AWS認定試験に最短最速で合格するための方法を伝授します。
はじめに
AWS認定資格は基礎レベル・アソシエイトレベル・プロフェッショナルという3つのレベルと,設計・運用・開発・専門知識という4つの分野に分けられます。専門知識は6つの分野に分けられています。
本稿では,筆者がAWS認定資格を全12冠した過程をまとめていきます。主に勉強方法や対策方法,各資格の特徴などを踏まえて,今後AWS認定資格の取得を目指されている方にとって有益な情報を残したいと考えています。
本稿の信憑性について
筆者はAWS認定資格をストレートで12冠しています。
AWSに触り始めたのは2022年後半からで,それまでは「AWSとは何か」すら理解できないレベルでした。その後,ベーススキルの底上げを目指して,2023年1月末に基礎レベルのクラウドプラクティショナー(CLF)を取得しました。その後,2月〜4月頃までAWSの勉強は中断していましたが,2023年5月頃から再度勉強を開始しました。その流れで,2023年5月末にアソシエイトレベルのソリューションアーキテクト(SAA)を取得しました。その後,6月中旬から勉強のギアを上げ,6月末から8月中旬にかけて残りの10個の認定資格を取得しました。
6月中旬からギアを上げた後は,平日は平均5時間ほど,休日は平均14時間ほどAWSの勉強をしていました。各認定資格は大体1週間に1度のペースで受験していますので,単純計算で各資格に対して40時間ほどの学習時間を充てていたことになります。
バックグラウンドとしては情報系の大学院出身なのですが,AWSに関しては本当にゼロからのスタートでした。具体的には,EC2すらまともに立てられないレベルでした。それゆえ,読者のみなさまにとっても十分再現性のある情報を提供できると考えております。
詳細
筆者がAWS認定資格12冠を目指す上で,それぞれの認定資格に対してどのような勉強方法や対策を行ってきたかについては,他の記事で解説しています。そこで,本稿では全体を俯瞰した上で,それぞれの対策ページでは書ききれなかった内容を中心にまとめていきたいと思います。
対策方法の紆余曲折
一般に,勉強方法にはボトムアップ式とトップダウン式の二種類があります。ボトムアップ式では,教科書や参考書を用いて,基礎を固めながら着実に知識をつけていく積み上げ式の学習を行います。トップダウン式では,目的を達成するために必要となる知識を把握することで,必要最低限の学習を行います。
筆者のAWS認定資格取得のモチベーションはAWS力の底上げでしたので,最初はボトムアップ式の勉強方法を行なっていました。具体的には,クラウドプラクティショナー対策の書籍やUdemyの講義動画を用いて,基礎からみっちり積み上げていくことでAWSの知識を深めていきました。これで無事CLFを取得することはできたのですが,いかんせん時間がかかりすぎてしまうことに気付きました。
そこで,次に取得予定だったSAAからはトップダウン式の学習に切り替えました。具体的には,問題演習をしていく中で該当資格で問われやすいサービスや問題の傾向を掴み,それらに精通するために何を行うべきかという思考を経ました。頻出のサービスに関しては,必ずBlack BeltやAWS Summitでの発表動画に目を通しました。
この勉強方法は,特にスペシャリティレベルの認定資格に有効でした。アソシエイトレベルやプロフェッショナルレベルの認定資格とは異なり,スペシャリティレベルの認定資格では問われるサービスが限られているからです。特定のサービスのBlackBeltやマネコン上での設定項目をおさえておくことで,確実に合格を勝ち取ることができました。
ポモドーロ
上で勉強方法にはボトムアップ式とトップダウン式の二種類があることを述べましたが,筆者はこれらの勉強方法とポモドーロを組み合わせることで,学習効率を極限まで高めるように意識していました。6月末の時点で残りの10種類の認定資格を8月末までに取り終えることを決意したので,1週間に1資格のペースで合格する必要があったからです。筆者は,自分を追い込むことで成長を加速させるタイプの人間なので,AWS力底上げという目的に対して,自分に厳しい期限を設けるという手段を用いることにしました。
筆者が学生時代からずっと続けている勉強方法の一つに,ポモドーロがあります。ポモドーロとは,集中する時間とリラックスする時間を交互に設けてサイクルを回していく営みのことを指しています。いわゆるインターバルトレーニングのことを指していて,最近流行りのHIITを勉強に当てはめたみたいなものです。ダラダラと勉強を続けるよりも,メリハリをつけて勉強した方が効率が良いという思想に基づいたテクニックとも言えます。
筆者の場合は「一つの勉強単位」と休憩10分をひたすら繰り返すという手法を用いていました。一つの勉強単位というのは,例えば下記のようなものです。
- 問題演習20問
- Black Beltの動画1つ
- 書籍2章分
- まとめページ振り返り3回
これらの勉強単位は,いずれも30〜45分程度要するものになります。筆者の今までの経験から,45分以上集中することは難しいため,勉強単位が45分を超えると不適切です。逆に,30分以下の集中時間では,そもそもの勉強量が足りなくなってしまいます。そのため,一つの勉強単位では最低でも30分は集中するようにしていました。
一日中空いている休日は,このポモドーロを午前10:00から深夜3:00まで回し続けました。睡眠時間はちょうど6時間と決めていますので,可処分時間18時間のうち14時間程度はこのポモドーロに時間を割いていました。残りの時間は,ご飯を食べたり筋トレをしたりして気分転換を行なっていました。平日に関しても,仕事が終わってから深夜3:00までの間はひたすらポモドーロを回していました。
