本記事では,数学検定1級で頻出のトピックについてまとめていきます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
陰関数の極値
陰関数の極値は$y$を$x$の関数とみて考える。$f(x,y)=0$の両辺を$x$で偏微分すると,合成関数の偏微分で$t{=}x$を代入することにより,
\frac{\partial f}{\partial x}
+ \frac{\partial f}{\partial y}\frac{dy}{dx}
= f_{x}+f_{y}\frac{dy}{dx} = 0
\end{align}
となるため,
\frac{dy}{dx} &= -\frac{f_{x}}{f_{y}}
\end{align}
が得られる。さらに$f_{xy}$と$f_{yx}$はともに存在して連続であるため$f_{xy}{=}f_{yx}$となることに注意して両辺を$x$で微分すると,
\frac{d^{2}y}{dy^{2}}
&{=}{-}\frac{(\partial f_{x}/\partial x+\partial f_{x}/\partial y\cdot dy/dx)f_{y}
{-}f_{x}(\partial f_{y}/\partial x+\partial f_{y}/\partial y\cdot dy/dx)}{f_{y}^{2}}\\[0.7em]
&= -\frac{(f_{xx}+f_{xy}(-f_{x}/f_{y}))f_{y}-f_{x}(f_{yx}+f_{yy}(-f_{x}/f_{y}))}{f_{y}^{2}}\\[0.7em]
&= -\frac{f_{xx}f_{y}^{2}-f_{xy}f_{x}f_{y}-f_{yx}f_{y}f_{x}+f_{yy}f_{x}^{2}}{f_{y}^{3}}\\[0.7em]
&= -\frac{f_{xx}f_{y}^{2}-2f_{xy}f_{x}f_{y}+f_{yy}f_{x}^{2}}{f_{y}^{3}}
\end{align}
が得られる。陰関数は$y$を$x$の関数とみると$dy/dx{=}0$を満たす$(x,y)$が極値を取る候補となるが,このとき$f_{x}{=}0$となるため,
\frac{d^{2}y}{dy^{2}} &= -\frac{f_{xx}}{f_{y}}
\end{align}
となる。つまり,$f_{x}{=}0$および$f(x,y){=}0$を満たす$(x,y){=}(x_{0},y_{0})$について
- $f_{xx}/f_{y}>0$ならば$y=y_{0}$は極大値
- $f_{xx}/f_{y}<0$ならば$y=y_{0}$は極小値
が分かる。
二階微分が正の場合は極小値,負の場合は極大値となることを用いています。$d^{2}y/dy^{2}$にマイナスが付いていることに十分注意してください。
覚え方
一階微分が$-f_{x}/f_{y}$は計算で容易に求められる。二階微分は分子に$f_{xx}f_{y}$が残り,
\frac{d^{2}y}{dy^{2}} &= -\frac{f_{xx}f_{y}}{f_{y}^{2}} = -\frac{f_{xx}}{f_{y}}
\end{align}
と理解する。
具体例
次の陰関数の極値を,$y$を$x$の関数とみて求めよ。
f(x,y) &= x^{2}-2xy+y^{2}-4x+2y-6 = 0
\end{align}
解答
$x$の偏導関数は$f_{x}{=}2x{-}2y{-}4$となるため,$f(x,y){=}0$かつ$f_{x}{=}0$を満たす$(x,y)$を$(x_{0},y_{0})$とおくと,$(x_{0},y_{0}){=}(-3, -5)$となります。このとき,$f_{xx}{=}2$および$f_{y}{=}{-}2x+2y+2$に注意すると,
\frac{f_{xx}}{f_{y}} &= \frac{2}{-2} = -1 < 0
\end{align}
となるため,$f(x,y)$は$x=-3$で極小値$-5$を取ります。
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