【過去問解答】2014年統計検定1級<統計数理3>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

不適切な内容があれば,記事下のコメント欄またはお問い合わせフォームよりご連絡下さい。

目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

$t$分布信頼区間の上下限に関する出題でした。公式解答にもある通り,本問では「体積と重さは独立である」という強い仮定を置いています。一般的には,大きな体積のサンプルほど重さも大きくなるはずで,体積と重さには相関があると考えるのが普通ですが,今回は「各サンプルの体積はほぼ同じであり,体積と重さのばらつきは互いに独立な測定誤差のみに起因する」というスタンスの問題となっています。

(1)

検定方式として用いる統計量は,正規性の仮定を踏まえて標本平均を用いるのが素直である。いま,

\begin{align}
\barX = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}X_{i}, \quad\barY = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}Y_{i},\quad \bar{U} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}U_{i} = \barY-\beta\barX
\end{align}

とおくと,分散が既知の場合は,正規性の仮定と独立性の仮定より

\begin{align}
E[\barU] = E[\barY]-\beta E[\barX] = 0,\quad V[\barU] = V[\barY]+\beta^{2}V[\barX] = \frac{\sigma_{Y}^{2}+\beta^{2}\sigma_{X}^{2}}{n}
\end{align}

となる。正規分布の再生性より$\barU$もまた正規分布に従うため,$\barU\sim\N(0,(\sigma_{Y}^{2}+\beta^{2}\sigma_{X}^{2})/n)$となる。そこで,帰無仮説$H_{0}$のもとで$\barU$を標準化した確率変数を$Z$とおくと,

\begin{align}
Z &= \frac{\barY-\beta_{0}\barX}{\sqrt{(\sigma_{Y}^{2}+\beta^{2}\sigma_{X}^{2})/n}}\sim\N(0,1)\label{Z}
\end{align}

となる。以上より,$Z$の実現値を$z^{\ast}$とおくと,有意水準$\alpha$の両側検定の棄却域は$|z^{\ast}|\geq z(\alpha/2)$である。分散が未知の場合は,$Z$の定義において標本分散を不偏分散$S^{2}$に置き換えた確率変数$T$が自由度$n-1$の$t$分布に従うことを利用すればよい。すなわち,

\begin{align}
S^{2} &= \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(U_{i}-\bar{U})^{2},\quad T = \frac{\barY-\beta_{0}\barX}{S/\sqrt{n}}\label{T}
\end{align}

に対し,$T$の実現値を$t^{\ast}$とおくと,有意水準$\alpha$の両側検定の棄却域は$|t^{\ast}|\geq t_{n-1}(\alpha/2)$である。

標本分散を不偏分散に置き換えた$T$が$t$分布に従う理由は,t分布の定義そのものです。

(2)

信頼係数$1-\alpha$の信頼区間は有意水準$\alpha$の棄却域の補集合となるため,小問(1)で得られた棄却域の上下限を求めればよい。分散が既知の場合は,式($\ref{Z}$)で$\beta_{0}=\beta$に戻した上で$\beta$に関する方程式として解くことで,

\begin{align}
\beta &= \frac{n\barX\barY\pm\sqrt{(n\barX\barY)^{2}-(n\barX^{2}-z(\alpha/2)^{2}\sigma_{X}^{2})(n\barY^{2}-z(\alpha/2)^{2}\sigma_{Y}^{2})}}{n\barX^{2}-z(\alpha/2)^{2}\sigma_{X}^{2}}
\end{align}

が得られる。ただし,$n$が十分大きいときは$n\gg\sigma_{X}^{2}$となり分母$\neq 0$となることを利用した。分散が未知の場合は,$\sigma^{2}_{X}$の代わりに$S_{X}^{2}$,$\sigma^{2}_{Y}$の代わりに$S_{Y}^{2}$,$z(\alpha/2)$の代わりに$t_{n-1}(\alpha/2)$を用いればよい。ただし,$\sigma^{2}_{X}$と$\sigma^{2}_{Y}$の置き換えは,$S^{2}$が

\begin{align}
S^{2}
&= \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}\left\{(Y_{i}-\beta X_{i})-(\barY-\beta\barX)\right\}^{2}
= \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}\left\{(Y_{i}- \barY)-\beta(X_{i}-\barX)\right\}^{2}\\[0.7em]
&= \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(Y_{i}- \barY)^{2}
+\beta^{2}\frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(X_{i}-\barX)^{2}
-\frac{2\beta}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(Y_{i}-\barY)(X_{i}-\barX)
\end{align}

と変形され,$X_{i}$と$Y_{i}$は互いに独立であることから無相関となり第三項目が無視でき,結局

\begin{align}
S^{2} \simeq S_{X}^{2}+S_{Y}^{2}
\end{align}

となることを利用した。

独立と無相関の関係もご参照ください。

上の解答の他にも,$\beta$の定義に注目して$\beta$の推定量を$\hat{\beta}=\barY/\barX$とおけば,$S^{2}$の推定量は

\begin{align}
\hat{S}^{2} &= \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}\left\{(Y_{i}-\hat{\beta}X_{i})-(\barY-\hat{\beta}\barX)\right\}^{2}
= \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^{n}(Y_{i}-\beta X_{i})^{2}
\end{align}

と計算できるため,$T$においてこの値を$S^{2}$の代わりに用い,式($\ref{T}$)で$\beta_{0}=\beta$に戻した上で$\beta$に関する方程式として解くことで,

\begin{align}
\beta &= \frac{\barY}{\barX}\pm t_{n-1}(\alpha/2)\frac{\hat{S}}{\sqrt{n}\barX}
\end{align}

とすることもできます。

シェアはこちらからお願いします!

コメント

コメントする

※ Please enter your comments in Japanese to distinguish from spam.

目次