本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
整数問題
合同式 を解く方針を説明せよ
pell方程式について述べよ
オイラーの定理を述べよ
オイラー関数の計算方法について述べよ
と与えられているならば,
と計算できる。
オイラーの関数の代表的な性質を2つ挙げよ
- 素数
に対して - 互いに素な自然数
に対して
オイラーの定理を利用できる例題を考えよ
例えば
となり,
であることから,
と求めることができる。
種々の計算
の因数の候補を説明せよ
を満たす を求めよ
ド・モアブルの定理より
となる。感覚的に
を簡単にする方法を説明せよ
とおいて両辺を
とおいて両辺を
を因数分解せよ
対称式で表したい場合は,さらに
と表せる。
を因数分解せよ
対称式で表したい場合は,さらに
と表せる。
を基本対称式で表せ
を基本対称式で表せ
を基本対称式で表せ
を因数分解せよ
において
の解と係数の関係を述べよ
を因数分解せよ
因数定理より
が得られる。同様に
が得られる。
で を で割るときの余りを求めよ
因数定理より
が得られる。
となる。これを
となるため,求める答えは
を因数分解せよ
定数項に関して平方完成すると和と差の積で表されるタイプの因数分解。
特性方程式が異なる解をもつ三項間漸化式の解き方を説明せよ
特性方程式の解を
と表される。
特性方程式が重解をもつ三項間漸化式の解き方を説明せよ
特性方程式の重解を
と表される。
線形代数
ある行列を対称行列と交代行列で表すときの方針を述べよ
対称行列と交代行列をそれぞれ文字で置いて両辺を転置する。
行列の 乗で二項定理を利用するときの注意点を述べよ
行列が可換(
対称性の見える行列の行列式を求める際に思い浮かべる方針を述べよ
に対し,転置を左から掛けると
となるため,
「 を求めよ」という問題のテクニックを述べよ
行列式で登場する項であるため,両辺の行列式をとる操作が有効な場合がある。例えば,
という等式において,両辺の行列式を取ると
となるため,
任意の内積空間においてノルムを求める方法を述べよ
自分自身との内積を計算すればよい。例えば内積として
が定義されていた場合は,
複素数の回転について述べよ
複素数
回帰直線の方程式を述べよ
相関係数が傾きとなり,標準偏差でスケールすると覚えてしまうとよい。導出は少し面倒。
微分積分
を求めよ
ネイピア数 の定義を述べよ
括弧の中は足し算であることに十分注意する。
スターリングの公式を述べよ
例えば,
のように用いる。ただし,
を述べよ
を述べよ
双曲線関数の定義を述べよ
ダランベールの収束判定法を述べよ
数列
が存在するとき,
収束半径の定義を述べよ
べき級数
が存在するとき,
ダランベールの収束判定法と収束半径の違いを説明せよ
が存在するとき,この結果が
であれば
となるため絶対収束する。ゆえに,
が収束半径となる。「
項別微分の条件を述べよ
収束半径を
が存在するならば,
を求めよ
分母の
とおくと,
となるため,積分すれば
三角関数と多項式関数が混合した極限の求め方について述べよ
三角関数をマクローリン展開して多項式近似する。
部分分数分解の分母の候補について述べよ
例えば
を述べよ
係数に
を述べよ
を述べよ
係数に
三角関数の積分で手詰まりになった際に利用する変換公式を述べよ
とおくことにより,
より
の求め方を説明せよ
積分区間に被積分関数の特異点を含むため,
のように広義積分を計算すればよい。
微分方程式
微分方程式の大分類を述べよ
- 定数係数非同次微分方程式
- 完全微分方程式
- 非同次オイラー方程式
微分方程式の分類を小分類を述べよ
定数係数非同次微分方程式がさらに細かく分かれる。
- 変数分離形
- 同次形
- 一階線形
- ベルヌーイ形
- 完全微分方程式
- 二階同次線形
- 二階非同次線形
- オイラーの微分方程式
- クレローの微分方程式
- ラグランジュの微分方程式
- リッカチの微分方程式
の解法を述べよ
変数分離形。
の解法を述べよ
変数分離形。
の解法を述べよ
同次形。
の解法を述べよ
一階非同次線形。両辺に
の解法を述べよ
ベルヌーイの微分方程式。両辺を
の解法を述べよ
全微分方程式。
の解法を述べよ
二階非同次線形。
- 異なる2つの実数が解のとき:
- 重解のとき:
- 虚数解をもつとき:
の解法を述べよ
オイラーの微分方程式。
のとき の解法を述べよ