難易度ランキング
AWS認定資格を12冠したことで,それぞれの資格の相対的な難易度も把握することができました。筆者の独断と偏見ですが,AWS認定資格の難易度ランキングは下記の通りです。
- Advanced Networking Specialty(ANS)
- Solution Architect Professional(SAP)
- DevOps Engineer Professional(DOP)
- Machine Learning(MLS)
- Security Specialty(SCS)
- SAP on AWS Specialty(PAS)
- Data Analytics Specialty(DAS)
- Database Specialty(DBS)
- Solution Architect Associate(SAA)
- Developer Associate(DOA)
- SysOps Administrator Associate(SOA)
- CloudPractitioner(CLF)
AWS認定資格の難易度を考える上では,「問題文の長さ」と「求められる知識の広さ・深さ」という二つの視点が欠かせません。これらの視点を軸として,全12種類の認定資格を可視化した図を載せておきます。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
最適な取得順序
AWS認定資格全12種類を取得したいま,認定資格には最適な取得順序があると改めて感じています。基本的には難易度の低い順から取得していけばよいのですが,一般的な風潮としては下記の順番で取得していくのがよいとされています。
- 基礎レベル
- アソシエイトレベル
- プロフェッショナルレベル
- スペシャリティレベル
筆者はこの風潮に今ではあまり賛同できず,下図の順番でAWS認定資格を取得するべきだと考えています。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
12冠して見えてきた世界
巷では「AWS認定資格なんて実務に何の役も立たない」といった乱暴な意見が飛び交うことがあります。筆者もAWS認定資格に全幅の信頼を置いている訳ではありませんが,少なくともAWSに関わる方であれば実務に役に立つ可能性は高いと考えています。そもそもの前提として,「AWS認定資格を取得する必要もないほどAWSやクラウドに精通している」ような方はスコープ外であり,この議論の対象は筆者のようにEC2すら立てたことがないレベルのAWS初学者です。たしかに玄人にとっては認定資格など必要ないでしょう。
筆者の実体験から,初学者の方々がAWS認定資格取得による影響には,下記のようなものが挙げられます。
- 知っているサービスの網羅性
- 「自分は既に初学者ではない」という潜在意識
- 既存知識の点と点を線で繋げる回数の増加
これらの影響により,下記のような効果が得られました。
- AWSのプレスリリースやAPNによる新着の解説記事が円滑に読めるようになった
- AWSに対する心理的障壁をコントロールできるようになった
- 既存知識の理解度を高める速度が向上した
特に,2.と3.が筆者の中では実務に対する効果が大きかったです。AWS認定資格を取得するまでは,直面するAWSサービスが聞いたことないものばかりであり,戦々恐々としていました。「どうせ自分には分からないものばかりだろう」といったネガティブな気持ちで実務にあたっていました。
AWS認定資格を12冠することで,「自分には知らないサービスはほとんどないはずで,もし知らなくてもすぐにキャッチアップできるだろう」という前向きな気持ちで実務にあたることができるようになりました。さらに,周りからの目線も「脱初学者」と見られますので,様々な質問や局所的な意思決定を任せられるようにもなりました。相乗効果で成長が加速している感覚があります。
また,AWS認定資格を12冠するまでは単なる点であった知識が相互に結びつく経験もありました。例えば,IAMまわりでユーザ・ロール・バケットポリシー・サービスロール・Assumr role・Switch roleなどの概念が実務で使われていましたが,これらの関係性がいまいち理解できておらず,その場その場で調べながら何となく対応していました。
一度IAMを俯瞰してしまえば,これらの概念を線で結ぶことができ,対局的な視点からIAMを扱うことが可能になりました。これにより,「今自分はIAMの中でココを考えているのだ」というメタ視点を持つことができ,その場その場での付け焼き刃的な対応は不要になりました。ちなみに,IAMを俯瞰した際の記事は下記です。
IAMの例にとどまらず,複数の付け焼き刃的な点が線となり,メタ視点を持つことができました。メタ視点を獲得することにより,余裕をもって実務をこなすことができるようになり,特定の事象を複数の観点から眺められるようになりました。言い換えれば,AWSを用いている現場で起こっている事象(障害とは限らず,森羅万象という意味)の理解度を高めることができました。
「AWS認定資格なんて実務に何の役も立たない」と豪語する人は,AWS認定資格を全て持っているのでしょうか。仮に持っていないとしたら,なぜそのような乱暴な発言ができるのでしょうか。筆者にはそのスタンスが理解できません。
おわりに
筆者がAWS認定資格を12冠するまでに執筆した記事は,下記ページにまとまっています。
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