【過去問解答】2018年統計検定1級<数理統計問5>

統計検定1級の過去問解答解説を行います。目次は以下をご覧ください。

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目次

問題

統計検定1級の過去問からの出題になります。統計検定の問題の著作権は日本統計学会に帰属していますので,本稿にて記載することはできません。「演習問題を俯瞰する」で詳しく紹介している公式の過去問題集をご購入いただきますようお願い致します。

解答

順序統計量の確率密度関数に関する出題でした。

(1)

\begin{align}
f_{1}(y)=3(1-y)^{2},\quad f_{3}(y)=3y^{2},\quad E[Y_{1}]=\frac{1}{4},\quad E[Y_{3}]=\frac{3}{4}
\end{align}

一様分布$\U(0,1)$の確率密度関数と累積密度関数は

\begin{align}
f(x) &=
\begin{cases}
1&(0<x<1)\\[0.7em]
0&(\text{その他})
\end{cases},\quad
F(x) =
\begin{cases}
0&(x\leq 0)\\[0.7em]
x&(0<x\leq 1)\\[0.7em]
1&(1<x)
\end{cases}
\end{align}

となります。順序統計量の確率密度関数は累積分布関数から求めます。$0{<}y{<}1$に対し,$Y_{1}$の累積分布関数は

\begin{align}
F_{1}(y) &= P(Y_{1}\leq y) = 1-P(Y_{1}>y,Y_{2}>y,Y_{3}>y) = 1-P(X>y)^{3} = 1-(1-y)^{3}
\end{align}

となるため,確率密度関数は$F_{1}^{\prime}(y)=3(1-y)^{2}$と求められます。したがって,

\begin{align}
E[Y_{1}] &= \int_{0}^{1}3(1-y)^{2}dy = \frac{1}{4}
\end{align}

が得られます。同様に,$0{<}y{<}1$に対し$Y_{3}$の累積分布関数は

\begin{align}
F_{3}(y) &= P(Y_{3}\leq y) = P(Y_{1}<y,Y_{2}<y,Y_{3}<y) = P(X<y)^{3} = y^{3}
\end{align}

となるため,確率密度関数は$F_{3}^{\prime}(y)=3y^{2}$と求められます。したがって,

\begin{align}
E[Y_{3}] &= \int_{0}^{1}3y^{2}dy = \frac{3}{4}
\end{align}

が得られます。

補足

一般に,順序統計量$X_{(i)}$の累積分布関数と確率密度関数は

\begin{align}
F_{X_{(i)}}(x) &= \sum_{k=i}^{n} {}_{n} C{k}~F(x)^{k}\left\{1-F(x)\right\}^{n-k}\label{F_i} \\[0.7em]
f_{X_{(i)}}(x) &= {}_{n-1} C{i-1}~ nf(x)F(x)^{i-1}\left\{1-F(x)\right\}^{n-i}\label{f_i}
\end{align}

と表されることを利用すると,

\begin{cases}
f_{1}(y) = {}_{2}C_{0}~3\cdot 1\cdot y^{0}(1-y)^{2} = 3(1-y)^{2}\\[0.7em]
f_{3}(y) = {}_{2}C_{2}~3\cdot 1\cdot y^{2}(1-y)^{0} = 3y^{2}
\end{cases}

と求められます。

(2)

\begin{align}
f_{2}(y) &= 6y(1-y),\quad P(Y_{2}\leq 1/2) = 1/2
\end{align}

$0{<}y{<}1$に対し,$Y_{1}$の累積分布関数は

\begin{align}
F_{2}(y) &= P(Y_{2}\leq y)\\[0.7em]
&= P(Y_{1}\leq y,Y_{2}\leq y,Y_{3}\leq y)+P(Y_{i}\leq y,Y_{j}\leq y,Y_{k}>y)\\[0.7em]
&= y^{3}+3y^{2}(1-y)
\end{align}

となります。ただし,第二項目については$(i,j)$の選び方として${}_{3}C_{2}$通り,$Y_{k}$の選び方として残りの$1$通りであることを利用しています。確率密度関数は$F_{3}^{\prime}(y)=6y(1-y)$と求められます。したがって,

\begin{align}
P(Y_{2}\leq 1/2) &= \int_{0}^{1/2}6y(1-y)dy = \frac{1}{2}
\end{align}

が得られます。

補足

式($\ref{f_i}$)を利用すると,

\begin{align}
f_{2}(y) = {}_{2}C_{1}~3\cdot 1\cdot y^{1}(1-y)^{1} = 6y(1-y)
\end{align}

と求められます。

(3)

\begin{align}
E[Z] &= \frac{1}{4},\quad V[Z] = \frac{1}{20}
\end{align}

期待値の線形性より,

\begin{align}
E[Y_{3}-Y_{1}] &= E[Y_{3}]-E[Y_{1}] = \frac{3}{4}-\frac{1}{4} = \frac{1}{2}
\end{align}

が得られます。続いて,$(Y_{1},Y_{3})$は独立ではないため,同時確率密度関数を求めることで分散を定義から計算することを目指します。累積密度関数$P(Y_{1}\leq y_{1},Y_{3}\leq y_{3})$は,

  • $X_{1},X_{2},X_{3}$のすべてが$y_{1}$以下
  • $X_{1},X_{2},X_{3}$のうち$2$つが$y_{1}$以下で$1$つが$y_{1}$以上$y_{3}$以下
  • $X_{1},X_{2},X_{3}$のうち$1$つが$y_{1}$以下で$2$つが$y_{1}$以上$y_{3}$以下

となる確率と等しくなるため,

\begin{align}
F_{13}(y_{1},y_{3})
= P(Y_{1}\leq y_{1},Y_{3}\leq y_{3})
&= y_{1}^{3}+{}_{3}C_{2}~y_{1}^{2}(y_{3}-y_{1})+{}_{3}C_{1}~y_{1}(y_{3}-y_{1})^{2}\\[0.7em]
&= y_{1}^{3}-3y_{1}^{2}y_{3}+3y_{1}y_{3}^{2}
\end{align}

と計算できます。

累積密度関数を$P(Y_{1}\leq y,Y_{3}\leq y)$としてしまうと,同時累積密度関数ではなく一変数の累積密度関数となってしまうため,注意してください。

したがって,$0{<}y{<}1$に対し同時確率密度関数は

\begin{align}
f_{13}(y_{1},y_{3}) &= \frac{\partial^{2}}{\partial y_{1}\partial y_{3}} = 6(y_{3}-y_{1})
\end{align}

となります。よって,原点周りの二次モーメントは

\begin{align}
E[Z^{3}] = E[(Y_{3}-Y_{1})^{2}]
&= 6\int_{0}^{1}\int_{0}^{y_{3}}(y_{3}-y_{1})^{3}dy_{1}dy_{3}\\[0.7em]
&= 6\int_{0}^{1}\left[\frac{1}{4}(y_{3}-y_{1})^{3}\right]_{0}^{y_{3}}dy_{3}\\[0.7em]
&= \frac{3}{2}\int_{y_{1}}^{1}y_{3}^{4}~dy_{3}
= \frac{3}{10}\left[y_{3}^{5}\right]_{0}^{1} = \frac{3}{10}
\end{align}

が得られます。以上より,

\begin{align}
V[Z] &= E[Z^{2}]-E[Z]^{2} = \frac{3}{10}-\frac{1}{4} = \frac{1}{20}
\end{align}

となります。

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