本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
エルミート変換の固有値
$n$次元内積空間$V$のエルミート変換$F$は,重複度を考慮すれば$n$個の固有値をもち,それらは全て実数である。
実エルミート変換は実対称変換になりますので,実対称変換も重複度を考慮すれば$n$個の固有値をもち,それらは全て実数になります。
証明
複素数空間$\mC$上の内積空間を考えます。代数学の基本定理より,$F$は複素数の範囲で$n$個の固有値をもちます。いま,$c$を$F$の固有値,$v$を$c$に対する固有ベクトルとすれば,
\begin{alignat}{2}
(F(v)\mid v) &= (cv\mid v) &&= \oc\|v\|^{2} \\[0.7em]
(v\mid F(v)) &= (v\mid cv) &&= c\|v\|^{2}
\end{alignat}
(F(v)\mid v) &= (cv\mid v) &&= \oc\|v\|^{2} \\[0.7em]
(v\mid F(v)) &= (v\mid cv) &&= c\|v\|^{2}
\end{alignat}
が成り立ちます。ただし,$(\cdot|\cdot)$は標準内積を表します。したがって,$\oc=c$が成り立つため,固有値$c$は実数であることが示されました。すなわち,$n$個の固有値はすべて実数であることが分かりました。
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