本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
包絡線の求め方
曲線群$f(x,y,a)=0$の包絡線は
f(x,y,a)=0,\quad f_{a}(x,y,a)=0\label{主題1}
\end{align}
の連立方程式から$a$を消去し,特異点の軌跡を除くことで得られる。ここで,特異点とは
f(x,y) = 0,\quad f_{x}(x, y) = 0,\quad f_{y}(x, y) = 0\label{主題2}
\end{align}
を満たす点のことを指す。
証明
包絡線が式($\ref{主題1}$)で得られること
一般に曲線$f(x,y)$の$(x,y)$における法線ベクトルは$(f_{x},f_{y})$と表されます。これは,$(x,y)$の近くで$x$方向に$\Delta x$だけ進むと$f$の値は一次近似で$f_{x}\Delta x$だけ増え,$y$方向に$\Delta y$だけ進むと$f$の値は一次近似で$f_{y}\Delta y$だけ増えますが,微小量進んだ後の点も曲線上に存在するため,
f_{x}\Delta x + f_{y}\Delta y &= 0
\end{align}
が得られます。これは接ベクトル$(\Delta x, \Delta y)$と$(f_{x},f_{y})$が直交することを示しているため,曲線$f(x,y)$の$(x,y)$における法線ベクトルは$(f_{x},f_{y})$と表されます。ゆえに,曲線$f(x,y)$の$(x,y)$における接ベクトルは$(f_{x},f_{y})$を$\pi/2$回転させればよいため,
(f_{x},f_{y}) &=
\begin{pmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{pmatrix}
= (f_{y},-f_{x})
\end{align}
と表されます。さて,$x{=}a$を固定した曲線と包絡線の接点を$(x(a),y(a))$とおくと,包絡線の接ベクトルは$(x^{\prime}(a),y^{\prime}(a))$となります。曲線の接ベクトルと包絡線の接ベクトルが並行になるのは
f_{y}y^{\prime}(a) = -f_{x}x^{\prime}(a)
\end{align}
を満たすときであるため,$f_{x}x^{\prime}(a){+}f_{y}y^{\prime}(a){=}0$を得ます。一方,$f(x,y,a){=}0$の両辺を$a$で偏微分すると,合成関数の偏微分より
f_{x}x^{\prime}(a)+f_{y}y^{\prime}(a)+f_{a} &= 0
\end{align}
となります。これらより$f_{a}$を得ます。したがって,曲線群$f(x,y,a)=0$の包絡線は式($\ref{主題1}$)により得られます。ただし,ここまでの議論では接線が複数存在する点(特異点)を除外していないため,特異点の軌跡も含められているため注意する。
特異点が式($\ref{主題2}$)で得られること
陰関数の極値で導出した陰関数の導関数を用いると,$f_{y}(x,y)\neq 0$ならば
\frac{dy}{dx} &= -\frac{f_{x}}{f_{y}}
\end{align}
は存在し,$f_{x}(x,y)\neq 0$ならば
\frac{dx}{dy} &= -\frac{f_{y}}{f_{x}}
\end{align}
は存在するため,$f(x,y)=0$上の特異点は式($\ref{主題2}$)により得られます。
具体例
曲線群$f(x,y,a)=(x-a)^{2}+y^{4}-y^{2}=0$の包絡線を求めよ。
解答
与えられた曲線群$f(x,y,a){=}0$に対し,
f(x,y,a)=0,\quad f_{a}(x,y,a)=0
\end{align}
から$a$を消去すると,$x{=}a$を$f(x,y,a){=}0$に代入して$y=0,\pm 1$が得られます。一方,
f(x,y) = 0,\quad f_{x}(x, y) = 0,\quad f_{y}(x, y) = 0
\end{align}
を解くと$(x,y)=(a,0)$が得られるため,$y=0$は特異点の軌跡となっています。したがって,求める答えは$y=\pm 1$となります。
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