本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
行列式の性質<一次従属な列ベクトル>
$n$次正方行列$A$の行列式$\det (A)$は以下の性質をもつ。
- $n$個の列ベクトルが一次従属ならば$\det (A)=0$
行列式の性質一覧はこちらのページより確認できます。
証明
列ベクトルを$(\va_{1},\ldots,\va_{n})$とします。一次従属の定義より,$1\leq i\leq n$なる$i$に対して,$\{1,\ldots,n\}$から$i$を除いた集合を$S$とおくと,
\begin{align}
\va_{i} &= \sum_{j\in S}c_{j}\va_{j}
\end{align}
\va_{i} &= \sum_{j\in S}c_{j}\va_{j}
\end{align}
を満たす$c_{j}$が存在します。すると,行列$A$の第$i$列は他の列とのスカラー倍の和で表されるため,$\det (A)$は以下のようになります。
\begin{align}
\det (A) &= \sum_{j\in S} \det(\va_{1},\ldots,c_{j}\va_{j},\ldots,\va_{j},\ldots,\va_{n}) \label{1}\\[0.7em]
&= \sum_{j\in S} c_{j}\det(\va_{1},\ldots\va_{j},\ldots,\va_{j},\ldots,\va_{n}) \label{2}\\[0.7em]
&= 0 \label{3}
\end{align}
\det (A) &= \sum_{j\in S} \det(\va_{1},\ldots,c_{j}\va_{j},\ldots,\va_{j},\ldots,\va_{n}) \label{1}\\[0.7em]
&= \sum_{j\in S} c_{j}\det(\va_{1},\ldots\va_{j},\ldots,\va_{j},\ldots,\va_{n}) \label{2}\\[0.7em]
&= 0 \label{3}
\end{align}
ただし,式($\ref{1}$)から式($\ref{2}$)は行列式写像の$n$重線型性を利用し,式($\ref{2}$)から式($\ref{3}$)は同じ列ベクトルを含む行列式の性質を利用しました。
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