z\leq \sqrt{v})
\end{align}
となるため,
f(v) &= \frac{d}{dv}P(-\sqrt{v}\leq Z\leq \sqrt{v})
= \frac{d}{dv}\int_{-\sqrt{v}}^{\sqrt{v}}\varphi(z)dz
= \frac{d}{dv}\left\{F(\sqrt{v})-F(-\sqrt{v})\right\}\\[0.7em]
&= \frac{f(\sqrt{v})}{2\sqrt{v}}+\frac{f(-\sqrt{v})}{2\sqrt{v}}
= \frac{f(\sqrt{v})}{2\sqrt{v}}+\frac{f(\sqrt{v})}{2\sqrt{v}}
= \frac{f(\sqrt{v})}{\sqrt{v}}
= \frac{1}{\sqrt{2\pi v}}e^{-v/2}
\end{align}
が得られる。
(2)
F分布の導出に従えばよいが,今回は自由度$(1,1)$の$F$分布となるため,同時確率密度関数に対する変数変換を用いて$g(s)$を求める。$X$と$Y$の確率密度関数は小問(1)の$f$となるため,
f(x,y)
&= \left(\frac{1}{\sqrt{2\pi x}}e^{-x/2}\right)\left(\frac{1}{\sqrt{2\pi y}}e^{-y/2}\right)
= \frac{1}{2\pi\sqrt{xy}}e^{-(x+y)/2}
\end{align}
が得られる。ここで,
\begin{cases}
s = x/y\\[0.7em]
u=y
\end{cases}
を考えると,逆変換は$x=su,~y=u$となるため,$u>0$に注意するとヤコビアンは
J &=
\abs\left(
\begin{vmatrix}
\partial x/\partial s&\partial x/\partial u\\
\partial y/\partial s&\partial y/\partial u
\end{vmatrix}
\right)
=
\abs\left(
\begin{vmatrix}
u&s\\
0&1
\end{vmatrix}
\right)
= u
\end{align}
となる。したがって,
g(s)
&= \int_{-\infty}^{\infty}f(s,u)udu
= \int_{0}^{\infty}\frac{1}{2\pi\sqrt{su^{2}}}e^{-(1+s)u/2}udu\\[0.7em]
&= \frac{1}{2\pi\sqrt{s}}\left[-\frac{1}{(1+s)/2}e^{-(1+s)u/2}\right]_{0}^{\infty}
= \frac{1}{\pi\sqrt{s}}\frac{1}{1+s}
\end{align}
が得られる。
(3)
与えられた確率変数$T$を変形すると
T &= \frac{1}{2}\left(\sqrt{\frac{x}{y}}-\sqrt{\frac{y}{x}}\right)
\end{align}
となることから,ヒントの通り$s=x/y=\tan^{2}\theta$とおくことを考えると,
t
&= \frac{1}{2}\left(\tan\theta-\frac{1}{\tan\theta}\right)
= \frac{\sin^{2}\theta-\cos^{2}\theta}{2\sin\theta\cos\theta}
= -\frac{\cos2\theta}{\sin2\theta}\label{3_1}
\end{align}
が得られる。いま,変数変換($\ref{3_1}$)のヤコビアンは
\abs\left(\frac{dt}{d\theta}\right) &= \abs\left(-\frac{-2\sin^{2}2\theta-2\cos^{2}2\theta}{\sin^{2}2\theta}\right) = \frac{2}{\sin^{2}2\theta}
\end{align}
となるため,$\theta$の確率密度関数を$I(\theta)$とおくと,
h(t(\theta)) &= I(\theta)~\abs\left(\frac{d\theta}{dt}\right)
= I(\theta)\frac{\sin^{2}2\theta}{2}
\end{align}
となる。ただし,式($\ref{3_1}$)より$t$は$\theta$の関数であるため$t(\theta)$とおいた。ここで,$s=\tan^{2}\theta$のヤコビアンは
\abs\left(\frac{ds}{d\theta}\right) &= \frac{2\tan\theta}{\cos^{2}\theta}
\end{align}
となることに注意すると,$I(\theta)$は
I(\theta) &= g(s)\frac{2\tan\theta}{\cos^{2}\theta}
= \frac{1}{\pi\tan\theta}\frac{1}{1+\tan^{2}\theta}\frac{2\tan\theta}{\cos^{2}\theta}
= \frac{2}{\pi}
\end{align}
となるため,
h(t(\theta)) &= \frac{2}{\pi}\frac{\sin^{2}2\theta}{2} = \frac{\sin^{2}2\theta}{\pi}
\end{align}
が得られる。$h(t(\theta))$を$t$だけで表すには$\sin^{2}2\theta$を$t$で表せばよい。式($\ref{3_1}$)に注目して$t^{2}$を計算してみると
t^{2} &= \frac{\cos^{2}2\theta}{\sin^{2}2\theta}
= \frac{1-\sin^{2}2\theta}{\sin^{2}2\theta}
= \frac{1}{\sin^{2}2\theta}-1
\end{align}
となるため,$\sin^{2}2\theta=1/(1+t^{2})$となる。以上より,
h(t) &= \frac{\sin^{2}2\theta}{\pi} = \frac{1}{\pi(1+t^{2})}
\end{align}
が得られる。
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