クレローの微分方程式。両辺を
のとき の解法を述べよ
ラグランジュ(ダランベール)の微分方程式。両辺を
の解法を述べよ
リッカチの微分方程式。
変数分離系における絶対値の外し方を説明せよ
変数分離系では
のように
確率統計
基本操作
チェビシェフの不等式を述べよ
チェビシェフの不等式を利用する問題の例を1つ挙げよ
サイコロを900回振ったとき,6の目が出る回数は80%以上の確率で何回になると考えられるか。この問題では
となります。この右辺が0.8となる
区間推定
区間推定の大分類と小分類を述べよ
- 母集団が正規分布
- 母集団がベルヌーイ分布
母集団が正規分布の平均を区間推定する解法を述べよ
- 母分散が既知の場合
-
- 母分散が未知の場合
-
ただし,
母集団が正規分布の平均の差を区間推定する解法を述べよ
- 母分散が既知の場合
-
- 母分散が未知の場合
-
ただし,
母集団が正規分布の分散を区間推定する解法を述べよ
- 母平均が既知の場合
-
- 母平均が未知の場合
-
母集団がベルヌーイ分布の母比率平均を区間推定する解法を述べよ
ただし,
母集団がベルヌーイ分布の母比率平均の差を区間推定する解法を述べよ
ただし,
母相関係数の信頼区間を区間推定する解法を述べよ
ただし,
検定
検定の大分類と小分類を述べよ
- 母集団が正規分布
- 母集団がベルヌーイ分布
- 母集団がポアソン分布
- 母集団が
分布
母集団が分布のポアソン分布の平均を検定する解法を述べよ
母集団が 分布の適合度を検定する解法を述べよ
分子は理論値とのズレ,分母は理論値と覚える。
母集団が 分布の独立性を検定する解法を述べよ
こちらも分子は理論値とのズレ,分母は理論値と覚える。
母集団が正規分布の等分散性を区間推定する解法を述べよ
- 母平均が未知の場合
-
無相関を検定する解法を述べよ
ただし,
母相関係数を検定する解放を述べよ
とおいたときに,
母相関係数の差を検定する解放を述べよ
とおいたときに,
引っかかりポイント
の求め方を説明せよ
数検1級の範囲では,以下のディリクレ積分が与えられる。
ここで,早とちりして
としないこと。両辺を
となる。正しくは,部分積分を用いて
となるが,ここでも早とちりして
としないこと。
となる。
のアプローチを説明せよ
部分分数分解を疑う。分母は
の収束先はどのように記述すればよいか
極限を用いて記述する。
となる。
を求めよ( )
となり,
を見て思い出すことは何か
となるため,
となること。
の求め方を説明せよ
で
二重根号の解答について注意点は何か
二重根号のまま解答せず,二重根号を外して解答するべき点
行列の階数を行列式から求める方法を説明せよ
行列の階数は小行列式の最大次数となる。ただし,最大次数が
例えば
で
小行列式は首座小行列式とは限りません。行番号と列番号を適当に選べます。
係数行列と拡大係数行列の階数により連立方程式の解を判別せよ
- 係数行列と拡大係数行列の階数が等しい場合:解が存在する(不定形含む)
- 係数行列と拡大係数行列の階数が等しくない場合:解が存在しない
「この数は 次の代数方程式の解の つです」系の問題の解き方を説明せよ
与式を
が
という関係式が得られる。これにより
複雑な 乗根が与えられたときの対応について説明せよ
与式を
が与えられたときに,これを
と求められる。与式がこの
の中身が複雑なときの対応について説明せよ
公式
を利用する。例えば
のように用いる。
を解け
因数分解すると
となるため,
となる。決して
を求めよ
とおくと,
が得られる。
に対し の収束を判定せよ
コーシーの積分判定法により
となるため発散する。
となるため発散する。
となるため収束する。
行列式を二つの行列式に分解する際の注意点を述べよ
セルだけで考えずに,行もしくは列セットで考えること。具体的には,
とせずに,
としなければならない。
を求めよ
とおくと,
となるため,
となる。
オイラー定数を説明せよ
の求め方を説明せよ
いずれも
を有理化して分数の極限を考えればよい。
ルートをとるときの注意点
実数の議論をしている場合はルートをとる前に正であることを確認する。例えば,
とするときには
コーシーシュワルツの不等式とその活用方法を説明せよ
任意の正の整数
が成り立つ。ただし,等号成立条件は
これは例えば
となるため,
のとき,すなわち
となるため,
のとき,すなわち
片方の変数に関して複雑な累次積分の注意点を述べよ
