本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
実対称行列の性質<固有ベクトルの直交>
$n$次元実対称行列$A$は以下の性質をもつ。
- 異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交する
併せて実対称行列の性質もおさえましょう。
証明
実内積空間におけるテプリッツの定理より,ただちに上の主張は示されます。
別解
$n$次実対称行列$A$の固有値の一つを$\lambda$とし,$\lambda$に属する固有ベクトルを$\vx\in\mR^{n}$とします。このとき,標準内積$(\cdot|\cdot)$に対して
\begin{align}
(A\vx\mid\vx) = (\lambda\vx|\vx)=\lambda(\vx|\vx)
\end{align}
(A\vx\mid\vx) = (\lambda\vx|\vx)=\lambda(\vx|\vx)
\end{align}
が成り立ちます。一方,実対称行列の定義より$A^{\ast}=A^{T}=A$ですので,内積の公理を利用することにより,
\begin{align}
(A\vx\mid\vx) = (\vx|A^{\ast}\vx)=(\vx|A\vx)=(\vx|\lambda\vx)=\overline{\lambda}(\vx|\vx)
\end{align}
(A\vx\mid\vx) = (\vx|A^{\ast}\vx)=(\vx|A\vx)=(\vx|\lambda\vx)=\overline{\lambda}(\vx|\vx)
\end{align}
が成り立ちます。すなわち,
\begin{align}
\lambda(\vx|\vx)&=\overline{\lambda}(\vx|\vx)
\end{align}
\lambda(\vx|\vx)&=\overline{\lambda}(\vx|\vx)
\end{align}
が成り立ちます。いま,内積の定義より$\vx\neq 0$に対して$(\vx|\vx)>0$となるため,$\lambda=\overline{\lambda}$が得られます。すなわち,$\lambda$は実数となります。
コメント