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一様最強力検定
$\delta$を有意水準$\alpha$の任意の検定関数とする。すなわち,すべてのパラメータ$\theta\in\Theta_{0}$に対して$\beta_{\delta}(\theta)\leq\alpha$とする。ただし,$\Theta_{0}$は帰無仮説の母数空間,$\beta_{\delta}(\theta)$は検出力関数とする。このとき,すべての$\theta\in\Theta_{1}$に対し
\beta_{\delta^{\ast}}(\theta)\geq\beta_{\delta}(\theta)\label{主題}
\end{align}
が成り立つならば,検定関数$\delta^{\ast}$は一様最強力検定である。ただし,$\Theta_{1}$は対立仮説の母数空間を表す。
伝統的な統計学の立場では,第一種の過誤確率を一定の値$\alpha$以下に抑えた上で,第二種の過誤確率を最小化するのでした。第一種の過誤確率は,$\theta\in\Theta_{0}$に対する検出力関数$\beta_{\delta}(\theta)$のことを表していましたが,第二種の過誤確率は$\theta\in\Theta_{1}$に対する検出力関数$\beta_{\delta}(\theta)$を用いて$1-\beta_{\delta}(\theta)$と表すことができるのでした。母数$\theta$が属する母数空間が異なる点に注意してください。これらを踏まえると,第二種の過誤確率を最小化するということは,$\theta\in\Theta_{1}$に対する検出力関数$\beta_{\delta}(\theta)$を最大化することに相当するため,式($\ref{主題}$)のような定義が現れたのです。一様最強力検定は英語ではuniformly most powerful testと表されるため,頭文字を取ってUMP testとよばれることもあります。また,対立仮説が単純仮説,すなわち対立仮説の母数空間の要素数が$1$のとき,一様最強力検定は単に最強力検定とよばれます。
参考文献
本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。
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