【徹底解説】ベクトル空間と同型

本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。

初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。

目次

ベクトル空間と同型

$V,V^{\prime}$を$\mK$上のベクトル空間とする。ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表す。このとき,つぎが成り立つ。

  • $\dim V{=}n$ならば$V\cong \mK^{n}$
  • ベクトル空間の構造はその次元だけで決まる
  • $n\neq m$ならば$\mK^{n}$と$\mK^{m}$は同型ではない

ベクトル空間の構造が次元だけによって定まるという点がポイントです。

証明

$V$のある基底$\beta{=}\vu_{1},\ldots,\vu_{n}$をとります。基底の定義より,$\beta$に含まれる元は一次独立になりますから,$V$の任意の元$v$は一意的に

\begin{align}
\vv &= \sum_{i=1}^{n}v_{i}\vu_{i}
\end{align}

と表されます。したがって,

\begin{align}
\varphi(\vv) &= [v_{1},\ldots,v_{n}]
\end{align}

のように定められた写像$\varphi:V{\rightarrow}\mK^{n}$は全単射となります。すなわち,$\varphi$は同型写像になります。したがって,同型の定義より$V{\cong}\mK^{n}$が示されました。

すると,$\dim V{=}\dim V^{\prime}{=}n$のとき,$V^{\prime}{\cong}\mK^{n}$かつ$V{\cong}\mK^{n}$となります。同型写像の合成写像は同型写像になることから,$V{\cong}V^{\prime}$が示されました。すなわち,$\dim V{=}\dim V^{\prime}$ならば$V{\cong}V^{\prime}$が示されました。

また,$\mK^{n}$の次元は$n$,$\mK^{m}$の次元は$m$であり,次元の定義より$\mK^{n}$と$\mK^{m}$では基底を構成する元の数が異なります。ゆえに,$\mK^{n}$と$\mK^{m}$を対応付ける写像は全単射にはなり得ず,$\mK^{n}$と$\mK^{m}$は同型にはなりません。

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