本記事は数学の徹底解説シリーズに含まれます。
初学者の分かりやすさを優先するため,多少正確でない表現が混在することがあります。もし致命的な間違いがあればご指摘いただけると助かります。
目次
対角化可能と固有空間の直和
$V$を$\mK$上の$n$次元ベクトル空間とし,$F$を$V$の線型変換とする。ただし,$\mK$は複素数空間$\mC$または実数空間$\mR$を表す。$F$の固有多項式$f_{F}(x)$が$\mK$において
\begin{align}
f_{F}(x) &= (x-\alpha_{1})^{n_{1}}\cdots(x-\alpha_{s})^{n_{s}}
\end{align}
f_{F}(x) &= (x-\alpha_{1})^{n_{1}}\cdots(x-\alpha_{s})^{n_{s}}
\end{align}
のように一次式の積に因数分解されるとする。ただし,$\alpha_{1},\ldots,\alpha_{s}$は$\mK$の相違なる元,$n_{1},\ldots,n_{s}$は正の整数で$n_{1}+\cdots+n_{s}=n$である。このとき,$F$が対角化可能であることと次の条件は同等である。
- $V$は固有空間の直和,すなわち$V=W(\alpha_{1})\oplus\cdots\oplus W(\alpha_{s})$となる
併せて対角化可能と同等な条件もおさえておきましょう。
証明
各$i=1,\ldots,s$に対して,固有空間の次元を$\dim W(\alpha_{i})=n^{\prime}_{i}$とします。固有空間の定義と次元の定義より,各$W(\alpha_{i})$には$n^{\prime}_{i}$個の一次独立な$F$の固有ベクトルが存在します。また,固有空間の和は直和であることから,$V$は
\begin{align}
V &= W(\alpha_{1})\oplus\cdots\oplus W(\alpha_{s})\label{直和}
\end{align}
V &= W(\alpha_{1})\oplus\cdots\oplus W(\alpha_{s})\label{直和}
\end{align}
で表されます。$V$には$n^{\prime}_{1}+\ldots+n^{\prime}_{s}$個の一次独立な固有ベクトルが存在し,直和の定義よりそれらは$V$の基底になります。このとき,基底が全て固有ベクトルである表現行列は対角化可能であることから,上の主張は示されました。
コメント