【徹底解説】ガンマ関数と多重積分

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ガンマ関数と多重積分

以下の多重積分は,ガンマ関数を用いて表すことができる。

\begin{align}
\int_{D} x_1^{\alpha_1-1} x_2^{\alpha_2-1}\ldots x_K^{\alpha_K-1} dx_1\ldots dx_{K-1}
&= \frac{\Gamma(\alpha_1)\ldots \Gamma(\alpha_K)}{\Gamma(\alpha_1+\ldots+\alpha_K)} \label{ガンマ関数と多重積分}
\end{align}

ただし,$k=1,\ldots,K-1$に対して,

\begin{align}
p_k &\geq 0 \label{inq} \\[0.7em]
\sum_{k=1}^{K} p_k &= 1 \label{sum}
\end{align}

であり,$D$は式($\ref{inq}$)かつ式($\ref{sum}$)を満たす$p_1,\ldots,p_{K-1}$の積分範囲を表し,ガンマ関数は以下のように定義される。

\begin{align}
\Gamma(\alpha) &= \int_{0}^{\infty} t^{\alpha-1}e^{-t}dt
\end{align}

証明

最初に注意するべきなのは,$p_1+\ldots+p_K=1$という制約式があるために,独立な変数は$K-1$個になる点です。そのため,積分も$K-1$個の$p_1,\ldots,p_{K-1}$に対して行っています。

式($\ref{ガンマ関数と多重積分}$)右辺の分子に注目して,ガンマ関数の積を考えます。

\begin{align}
\Gamma(x_1)\ldots \Gamma(x_K)
&= \int_0^{\infty} e^{-t_1}t_1^{x_1-1}dt_1 \ldots
\int_0^{\infty} e^{-t_K}t_K^{x_K-1}dt_K\\[0.7em]
&= \int_0^{\infty} \ldots \int_0^{\infty}
e^{-t_1\ldots -t_K}t_1^{x_1-1}\ldots t_n^{x_K-1} dt_1\ldots dt_K \label{変数変換前のディリクレ分布}
\end{align}

ここで,$t$を二つの確率変数の積に分解します。こうすることで,式($\ref{変数変換前のディリクレ分布}$)から式($\ref{ガンマ関数と多重積分}$)の左辺に表れている多重積分を抽出することができます。今回は,$t_1,\ldots,t_K$に代わる変数として,$p_1, \ldots, p_K$を用意します。ただし,$k=1,\ldots,K$に対し,$p_k \geq 0$かつ

\begin{align}
\sum_{k=1}^{K}p_k &= 1 \label{パラメータ}
\end{align}

を満たすように設定します。ここで,やや天下り的ですが,

\begin{align}
t_k &= p_k y
\end{align}

と変数変換します。ただし,式($\ref{パラメータ}$)を満たすように

\begin{align}
p_K &= 1-p_1-\ldots-p_{K-1}
\end{align}

とおきます。このとき,ヤコビアンは以下のように計算できます。

\begin{align}
J &=
\abs \begin{vmatrix}
\partial t_1 / \partial p_1 & \ldots & \partial t_1 / \partial p_{K-1} & \partial t_1 / \partial y \\
\vdots & \ddots & \vdots & \vdots \\
\partial t_{K-1} / \partial p_1 & \ldots & \partial t_{K-1} / \partial p_{K-1} & \partial t_{K-1} / \partial y \\
\partial t_{K} / \partial p_1 & \ldots & \partial t_{K} / \partial p_{K-1} & \partial t_{K} / \partial y \
\end{vmatrix} \\[0.7em]
&=
\abs \begin{vmatrix}
y & \ldots & 0 & p_1 \\
\vdots & \ddots & \vdots & \vdots \\
0 & \ldots & y & p_{K-1} \\
-y & \ldots & -y & p_{K} \\
\end{vmatrix}\label{1}\\[0.7em]
&=
\abs \begin{vmatrix}
y & \ldots & 0 & p_1 \\
\vdots & \ddots & \vdots & \vdots \\
0 & \ldots & y & p_{K-1} \\
0 & \ldots & 0 & 1 \\
\end{vmatrix}\label{2}\\[0.7em]
&= y^{K-1}\label{3}
\end{align}

ただし,$|\cdot|$は行列式,$\abs$は絶対値を表します。式($\ref{1}$)から式($\ref{2}$)は,第一行から第$K-1$行を第$K$行に加えて$\sum_k p_k=1$を利用しました。式($\ref{2}$)から式($\ref{3}$)は,上三角行列の行列式が対角成分の積で表されることを利用しました。

$\sum_k p_k=1$かつ$p_k \geq 0$の条件に注意すると,変数$p_k$の積分範囲は$p_k \geq 0$かつ$\sum_{k}p_k \leq 1$となります。この積分範囲を,便宜上$D$とおきます。$t_k=p_ky$という形と$t_k \in [0,\infty]$,$p_k\in[0,1]$であることから,$y$の積分範囲は$[0, \infty]$となることが分かります。すると,確率変数の変数変換より,式(\ref{変数変換前のディリクレ分布})は以下のように式変形できます。

\begin{align}
&\int_{0}^{\infty}
e^{-y}y^{x_1+\ldots+x_K-K}y^{K-1}dy
\cdot
\int_{D}p_1^{x_1-1}\ldots p_{K}^{x_K-1}dp_1\ldots dp_{K-1}\\[0.7em]
&= \Gamma(x_1 + \ldots + x_K)\cdot \int_{D} p_1^{x_1-1} \ldots p_n^{x_K-1} dp_1\ldots dp_{K-1}
\end{align}

以上で,式(\ref{ガンマ関数と多重積分})の証明が完了しました。

参考文献

本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。

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