積分領域を図示して必ず簡単な順序で行う。例えば,
は
と簡単に計算できる。
極座標変換の注意点を述べよ
ヤコビアン
狙われる可能性は低いポイント
極方程式 は何を表すか
原点
極方程式 は何を表すか
中心が
極方程式 は何を表すか
正葉線。「+」を半時計回りに
極方程式 は何を表すか
カージオイド。いわゆる心臓形である。極方程式を覚える必要はないが,この極方程式が与えられた際に図形を描けるようになる必要がある。
極方程式 は何を表すか
レムニスケート。
極方程式で表された図形の面積の求め方を述べよ
曲線の長さの求め方を述べよ
ただし,途中の変形では
曲面積の求め方を述べよ
曲線とは異なり平行四辺形の微小面積から求められます。
の求め方を説明せよ
とおいて部分積分を適用して
ガウス積分を述べよ
2変数関数の極値に関して説明せよ
- 偏導関数の値が全て
でヘッセ行列が正定値ならば極小値 - 偏導関数の値が全て
でヘッセ行列が負定値ならば極大値 - 偏導関数の値が全て
でヘッセ行列が不定値ならば鞍点 - 偏導関数の値が全て
でヘッセ行列が正定値または半負定値ならば極値判定不能
包絡線の求め方を述べよ
パラメータを変数とみなして偏微分をして偏導関数が
3重積分の極座標変換とヤコビアンを述べよ
とおくとき,ヤコビアンは
となる。
積分における特異点の処理について述べよ
積分範囲で被積分関数が発散した場合には適当な変数に置き換えて広義積分を利用する
内積が満たすべき性質を述べよ
ならば
を確認すればよい。
球面積の公式を述べよ
球の体積の公式である
懺悔集
- 「最大」と「最小」を読み間違えた
-
連立合同式
を満たす
未満の整数 のうち最大のものを求めよという問題で「最小」を答えてしまった。わざわざ 未満と書いてあることは目に入ったが最小を求めていることに疑いを持てなかった。 - 固有方程式を頭の中で計算してサラスの公式の後半に
を入れるのを忘れた -
の固有値を求める際に,サラスの公式を頭の中で計算したことにより,
としてしまい,固有方程式の解が求められなかった。この懺悔から学べる点としては
はしっかり手を動かして書くこと- 固有方程式の解が見つからない場合は固有方程式自体を疑うこと
- 行基本変形を用いた余因子展開により検算すること
が挙げられる。特に
をしっかり書いて固有値・固有ベクトルが見つかれば,実質検算できていることになる。1.が本当に大切である。
- 一階線形微分方程式で左辺をはらった後に右辺の積分定数を加えた
-
一階線形微分方程式である
において,両辺に
をかけてとし,両辺を
で積分してとするまではよかったが,両辺に
をかけてとしてしまった。これは,積分定数を頭の中で付け加えていたから起きてしまった間違いであり,やはり途中式は省略せずに全て記述するように心がけた方がよい。
- 母集団のサイズとサンプルサイズを混同した
-
「
人のうち 人を無作為に抽出し…」という文章を読んで 人をサンプルサイズだと勘違いしてしまった。 人がサンプルサイズで だ。 という母集団のサイズは使わないこともあるため注意。 - カルダノの公式で
の必要条件を求めるフェーズで手が止まった -
で
とおいてまでは変形できたが,
が思い浮かばなかった。同値変形ではなく必要条件に舵を切って代数学の基本定理により十分性を担保するという流れが染み付いていなかった。
は和に関する条件なので ではなく に関する条件を抽出する点も難しい。 の項は無視してしまう感覚を何回も味わっておくとよい。 - 微分方程式で置換しても綺麗な形にならなそうだからといって置換を諦めた
-
積分の問題であれば置換後の結果はある程度綺麗になっていないと意味がない。しかし,微分方程式であれば置換の結果が多少汚くとも解くことができる可能性が高い。具体的には,
という式に対し,明らかに
というブロックが見えるのに の項が消えなさそうだからといって置換の計算を試さなかった。 とおいて を消去すればの変数分離系に帰着した。
- 二次合同式で
を付け忘れた -
下記の二次合同式
で
と の公倍数が であることに注目して とおくととなるが,ここで
としてしまった。正しくは である。
コメント
コメント一覧 (2件)
(63)の特異点は なので として積分区間を , , の3つに分けなきゃいけないのでは。
いとう様
ご指摘ありがとうございます。問題の積分区間が誤っていたので本文を修正しました。