本記事は「これなら分かる!はじめての数理統計学」シリーズに含まれます。
不適切な内容があれば,記事下のコメント欄またはお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
目次
検出力関数と検出力
決定関数$\delta(X)$のパラメータ$\theta$に関する期待値を検出力関数といい,検出力関数の値を検出力という。すなわち,
\begin{align}
\beta_{\delta}(\theta) &= E_{\theta}\left[\delta(X)\right] = P_{\theta}(\delta(X)=1)
\end{align}
\beta_{\delta}(\theta) &= E_{\theta}\left[\delta(X)\right] = P_{\theta}(\delta(X)=1)
\end{align}
を検出力関数といい,$\beta_{\delta}(\theta)$の値を検出力という。
検出力は対立仮説が真である場合に帰無仮説を棄却する確率のこと,すなわち帰無仮説が偽であることを「検出する」確率を指します。したがって,$\theta\in\Theta_{0}$に対して$\beta_{\delta}(\theta)$は第一種の過誤確率となります。
補足
まず,検出力が$P_{\theta}(\delta(X)=1)$と表されることを確認しておきます。$\delta(X)$が受容$0$,棄却$1$の二値をとる関数であることに注意すると,
\begin{align}
E_{\theta}\left[\delta(X)\right] &= 0\times P_{\theta}(\delta(X)=0)+1\times P_{\theta}(\delta(X)=1) = P_{\theta}(\delta(X)=1)
\end{align}
E_{\theta}\left[\delta(X)\right] &= 0\times P_{\theta}(\delta(X)=0)+1\times P_{\theta}(\delta(X)=1) = P_{\theta}(\delta(X)=1)
\end{align}
となります。
実は,この式変形は第一種の過誤と第二種の過誤が$0$-$1$損失関数$L$のリスク関数$R$に出現する際にも登場しています。本記事における決定関数$\delta$を損失関数$L$と読みかえれば同様の議論が可能だからです。
ここで,$\delta$のリスク関数は
\begin{align}
R(\theta,\delta) &=
\begin{cases}
\beta_{\delta}(\theta),&\if\quad\theta\in\Theta_{0}\\[0.7em]
1-\beta_{\delta}(\theta),&\if\quad\theta\in\Theta_{1}
\end{cases}
\end{align}
R(\theta,\delta) &=
\begin{cases}
\beta_{\delta}(\theta),&\if\quad\theta\in\Theta_{0}\\[0.7em]
1-\beta_{\delta}(\theta),&\if\quad\theta\in\Theta_{1}
\end{cases}
\end{align}
と検出力関数を用いて表されますので,決定関数のリスク関数を用いることと検出力関数を用いることは本質的に同じことが分かります。これは,検出力関数が期待値を用いて定義されているからです。
参考文献
本稿の執筆にあたり参考にした文献は,以下でリストアップしております。
コメント